Vol.1 人見知りで口下手だった私が、トップセールスになれた理由

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 もしあなたが、営業力に悩む会社の社長なら、営業マンとして雇いたいのはどんなタイプの人ですか?

 社交性があってコミュニケーション能力に長けている。機転が効いて、トラブルにも強い。真面目で会社への帰属意識が高い。

 ちょっと妄想がすぎましたが、そんな人はきっと、どこの企業でも引っ張りだこになるでしょう。転職市場において、自分の市場価値が高いことを十分に自覚している人は、待遇の良い企業に自分を売っていくものです。大企業に比べ、何かとリソースが不足している中小企業には、はじめから能力が高い人は、なかなか応募してきてくれないものです。営業未経験者を一から育成していかなければならないとしたら、どんな人を雇えばよいのでしょうか。

■人見知りで口下手だった私が、トップセールスになれたきっかけ

 私は教材販売会社の中央出版とそのグループ会社に20年間在籍し、営業職とセールスマネージャーをしていた経験を生かして、現在は企業の営業部門を対象としたコンサルティングや、営業スキルアップのためのトレーニングの講師をしています。

 そんな私でも、かつては営業の素人。中学生向けの学習教材の営業担当として活動するも、販売成績がなかなか上がらず苦しみました。人見知りで口下手な性格が災いし、リストラ候補になったほどです。

 しかし、きっかけをつかみ、入社3年目には所属会社の営業担当者として、全国で一番となりました。その後26歳で営業所長に抜擢され、セールスコンテストの全国優勝チームを率いるようになります。

 売れるようになった理由はひとつではありません。振り返ってみるとわかるのですが、考え方や行動のひとつひとつが、売れなかった頃と売れるようになってからはまるで違うのです。

 ということは、売れる人になるためには、性格の向き、不向きを問題にすることよりも、行動習慣を変えることに鍵があるのです。

 私自身がそうであったことに加え、コンサルタントとしてさまざまな企業の営業職の方と関わりを持つ現在、なおさら強く、それを実感しています。

■売れる営業マンの第一歩 当たり前のことができていますか?

 まず、挨拶をする習慣を身に付けることによって、売れる人と、売れない人の違いがはっきりと表れてきた例を紹介しましょう。

 あなたの会社も、新入社員にはビジネスマナーとして名刺交換の作法や、お辞儀の角度を教えることがあると思います。そのほかに、日頃から誰に対しても分け隔てなく気持ちの良い挨拶をする習慣を徹底させたことが、営業成果において良い結果をもたらしている会社があります。

 この会社のある営業所Aにて打ち合わせを行うため、私はセールスマネージャーを訪ねていました。話し込んでいるうちに、営業スタッフが次々と事務所に戻ってくる時間になりました。

 この業績の良い営業所Aの人たちは、座っている私の姿を認めると、相手がどこの誰なのかはわからなくても、「こんにちは」「いらっしゃいませ」と、立ち止まって挨拶をしてくれます。

 一方、業績の芳しくない営業所Bで同じ状況になったとき、営業スタッフの行動はまったく違いました。「誰だろう?」といった怪訝な表情を見せ、黙って脇をとおり過ぎていきます。会釈すらありません。

 さて、営業所Aのスタッフは皆、人なつこい性格だからでしょうか。Aでは、外交的で礼儀正しい人を採用し、Bでは引っ込み思案な人を採用したからでしょうか。

 いいえ、実はAとBは同じ会社です。新入社員の能力に、バラツキはほとんどありません。違うのは、AとBのセールスマネージャーの取り組みでした。

 Aでは、誰に対しても、挨拶をする習慣を徹底してつけさせていたのです。

 営業所が入居しているテナントビルの警備員さんや清掃係の人にも、律儀に挨拶をさせています。「挨拶をすることが当たり前」という意識を植え付けているため、自分から声をかけるのに特に勇気もいりませんし、挨拶をする義理のある人かどうかを考えて躊躇することもありません。

 また、宅配便の集荷係の人が荷物を取りにやって来たとします。応対するのは事務担当者であるにしろ、気づいた他のスタッフも「ご苦労さまです!」と声をかけます。それが習慣になっているため、入口の物音や、人の気配に、サッと反応ができています。

 一方のBでは誰が来ても、皆自分の仕事に没頭し、顔を上げることもしません。人の気配に反応しないのが営業所Bのスタッフです。

■営業力をあげるには、行動習慣からかえること。

 挨拶というものは、決して「作業」ではありませんが、営業所Aのスタッフには、目配りして人に挨拶をすることが「作業的習慣」と言えるほど身に付きました。

 私はその後、Aの営業スタッフ、Bの営業スタッフ、どちらにも営業先に帯同したのですが、この普段の「挨拶」の行動習慣の違いが、営業シーンでの対応力となって如実に表れていたのです。

 Bの営業スタッフは、営業先でのプレゼン中には、目の前の相手に話すことが精一杯になり、周りに目配りができません。面談相手の名刺はうやうやしく受け取るのに、お茶を運んできてくれた女性には、お礼のひとことも言わずじまいです。途中で、商談内容の決裁に関係があるかもしれない人が外から帰って来ていても、気づかずにいたせいで、「この件はゆっくりと検討させていただきます」と面談相手に言われ、商談を打ち切られています。

 一方でAの営業スタッフは、営業先では誰に対しても分け隔てのない態度を自然ととることができています。見た目だけでは判別できなかった商談のキーマンに対して、結果的に失礼な態度を取らなくて済んでいます。好感のもてる態度に気を良くしたお客様と、商談も盛り上がり、良い感触が得られたのでした。

 目配りや、気配りは、売れる営業のもっとも重要な要素のひとつです。それができない人は、営業シーンにおいて何かとチャンスを逃してしまいがちですし、自分がミスを犯したことにも気がつかないままなのです。

 もしあなたが、「自社の営業マンは気配りができない」とお悩みなら、それは決して生まれついての性格に左右されるものではないことを知ってください。日頃の訓練や習慣付けによって、誰もが身に付けられるものなのです。

■挨拶以外の習慣はどうでしょうか。当たり前のこと、きちんとできてますか?

 挨拶に限らず、営業マンであれば出来ていて当たり前のような事柄をリストアップしてみました。これらのことが、きちんと習慣化されてますか?

  • 人の話にメモは取らず、じっと耳だけで聞いている。  
    →ノートを常に携帯し、メモを取る習慣をつけよう。
     
  • わかっているふりをして、質問をしない。
    →成功事例に関心を持ち、人に対して質問を繰り返し、研究する習慣をつけよう。
     
  • 人の話を最後まで聞かずに、早合点する。  
    →相手の言葉を最後までよく聴き、その「本意」を知ろうとする習慣をつけよう。
     
  • 「一応」「とりあえず」が無意識のうちに口癖になっている人。  
    →説得力が薄まる余計な言葉をはさまないようにしよう。言葉に敏感になる習慣づけを。
     
  • 営業先に着ていく服にも自分の好みを優先させたがる。カラーシャツ、派手なネクタイ。  
    →どんなお客様の前でもふさわしい服装、持ち物か、常にチェックする習慣づけを。
     
  • お客様の反応により、自分の態度や振る舞いも左右される  
    →来た時よりも帰るときのほうが、より爽やかで礼儀正しい振る舞いを心掛けよう。

 いかがでしたか?

 1つ1つはとても簡単なことで。しかし、こんな簡単な事でも、意外と出来ていないことが多いのです。とくに売れない営業マン、苦手意識のある営業マンほど、その傾向があります。

 まずは自分自身、あるいは部署や会社で、当たり前のことがきちんとできているか、振り返ってみてください。出来ていない方は、一番基本的な「挨拶」の行動習慣から変えてみましょう。

 さて、次号では、誰でもトップセールスマンになれる営業の秘訣をお話ししたいと思います。

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