急増するインバウンド、
日本に来ている本当の理由とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 坂本 洋

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、全国各地で観光PRが大変な盛り上がりを見せており、多くの外国人旅行客(=インバウンド)の来日が予想されます。現在これらは10年間で4倍以上に増えており、今後も増加が見込まれます。
しかしながら、インバウンドをターゲットにしている行政や、観光の専門家の多くは、この増加の要因について明確な回答ができません。せいぜい、「和食が文化遺産に登録されたから」や「ビザの緩和」、「為替のメリット」くらいです。
もちろんこれらの答えはきっかけの一つではありますが、多くの方は「ビザの緩和」や「為替のメリット」を決め手にその国へは行かないでしょう。せっかくの海外旅行ですから、しっかり下調べをします。その結果、日本が選ばれているわけです。

今回は、実際のインバウンド・インバウンド専門のツアー会社へのヒアリング調査の結果として、「インバウンドが急増する本当の理由」をお伝えしたいと思います。

日本は、世界最古、世界唯一、世界初のオンパレード!

いきなりですが、
世界最古で、現存継続している統一国家・王朝はどこの国でしょうか?
諸説ありますが、日本です。天皇制が始まってから今年が皇紀2678年となっているからです。
では、世界最古で、現存継続している宗教をご存じでしょうか?
こちらも諸説ありますが、日本の神道です。八百万の神を祀っている多神教です。他にも日本には、

・世界一、平均寿命が長い国
・世界で唯一、原爆被爆した国
・世界最大級の地震・津波被災・原発事故発生国
・世界最長の300年間鎖国した国
・世界初の、人口が自然減少している国家

などがあります。

さらに日本という国は、上述のとおり人口が自然減少しており、また南海トラフ地震や富士山噴火などが起きることが想定されている「滅びつつある国」であります。故に、貴重な建築物、伝統工芸、職人、食文化が失われつつある国であるということをまず認識しなければなりません。

人気の理由は食・宗教にあり!

インバウンドが増加した大きな要因の一つに、日本の食・宗教文化があります。日本人特有の気質から作られるこれらは、異文化人にとってどれも新鮮味があり、感慨深いものでもあるからです。

トリップアドバイザーという有名なトラベルサイトでは、日本の人気観光スポットが紹介されています。例えば、伏見稲荷大社、清水寺、厳島神社、高野山、熊野神社などの宗教スポットが多くランクインしています。
欧米のインテリ層は、自分たちと異なる価値観に対して多様性を身につけるために、大学などで宗教・哲学を積極的に学びます。したがって、彼らにとって日本の宗教スポットはとても魅力的に感じられます。

彼らは「和食」においても、異なった視点を持っています。日本人は「ダシ」「四季」「器」などの要素を強調しますが、海外で和食が受けている理由は「健康=長生食」です。味噌や醤油などの「発酵」調味料、漬物や納豆などの「発酵」食品、海産物や野菜を中心とした自然に近い食生活が、長生きの秘訣であり、和食が世界文化遺産に登録された理由です。
そしてインバウンドが、日本の食生活で驚くのが「生食(なましょく)」です。特に「卵かけご飯」などは最たるもので、欧米の方々は驚きをとおり越して「自殺行為だ!」とまで言います。
この「卵かけご飯」などの生食ができるのは、日本の徹底した衛生管理や食の安全に対するモラルの高さが根底にあるからです。


ダークツーリズム:急速に滅びている国ニッポン

インバウンド増加のもう一つの要因は、ダークツーリズムです。
ダークツーリズムとは、人間の負の遺産である戦争跡地や被災地などを見て、学び、将来につなげようという観光旅行のことです。世界的には、アウシュビッツやチェルノブイリ、9.11テロがあったグラウンド・ゼロなどが有名です。
日本には、このダークツーリズムにおいて原爆ドームや平和記念資料館、東日本大震災跡地、軍艦島、足尾銅山、第二次世界大戦時の兵器製造所、など多くの観光スポットが存在します。
東日本大震災後で宮城県女川市の宿泊施設を支援した際に、建設関係者やボランティアが帰った後の落ち込みをカバーするために、このダークツーリズムを提案しました。日本人は、忘れがち、目を背けがちですが、先人から学ぶ姿勢を受け止め、理解し、日本の大切な観光資源として活用することも重要です。

課題・注意点 

今回お伝えした「インバウンドが来ている本当の理由」の注意点として、マーケティングの視点から「インバウンド」を一括りに考えるのは危険であるということです。

私がかつて運営していた民泊に3泊したニュージーランド人の男性2人組は民芸に興味があり、柳宗悦や河井寛次郎関連の美術館などを巡っていました。
欧米に留学経験がある台湾人のカップルは、3日間とも私の民泊の近くにあるお寺の庭に通っていました。ある香港からのカップルは、兵庫県朝来市にある藤棚の「ライトアップの写真を撮るためだけに日本へ来た」と言っていました。他にも、ホタルの乱舞を見にきた韓国人ファミリー、京都のある和菓子屋を訪ねて来たタイの女性。

日本の文化や自然はどれもインバウンドを惹きつける強烈なパワーを持っておりますが、日本に求めるものは千差万別です。
また、日本のインバウンドラッシュは「スノーモンキー」(=温泉に浸かった猿)から始まったと言われています。しかし、日本人は誰も「温泉に浸かった猿」が外国人の興味を惹くなどと考えている人はいなかったはずです。

このことから、日本人である我々にとってもっとも重要なことは“どうでもいいこと”“バカバカしいこと”など、小さくても常に情報を発信するということです。日本が失われつつある中だからこそ、あなたの周りの何気ない、当たり前の景色が、世界中から人を惹きつけることになっているのです。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 坂本 洋氏
(合同会社GreenOceanz 代表社員)

京セラ株式会社で海外営業、国内営業を経験後、中小企業診断士を取得し、株式会社星野リゾートへ転職。

星のや軽井沢・京都にてマネージャー職を経験後、ホテル旅館専門コンサルタントとして独立開業。
民泊運営からリゾートホテル総支配人、経営から清掃業務まで、広く深く経験した上での具体的で実践的なアドバイスは顧問企業から絶対の信頼を得ている。

創業補助金・ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金の採択件数は60 件以上、審査員もつとめている。

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