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困った出来事は何を教えてくれるのか
「まったく、近頃のお客 様は値段のことばかり言うんだから」
先日、ある社長がこんな独り言をいっている場面に出くわしました。
聞けば広告などからの問い合わ せはあるのだけれど、来るお客様は値段のことばかり気にしていて、それ以外の話を真剣に聞こうとしないのだそうです。
また、こんな ことを言っている社長もいました。
「うちのお客さん、頑固な人が多くてさ。相手のためを思って言ってるのに、なかなか言うこと聞いてくれなくて 困ったもんだよ」
どちらの社長の言葉からも特別なこととは感じないかもしれません。
たしかに本当に困った人というのも少なからずいる からです。
でも、そういったことをどうしようもないことと片付けてしまう前に、その出来事が何を教えてくれるのかを少し考えてみてもよいかもし れません。
なぜなら、あなたがお客様に対して発しているメッセージにも原因があるかもしれないからです。
LIKE(ライク)の法則
人はどんな人を好きになるか?
「LIKE(ライ ク)の法則」と呼ばれるものがありますが、このことはマーケティングのメッセージにも当てはまります。「LIKE(ライク)の法則」のその1は、人は自分 と似た人を好きになるということです。
例えば、仲のいい人と初めて出会ったときのことを思い出してみてください。出身地や住んでいるとこ ろが同じだったとか、年齢が近いとか家族構成が同じようだとか、趣味が共通していたとか、そんなちょっとしたことで共通点がみつかって話が盛り上がったと いう経験はありませんか?
あるいは、そのとき同じ場所にいたということがすでに共通点だったのかもしれません。つまり、似ているところ、 共通点を無意識のうちに探し、それを好きか嫌いかの判断基準にしているということです。会社の場合だと、会社の雰囲気、会社のキャラクター、社長や社員の キャラクター、ミッションなど、その他さまざまな事実、イメージ、価値観の表明などから顧客はその会社と自分の似ている部分を無意識に判断します。ですか ら、顧客のなかにはその会社の持っている一つひとつの要素を見ることができます。まさに「顧客は会社の鏡」というわけです。
先ほどの話で も、「値段のことばかり言う」とこぼしていた社長は、自身もとにかく価格を値切ることばかり考えていたし、「頑固な人が多くて」と嘆いていた社長は、自分 自身も頑固なまでの職人でした。第三者から見ると、まるで鏡に映った自分に向かって文句を言っているのを見ているようなものなのです。
そのメッセージ大丈夫?
さて、ではこうした顧客が最初にあなたの会社を判断する入り口とは何 でしょうか?
それは、広告のメッセージです。正直なところ、前述の2人の社長はいいほうです。なんだかんだと言っても顧客とは共通点を 持っていて、付き合って楽だと感じる部分もあるからです。頑固なお客だと言いながらも、頑固なまでに品質にこだわる自分の価値観もお互いに理解しあってい る、という信頼関係を感じることができるからです。
ところが、メッセージの作り方で顧客との苦しい付き合いをしなければならないことが あります。反応がいいという理由で無理して他社のメッセージを真似したときです。いわゆる猿まねです。これはやっかいです。
通常は、会社 の持ち味とメッセージの違和感に気持ち悪さを感じて顧客の反応は悪くなることが多いものです。しかし、メッセージの作り方がうまくなると、個性を抑えて作 りこむこともできるようになります。すると、会社のキャラクターとは合わない、本来は来ないだろう顧客も集まってしまいます。
集客がうま くなったがゆえに、やっかいな仕事ばかりが増えてしまった。信じられないかもしれませんが、こんなことが本当に起きるのです。
自社の持ち 味がちゃんと伝わっているか。メッセージは慎重に吟味しましょう。