「キット勝つ!」を合言葉に、受験シーズンの売上げを伸ばしてきたチョコレート菓子「キットカット」。ネスレ日本は次の一手として、トースターで焼いて食べるキットカットを発売しました。お菓子業界も、味そのものより“一歩進んだ発想”で勝負する時代に突入したのかもしれません(*^^)v
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「キット勝つ!」を合言葉に勝ってきたチョコレート菓子
受験生に「キットカット」を贈るという習慣も、だいぶ一般化してきた感がありますが、ネスレ日本のチョコレート菓子「キットカット」の販売戦略は、いろいろな意味でかなり参考になります。まず、「キット勝つ!」という合言葉をつくったことが大きいでしょう。多少おやじギャグの香りもしますが(笑)、「言葉」は商品以上に流通速度が速いので、消費者を納得させる言葉を先に浸透させることによって、「受験生を励ますためにキットカットを贈る」という儀式(?)は、受験シーズンの「習慣」として広く伝播していきました。
次に、郵便で送れるようなパッケージを開発したことも勝因のひとつでしょう。チョコレートのパッケージにメッセージと送り先の住所を書き込むと、そのまま郵送できるのは何とも便利です。このパッケージに工夫を凝らす戦略は、オフィス向けに開発された「ビズチョコ」へとつながっていきました。キットカットを入れた小袋に、ボールペンなどで「お疲れさまです!」などと、ひと言メッセージが書き込めるようにしたのです。お菓子で職場のコミュニケーション向上を狙うというコンセプトは、結構新しいですよね。そもそもお菓子ですから、味がおいしいことで消費者から選ばれるのは当たり前ですが、同社が“一歩進んだ発想”を持っていることがよくわかります(*^_^*)
チョコを「焼く」という一歩先行く発想
そんなネスレ日本が「今度は焼いて楽しんで」とばかり、焼いて食べることを推奨する『キットカットミニ 焼いておいしいプリン味』を発売しました。文字どおり、トースターで2分ほど過熱すると、形が崩れる前にチョコレートに含まれる砂糖が固い飴状になり、これを少し冷ますとクッキーのような触感になるという新感覚のお菓子です。
じつは同社は、今年(2014年)1月、池袋に初の専門店「キットカットショコラトリー」をオープンしました。開店にあたっては、2003年以来「キットカット」の開発に関わり、数々の新商品を世に出してきた「ル パティシエ タカギ」の高木康政氏が全面監修したそうですが、そこでの人気商品をさらにアレンジし、この「焼いて食べるキットカット」が誕生したようです。今や世界的にみてもかなりハイレベルにある日本のお菓子業界においては、もはや味で勝負する時代は終わったのかもしれません。「新しく◎◎味出ました!」では、インパクトも、話題性も薄いですからね(―_―)!!
消費者に求めるべきはワンアクション!?
その点、この商品には「消費者にアクションを起こさせる」という視点があります。いつも食べていた「キットカット」を焼いてみようとは、たぶん誰も考えなかったでしょうが、メーカーから「焼いて食べて!」と言われれば、「一度試してみたい」とばかり、感度のいい消費者たちの好奇心に火がつくのは自然な流れです。
たとえば、赤城乳業の人気のアイスキャンディ「ガリガリ君」は、ナポリタン味やコーンポタージュ味など、次々と新しい味を出して話題を呼んでいますが、玩具のタカラトミーアーツから、ガリガリ君を手軽にかき氷にできる器具「おかしなかき氷ガリガリ君」が発売された際には、ネットのトップニュース扱いになった記憶があります。この場合はひとつのメーカーのしかけではなく「コラボ」というカタチにはなりますが、「消費者にアクションを起こさせる」とはこんな感覚だと思ってください。
また業界は違いますが、割るとたれが出てくる納豆パックを開発したミツカンの「金のつぶ パキッ!とたれ」が人気を得た勝因は、「手が汚れない」という実利とは別に、「一度試してみたい」という消費者の気持ちに火をつけた、という部分が大きいように思います。
ご存じのように、今はみんなが「話題」を探している時代です。「ネタ消費」と呼ばれることもありますが、ブログやSNSなどで話題にできるネタは、絶好のマーケットになるのです。「キットカットを焼く」という行為も「ネタ」として十分成立しますから、ネットで伝播しやすいはずです。消費者に「ネタ」を提供するには、「意外性をアピールする+ワンアクション起こさせる」という視点はかなり秀逸です。もちろん、同社がこうした新戦略を自由に試せるのも業績そのものが良いからで、企業としての余裕の表れではありますが、この事例を参考に、自社の商品戦略や販売戦略に対し、楽しみながら発想を拡げてみてください(@^^)/~~~