ひき続き、新規事業プランに必要な発想法について解説を続けたいと思います。前回は、新規事業プランのための思考法には、「拡大(拡張)」と「集中(絞り込み)」の2つの方向性があり、前者は主に大企業に向き、後者は主に中小企業に向く思考法だとお話しました。今回は、「拡大(拡張)思考」の事例をみていくことにしましょう。
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■大企業は「拡大思考」でマスマーケットを狙え
新規事業プランを構築しようとする際、「集中(絞り込み)思考」はある意味手堅い手法法です。「自社の顧客は、今何を欲しがっているのか…」といった具合に突き詰めて考え、“顕在化”したマーケットに向けて確実なプランを練ればいいからです。しかし、マーケットを絞り込むということは、当然売上げは細分化していきます。10社から1千万円ずついただくのではなく、1万人から1万円ずついただくようなビジネスのスタイルになる、ということです。ですから、ある程度の人員を抱える規模の会社が、この思考法で新規ビジネスを展開してしまうと、「忙しいのに儲からない」という悪循環に陥ってしまうのです(―_―)!!
大企業の場合、マスマーケットを狙わない限り、大きな成功は望めません。そのためには、発想を拡げたり、視点をズラしたりする必要があるわけです。それは「自社の顧客は、今何を欲しがっているのか…」といった狭い思考とは対極にあり、「万人に共通する思い」のようなものを考え抜いていく必要があるのです。
■『いつかはやりたかった』は万人共通の思い!?
「拡大(拡張)思考」とは何かというと、たとえば「今、人は何がしたいのか」とか「未来の地球には何が必要か」といったように、目の前で起きている現象から限りなく思考を拡げていくことです。その答えは顧客自身さえわかっていない(ふだん意識していない)場合も多く、まさに“潜在的”マーケットであると言えます。
潜在マーケットの絶好の事例が、近年中高年層に渦巻く『いつかはやりたかったマーケット』です(*^^)v 男性の場合は、ハーレーダビットソンのバイクやギブソンやマーチンのギターなどがわかりやすいでしょう。若い頃から憧れていた商品を、ある程度金銭的に余裕が出る年齢になって、初めて手にする…という構図です。
賢い企業はこのマーケットを確実に狙い、これまでなかった商品を出してきたりします。今ではすっかり大人になった「機動戦士ガンダム」ファンを狙って、デザイナーズバージョンなどの限定高額商品が度々発売されますが、ガンダムファンなら間違いなく“大人買い”してしまうことでしょう(^_-)-☆
■いつかはやりたかった…「大人のバレエ教室」が人気に!
『いつかはやりたかったマーケット』の女性版としては、「バレエ」市場が熱いようです。「バレエ教室」などと聞くと、可愛らしい子供たちが踊る姿をイメージしてしまいますが、最近は「子供の頃やりたかったけど、親に習わせてもらえなかったので…」という理由から、30代を過ぎてバレエ教室の門を叩く女性たちが増えているのです(@_@。
また自分で踊るのはともかく、チュチュなどの衣装やバレエシューズに憧れを抱き続ける女性も多いようです。婦人服大手の株式会社オンワード樫山は、今年(2012年)熊川哲也氏率いるKバレエカンパニーとコラボし、全国の百貨店で「バレエミュージアム」を開催し、好評を得ました。
学習塾経営の株式会社スプリックスも、「大人のためのクラシックバレエ入門教室」の展開に乗り出しています。同社はこれを足がかりに、カルチャースクールの全国展開を目指す意気込みのようですが、塾生徒の親世代を狙うには、いい戦略かもしれませんね。
この事例を参考に、みなさんも思いっきり発想を拡げてみてください。まだまだ、誰にも気づかれていない“潜在マーケット”が眠っているかもしれませんよ(@^^)/~~~