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お得感を感じる割り引きにズバリはあるのか?
あるコンビニエンスストアでのことです。
1本147円の飲料の棚に「今なら2本買うと60円引き」という札が貼ってあります。
1本 だけ買おうと思っていた私は、思わず2本買ってしまいました。
割り引きが私に2本買ったほうが得だと感じさせ、購買行動を変化させたわけです。
実は、どのくらいの割引率からお得感を感じるのかについては、さまざまなアンケート調査が行われるなど、具体的な数字を調べようという試みは今までにもあ りました。
やはり、それだけみんな気になるということでしょうか。
しかし、その結果をそのままズバリこれがお得感のある割 引価格だと言うわけにはいかないかもしれません。
例えば、日本のあるビジネス誌が飲食店利用について行ったアンケート結果では、10%程度の割 り引きがあれば利用してみたいという回答が多かったそうです。
また、飲食店ではありませんがアメリカでも同様の調査があり、その結果ではおおよ そ20%前後から得だと感じるといわれています。
マーケティングの専門家などの間では、30%ぐらいは割引がないと得だという実感は湧かないの ではないかという考えを経験則から示している人もいます。
これらの調査や意見をまとめると、お得感を感じる割り引きは10~30%前後 からということもできます。
でも、ちょっと範囲が広すぎるのではないかという気もしますね。
お得感を感じるさまざまなやり方
結局、アンケート調査や専門家の経験則はあてにならない?
いや、そう考えるのは気が早いです。
これらの調査や経験則は、うまく機能しており、実際に有意義なデータだと思います。
問 題は、割引率というものさしだけで判断しようというところにあります。
例えば、先ほどのコンビニエンスストアでの飲料の例をとりあげ ます。
コンビニエンスストアは、もともと定価販売の多いところです。
スーパーなどに対抗して一部商品の割引をすることもありますが、 まだまだ値下げの札を見る機会は少ないところです。
そこで、「今なら2本買うと割引」の札が効果的に働くのです。20%強の割引ですが、普段 は定価ばかり見ているのですから
余計に得に感じてしまいます。
同様に、書店などもバーゲンの少ないところです。
私のよく行く書店は、たまに特設コーナーをつくって在庫品の割引販売をすることがありますが、こういう時は特設コーナーに人が
群がります。
そんなに大きな割り引きではないのですが、本の割引は珍しいので人気があります。
逆に、東京のアメ横のような小売りもする問屋街やア ウトレットモールなどでは通常価格より安いのが当たり前です。
こういうところでは、10~20%程度の割り引きでは満足できません。
70~90%OFFなんていうこともあるのですから、なるべく掘り出し物を見つけようと頑張ります。
ところが、同じものが怪しいネオン街の寂れ た裏とおりで売っていたらどうでしょうか?
いくら安くしますよと言われても、本当に定価の価値があるの?と疑ってみたくなりませんか?
また、高価な商品だったら割引率は低くても、絶対額で判断することもあります。
例えば、自動車などの商談では何%値引きますなんて言い方はしま せん。300万円の自動車を値引き25万円、オプション10万円分、合計35万円サービスでどうでしょう。
こんな感じで、お得感を感じることと 思います。
割引率としては10%ぐらいですが、実感としてはそれ以上です。
反対に日用品などだったら、割り引きよりも均一価格 なんて言われた方がそそられることもあるかもしれません。
100円均一で、つい余計なものを買ってしまうことなんてありませんか?
ようするに、お得感というのは商品内容や売っている場所、それから表現のしかたなどで、いともあっさりと感じ方が変わってしまうということです。
お得感を持ってもらうためのはずせないポイント
人が感じるお得感というのは、これぐらいあ いまいなものです。
商品を提供する側のコントロールできること以外にも、購入する人の性別や年齢、家族構成や生い立ちだって影響するかもしれま せん。
しかし、割引率はさまざまな状況に左右されるとしても、お得感を持ってもらうために共通するポイントはあります。
それは、価格の価値を十分に伝えるということです。
本当は高いものが、わけあって割り引きになるから、より一層得だと感じるので す。
元々の定価の価値が伝わらなければ、いくら割引率を上げたところで購買には結びつかないでしょう。
お得感は割引率で決まるもので はなく、顧客が商品の価値をどう感じるかで決まるものなのです。