前回までにプレゼンの基本、構成方法などについて説明しましたが、さらにに説得力を増すプレゼンテーションを行うためのポイントをいくつかご紹介します。
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説得力をアップさせる3つのポイント
1.数字データや固有名詞を盛り込むと具体的になり説得力がアップします。
例えば、私が承認(認める・ほめる・肯定する・賛同する・賛成する)セミナーで紹介するのが、「褒められた生徒と叱られた生徒で成績が上がった人の割合』データです。
「褒められた生徒は71%成績が上がり、叱られた生徒は19%上がり、無視された生徒は5%しか成績が上がりませんでした。だから褒めることは、人のやる気を引き出し、前向きにさせるので大切なのですよ」という感じです。
2.比喩を使うとわかりやすく、引用(ことわざ・慣用句など)を使うと説得力が増します。
比喩とは、物事を説明する時、誰もがよく知っている物事になぞらえて表現すること。難しいことをやさしいことに例えてわかりやすく説明すると理解が深まります。
引用は、話したことの裏づけ・後押しをします。「中国の王陽明は知行合一と言いました。知って行わないのは未だ知らないことと同じであるという意味です。だからセミナーは受けただけではなく、行動が大切なのですよ」といった使い方です。
3.エピソードや感情が表れたセリフ(実際の会話)を入れると、リアリティーが生まれます。
私は実は、結婚直後に夫が失業しました。35歳でやっと結婚できて、結婚に夢もあった私は大変ショックで、夫と離婚しようかと真剣に悩んだことがあります。そこで父に電話をしました。
私:「お父さん、私結婚をあせってしまった。もっといい人がいたかもしれない。夫と離婚したい!」
父:「お前は何言ってるんだ!!!」← この一言で、私は目が覚めました。
…以上は、講演の時に時々使う実話なのですが、このように、具体的なエピソードや実際の会話を入れることで、あたかも自分もその場にいるような、臨場感あふれる話になります。ぜひ使ってみてください。
最後はやっぱり情熱が決め手
以上、3回にわたってプレゼンテーションの心構えから内容・技術について、さまざまなポイントをお伝えしてきました。
しかし、いくら内容や技術がしっかりしていても、情熱(想い)がなければ伝わりません。情熱あるプレゼンテーションをするためには、「ミッション(志)」を持つことです。
例えば、
「このビジネスが世の中に広がれば、もっと人々が幸せになる」「将来、こんな世の中を実現していきたい!」などです。
想いをこめることで、プレゼンテーションがガラッと変わった例を、実際に私はたくさん見てきました。 ある食品会社の副工場長のお話をしましょう。
4月に新入社員研修があり、講師を頼まれたのですが、しどろもどろであがってしまい、本来は1時間話す予定が、半分の30分で終わってしまったそうです。「何とかしてください!」と私のところにいらっしゃいました。
最初にプレゼンテーションしていただいた時は、おっしゃるように大変あがっていて、姿勢も悪く、声も小さく、内容も支離滅裂でした。しかし、その後よくお話を伺うと、新入社員の皆に向けて、「会社の素晴らしさをわかってもらい、家族皆で仲良く暮らしてほしい」という想いがあったのです。その想いに気づき、その点を深めただけで、本当に短時間で、姿勢や声の大きさ・メリハリ、内容まで劇的に変わり、見事なプレゼンテーションになったのです!
人間は「自分のためには頑張れないけど、人のためには頑張れるDNAを持っている」といわれています。副工場長も「皆のためになりたい! 役に立ちたい!」とベクトルを自分から相手に向けたことで、声の出方や姿勢、内容までもが一瞬で変わってしまったのです。
ぜひ、あなたもプレゼンテーションする前に、誰に・何を・どんな想いで伝えたいのかじっくり考えてみてください。そしてその想いを深めてください。一瞬で変わります。
このように、内容・技術・情熱(想い)の3つの要素が相乗効果を発揮して、初めて「心を動かすプレゼンテーション」が完成するといえるのです。