「恋する豚研究所」・・・一瞬「豚の恋愛模様を研究している機関」かと思ってしまいますが(笑)、じつは千葉県香取市でハム・ベーコンなどの豚肉加工食品の製造販売を営む会社なんです。建築家やアートディレクターなど外部のクリエーターと上手に連携し、「デザイン」を基軸にみごとなまでのブランド化を図っているその存在のユニークさは、私たちにも見習うべき点が多いと思います。
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「デザイン」にこだわって商品価値を高める
とかく「品種」や「味」で勝負しがちな豚肉加工食品において、「デザイン性」という新しい基軸をもってブランド化に成功しているユニークな会社があります。その名も「恋する豚研究所」。名前からしてかなりユニークですが、会社設立当初から建築家やアートディレクターなど、外部の優秀なクリエーターを起用し、赤い屋根とらせん階段が印象的な建物を設計。2階は物販店と「しゃぶしゃぶ定食」などが食べられる食堂になっています。商品パッケージはもちろん、包装紙や紙袋などもすごくオシャレなものにしたほか、「ブランドブック」をつくって丁寧にブランドの構築を図ってきました。ブランドブックとは、周辺の四季折々の風景や、豚を取り巻くさまざまなシーンの写真と短い文章で構成された小型の書籍で、「恋する豚研究所」のコンセプトなど、その“想い”を発信しているわけです。
同社のある千葉県香取市近郊は、かつては国内有数の養豚地帯だったそうですが、飼料の高騰と安価な輸入肉に押されっぱなしで、廃業する同業者も多かったようです。そんな中、同社が「デザイン」にこだわることで付加価値を高める戦略に打って出たのは、根底に地元への愛が溢れているからではないでしょうか(*^_^*)
品質が良いだけでは売れない時代
スーパーの食品売り場を歩いてみればわかりますが、ハムやソーセージのパッケージは、派手なロゴや色使いをしているものが圧倒的に多いはずです。対して「恋する豚研究所」の商品パッケージは、白地に黒いロゴ+森のモチーフ柄を白抜きで配するというとてもシンプルなもの。商品コメントなどの印刷も最小限に抑えられているのが特徴的なのですが、この“そぎ落とした”デザインが上質なイメージをかもし出し、商品価値を高めているのだと思います。その証拠に、北野エースや明治屋、クイーンズ伊勢丹といった名店とも取引きできるようになりました。
作り手の根強い論理として、「良い商品を作っていればいずれ世間はわかってくれる」というものがありますが、例えばハムの味は、一度食べてみない限りわかりません。モノが無い時代ならともかく、現代のようにモノも情報もあふれかえっている時代には、商品自体にも「発信力」が必要なのです。つまり「買いたくなる」とか「よさそうに見える」商品でないと、手に取ってさえもらえないわけで、そう考えると「品質が良い」だけでは、モノは売れない時代だということがわかると思います。
商品とともにビジネスもデザインせよ!
同社がみごとなのは、建物やパッケージのみならず、ビジネスそのものも上手に「デザイン」されている点です。豚の飼育と加工を分け、加工業は社会福祉法人「福祉楽団」に委託。障害者でも月10万円稼げる仕事の創出を目指しているといいます。同社の代表を務める飯田社長は、「農業や福祉の領域は非常にクリエイティブな仕事。だからこそデザインと絡ませる必要があり、常に創造的な判断が必要なんです」と発言していますが、外から見えるのデザインのみならず、仕事の細部にわたるまでポリシーを持ってデザインしている点は秀逸です。成熟した経済社会では、ビジネスも商品も磨き続けるものだけが勝ち残っていけるのです。よかったら参考にしてください(@^^)/~~~