「起業いつやるか? 今でしょ!」を後押しする実践型経営コンサルタントの福田宗就です。
私はさまざまな交流会や勉強会で人脈を広げながら、この10数年で5000社ほどの企業を開拓してきました。また、400件近くのビジネスマッチングを成功させ、さまざまな企業の課題解決や売上向上、新規ビジネスの立ち上げ加速に貢献しました。その間、数多くの起業家、経営者の方々から、経営課題に関するご相談を受けてきました。特に多いのが営業支援や販路開拓に困っているという内容です。
そこで今回は、スタートアップが効率的に新規顧客を開拓する方法と題して、顧客開拓のノウハウを解説したいと思います。
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私がサポートさせて頂いた顧客開拓での成功事例
まずは事例として、実際に私のところにご相談に来られた後、顧客開拓が見違えるように良くなった事例を紹介したいと思います。
人工知能分野の研究者 A氏
2015年の初めにドリームゲートのオンライン相談をいただいたA氏。東大の大学院から、某通信会社の研究所、有名IT企業、海外のベンチャーというキャリアを積んできた、生粋の研究者・ITエンジニアの方です。
このA氏から頂いた相談は「人工知能の分野でビジネスのアイデアはあるのですが、具体的にどのようにビジネスをすべきか、どうマネタイズを展開していけばいいか、マーケッティングや顧客の開拓、営業方法等に関して具体的な方法が見えなく、事業を一緒に遂行してくれる仲間とも出会えない…」という悩みでした。
そこで私は一度お会いしましょうという事で面談し、技術的にも人間的にも信頼できる方だとわかりましたので、具体的にマネタイズやマーケッティングや顧客の開拓、営業方法等に関して詳細について説明し、とあるIT請負マッチングサイト企業と人工知能系のベンチャーを紹介しました。また、A氏自身が得意としている人工知能分野での「ハブ人材」になってはどうかとアドバイスして、実際にそのような活動をはじめられています。その後、勉強会やイベントで積極的に講師をされ、人工知能系の開発案件の獲得も成功されたようです。
また、A氏はご紹介した企業との状況を定期的に進捗報告してくれましたので、都度アドバイスや追加でビッグデータ等の統計の研究者を数名、ディープラーニングという機械学習の手法を駆使し、同義語の特定技術で成果を上げているベンチャーを紹介しました。
A氏が初めて私に相談してきてから2カ月あまり、A氏のビジネスは急加速していると聞いています。
人工知能に詳しい発明家であり弁理士である特許事務所のB氏
B氏も2015年の初めに、ドリームゲートのオンライン相談経由で知り合いました。B氏が私を指名して相談されてきた理由が、数年前に私がドリームゲートの「起業QA」に回答した内容をたまたま検索して見つけたようで、その内容がとても素晴らしかったという事でした。
B氏の要件はビジネスにつながりそうなキーマンを紹介してほしい、という事でしたが、いきなり人を紹介するのは難しいので一度面談しましょうと言うことで、わざわざ兵庫から東京まで来てもらいました。ちなみに、私が直接会うことにこだわっているのは、問題ない方か、どこに強みがあるか、どういう志向性があるかを把握するためです。
B氏は弁理士としての特許代理業務の経験が25年間あり、自ら発明した特許取得件数も30件以上もあるというユニークな方でした。技術力のある中小ベンチャー、株式公開を目指す中小企業をターゲットに営業活動したいということで、先ほど事例として上げたA氏や、某IT系研究会の理事長をご紹介して、その研究会に登壇することが決定しました。A氏もB氏もドリームゲートユーザーですが、私が媒介となってつながったケースです。
この2つの事例はたまたま「人工知能」というキーワードでつながったケースです。上記以外にも、上場企業の社長にベンチャー経営者を引き合わせたり、大手VCの担当者と引き合わせたりと、日々、そうした活動を続けています。
顧客開拓につながる人脈を作るには、まずは質の高い交流会やイベント、セミナーに参加しよう。
上記の事例は私を介在して顧客開拓につながっているケースですが、そもそもどうやって顧客開拓につながる人脈を広げれば良いでしょうか。
手っ取り早いのは、「交流会」です。
交流会というと、名刺交換だけに終わって参加しても成果が得られない…そういう経験がある方も多いでしょう。しかし、すばり言わせて頂ければ、それは参加する交流会の質が悪いだけです。
それでは、どんな交流会に参加すべきでしょうか。
IT系であれば、技術勉強会やオープンソースのユーザー会などがお勧めです。理由としては、IT系企業のCEOやCTOといった権限のある方が参加している事が多く、あるいは大手企業の研究開発部門やマーテケィング部門からの参加者も多いからです。
IT系のCEOやCTOはイベントに呼ばれて講演することも多く、またそうした場で新しいビジネスチャンスや人材と出会える事を知っていますから、積極的に参加してきます。また、大手企業の方も、常に最新技術などの動向にアンテナを張っているので、勉強熱心に休日でも参加してくることが多いです。こうした人達とのつながりはビジネスに有益です。
また、こうした勉強会の主催者・講演者は、ときにベンチャーの経営者やCTOなどである場合も多いため、主催者側である先輩起業家とも仲良くなって人脈を広げていくのも手っ取り早いでしょう。
IT系以外でも、同業種の経営者が集まるようなイベント、勉強会、交流会は探してみるとたくさん開催されています。インキュベーション施設やベンチャーキャピタル、あるいは起業支援や経営支援の一環として行政機関や金融機関、商工会議所などが主催しているケースもあります。そうしたイベントに出ることが顧客開拓につながる人脈作りの第一歩になります。
逆に参加すべきでない交流会としては、異業種交流会をビジネスにしている団体が行っている交流会です。こうした交流会は参加費自体が収益源ですから、とにかく誰でも良いので参加者さえ集めれば良いという事で運営していることが多いため、参加者の属性も絞られていなかったり、宗教の勧誘や怪しい商品を売りつけようとする人が混ざっていたりします。人数も100名を超えるような交流会ですと、本当にただの名刺交換会になりがちなのです。
人脈作りでかならずやっておきたい3つの「当たり前」のこと
人脈作りと一言でいっても、単に交流会で名刺交換しただけでは、まず何も生まれません。顧客開拓が苦手という方は、営業パーソンであれば自然とやっている事が出来ていないケースが多いです。まずは以下の基本的な事項をしっかりと行うようにしましょう。
1.これから会う相手については、必ず事前に調べておく
イベントや交流会で出会った方と別途アポが取れた、あるいは誰かから直接紹介を受けてアポが取れたとします。
ここで、まず当然すべきことは、会う相手のことを調べておくことです。
先方のホームページを見て事業上の動きがないか、最近出したプレスリリースや新製品を発表してないか、あればその内容を頭の中に入れておく。先方の社長がブログなどを書いていれば、その内容も見ておきましょう。あるいは相手の業界に関する記事が新聞などに出ていないかチェックしておきましょう。
そうして実際に会った際には、事前に調査・用意していた話題をきっかけに、相手が興味を持ちそうなテーマや話題を探ります。短い会話の中でも、自社あるいは自分との共通点をできるだけ見い出すことで、心理的な距離を縮められる効果があります。
相手の強みを認める、褒めることも重要です。どんな企業も、自社の商品、サービス、ビジネスモデルにプライドがあるので、そこを褒められて気分を害する人はいないはずです。
2.次回のアポイント、会社概要などの資料送付の許可は、その場で聞く。そのうえで、お礼メールをすぐに送信。
記憶の鮮度が高い当日、遅くとも翌日にはお礼のメールを送りましょう。その際に、追加資料なども添付して、さらにアポ調整もできればベストです。
必ず自分から先にメールを送ることが重要です。メールアドレスを入力する手間を先方に省かせるためです。相手がビジネス上のキーマンで、それなりのポジションであればあるほど、もらった名刺のメールアドレスを自分で打ち込むことはしないでしょう。こちらから送らない限り、名刺交換止まりになります。
3.宿題をつくる
商談の最初は、まずはお互いの会社紹介が定番ですが、先方のニーズや課題を引き出し、次回までの宿題をもらい、回答することを約束することが大事です。
「宿題をつくる」ためには、相手の課題を聞き出すヒアリング能力が重要になります。
仮に宿題が難しい場合でもあきらめず、同業者や別の企業をご紹介するなどして対応し、相手に「貸し」をつくることも大切です。この段階では見返りを期待しないでください。
まずはGive を徹底し、自社と自分の強みや考えを伝えるとともに、信頼関係を構築していくことがポイントです。自社の売上や利益の獲得などの部分最適を考えずに、先方にとっての全体最適を考えることがポイントです。駆け引きをしないでお付き合いすることで、先方にとってメリットがある会社や人であると思われればいいのです。
つくった宿題は、有言実行が鉄則。一緒にやっていけるか、信頼できるか、そこで判断されます。そして、この宿題の回答で、あなたの対応の良さやサービス品質の高さを伝えられれば成功といえるでしょう。
スタートアップ企業にとって貴重なプレゼン機会は事前準備が重要
スタートアップの方は、人前でプレゼンする機会が多いと思います。スタートアップ系のイベントでのピッチやビジネスプランコンテストなど。あるいは交流会などでの名刺交換のタイミングなども貴重です。
そうした際、どれだけ常日頃から事前に準備しておけるかがポイントになります。自社の強みを相手に伝えるために、1分用プレゼン、3分用プレゼン、5分用プレゼンなど、時間を区切ったものを用意しておきましょう。
短い時間で自社をPRすることを「ピッチ」と言ったりします。語源はシリコンバレーのエレベータピッチで、エレベーターに乗っている数十秒の時間で初対面の人相手にセールストークを行うことから来ています。特にベンチャーやスタートアップの方は、このピッチを行う機会が多いでしょうから、あらかじめ用意しておくといろいろと使い手があります。
短時間でのプレゼンでのコツは、ダラダラした説明ではなく、「結論」が先にくる説明ができるかどうかです。例えば、何事も30秒・250字で説明することを意識してみましょう。
ピッチでの要点のまとめ方の例としては、以下のような4つがあげられます。
1.相手の抱える問題は何か。
2.自分達が提供できる価値は何か?
3.競合は誰か。競合との優位性は何か。
4.相手に意思決定してほしい事は何か。
例題をあげれば、これから3分間のプレゼンをする相手が、弁護士事務所の経営者だとします。
1.弁護士業界も競争が激しく、今後は生産性が問題になるかと思います。特に過去の判例や参考文献を調べるのは大変ではないですか?
2.当社は独自開発した法令文章を自動解析する人工知能システムを持っています。それを使うと、過去の判例や参考文献をすぐに探し出せたり、要約化を機械に行わせる事が出来、顧客への報告書などの作成にかかる労力を劇的に削減できます。
3.大手SIerや経営コンサルティング会社が同様のシステムを販売していますが、億単位の投資が必要です。当社システムは数百万円の投資で導入可能です。
4.当社のシステムの性能を実際にDemoさせてほしいので、IT技術の知見のある方同席の上、別途アポをいただけませんか。
相手から信用される、また会いたいと思ってもらう3つのポイント
人脈作りというのは、相手から以下に信用してもらえるかが重要です。そこで、私が心がけている3つのポイントを解説します。
①手ぶらでは会わない
「あの人は、毎回、面白い情報を持ってきてくれる」と思われることは重要です。なので、手ぶらはご法度。ネタの仕入を怠らないように努力をすることです。
一例ですが、私が新聞やネット、勉強会、技術力の高い企業が集まる展示会、それから他社のトップセールスマンから仕入るネタは以下のものです。
・業界の動向
・案件や要員等の情報
・競合他社の製品情報
・経営課題を解決しそうなさまざまなユニークな商材、サービスの情報
・利益に直結する最新の補助金、助成金情報
・法改正に伴う影響
・他社の成功事例など
とにかく広い範囲にアンテナを張り、情報収集を積極的にすることが重要です。営業としてその情報が活かせる局面が必ずきます。
②企業をご紹介された時には必ずご紹介者にお礼と進捗報告をする
ご紹介者にお礼と定期的な進捗報告をするようにしてください。ご紹介者にとってはうまくいっているかいないかが気になるので、その不安を払拭してあげましょう。
また、うまくいっていることを伝えれば、一定の評価が保証されるため、ご紹介者が自分の代わりにまた営業をしてくれたり、別の企業のご紹介をしてくれるようになります。
③誰かとお会いする時には自社の営業としてではなく、さまざまな会社を代表して営業している意識を持つ
そうすることで、さまざまな他社のサービスや商材も売れるようになります。結果的に、自社の商品やサービスも売れることもあります。また、相手に「この人に相談すれば即座に問題解決ができる、企業を紹介してくれる」と思われて、困った時に連絡できる人、すなわち後述の「Hub(ハブ)人材」という認識を持たれれば、営業としては大成功です。
「Hub(ハブ)人材」とは?
ベンチャー企業の経営者で営業や販促などがうまくいっている方は、「ハブ人材」を知っている事が多いです。
「ハブ人材」とは何でしょうか?
さまざまな情報が集まり、業界に精通し、人脈が豊富でビジネスマッチングに対して情報アンテナ力の高い方を、ネットワークなどにおいて各ノードに接続された複数のケーブルを集約するための装置であるHub(ハブ)に例えて「ハブ人材」と呼びます。
いきなりあなたがハブ人材になるのは難しいでしょうから、まずは「ハブ人材」と呼べる人と出会い、信頼関係を構築することからスタートしてください。
「ハブ人材」には日々さまざまな情報が集まってきます。情報が集まる会社や人になれば、自ずと仕事は舞い込んできます。ここで私がいつも気をつけていることがあります。それはその企業や経営者をご紹介することで、どういったシナジー効果が発生し、どういった可能性が生まれるのかを常に仮説を立て、問題のある企業や経営者を決してご紹介しないように細心の注意を払うことです。その目利き能力が信頼構築になるからです。そのことでまた情報が集まるという好循環が生まれます。
そして、自分がアプローチできてない企業にアプローチできる各業界へのハブとなるような人脈をつくり、定期的に有益な情報交換をしていきましょう。
しかし、こうした活動をまったくの独力で進めるのは困難でしょう。なので、交流会に参加する、先輩起業家に良い人を紹介してもらう、あるいは私のような「ハブ人材」を活用することが、効率的な顧客間開拓の最初のステップだと思います。
手前味噌ですが、もしベンチャー企業の経営者で営業に困ったことがあるのなら、まず私にご相談ください。かなりの確率でお役に立てられると思います。