最近の消費者はプロ並みの知識を持っている人もいる。そんなことを聞きます。 でも、やっぱり商品のことを考えたり接したりする機会からすれば圧倒的にプロの方が上、プロ以上に知識のある顧客もいないことはないでしょうが、そう多く はありません。 商品やサービスの提供者、プロとしての自覚が高ければ高いほど熱心に商品の研究をしていることでしょう。 しかし、そんなプロだからこそ陥りがちな罠があるとしたら・・・
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プロだからこそ気をつけたいこんなこと
Aさんは和菓子職人。 腕の良い職人のAさんは、その腕の良さに奢ることなく研究熱心でもあります。日々、新しい和菓子を作ろうと研究を重ねています。
そんなA さんですが、最近の子供達の和菓子離れという話を聞いて将来が少し不安になってきました。
しかし、一方で生クリームやチョコレートなど、 従来は洋菓子で使われたような材料を使って作った和菓子が人気だという話を聞いて、自分も便乗しなければという気になってきました。もともと創作菓子が得 意なAさん、子供や若い人に受け入れられそうなお菓子をいろいろと考えて作っていきました。
しかし、思ったように売れません。なぜでしょ うか?
私がカウンセリングの手法でヒアリングしていくと、意外な盲点がみつかりました。実は研究熱心で職人気質なAさん、菓子づくりは人 任せにしたくないということで、ほとんどの時間を製造現場で過ごしていました。そのため、自分のお店の本当の顧客を見失っていたのです。そこで、わずかな 時間でいいから直接顧客と接する機会をもってもらうようにアドバイスしました。勘のよいAさんのことです。直接アドバイスするよりも自分で気づく方が、す ぐ行動に移せるだろうと私は考えたからです。ほどなくしてAさんは、自分のお店に来る顧客と接しているうちに、今までの自分がこうでなければ売れないと 思っていたのが、自分の思い込みだったのではないかと気がつき始めます。
そうです。プロと呼ばれる人がもっとも陥りがちな罠と は、「思い込み」なのです。
見方を拡げると選択の幅、可能性が広がる
商品を売る側である我々には、いつでもAさんと同じようなことが起きる可能性があります。自分の思い込みの枠に閉じこもるのではなく、外にでていろいろな 角度からものを見ていくことで、さまざまな可能性や選択肢に気づくことができるのです。
最近のヒット商品にも既存の思い込みを外して成功 したものをたくさんみつけることができるでしょう。 例えば、資生堂の「ツバキ」はそれまでヘアケア商品は日用品、だから価格重視の低価格でなければ売れないという思い込みを外して、高価格帯のヘアケア商品 という市場開拓に成功しました。
それから、少し前になりますが「ツーカーS」という携帯電話は、それまでどんどん多機能化する携帯電話の 中で、液晶すらないというシンプルさでシニア層を中心に売れました。液晶のない携帯電話なんてと思いましたが、これもよく考えれば思い込みです。
そして昨年、仮面ライダーカブトで誕生35周年を迎えた仮面ライダーシリーズでも、今年からの新シリーズで電車に乗るライダーが誕生するという、バイクに 乗るからライダーなんだろうという思い込みを見事に外してくれた「仮面ライダー電王」が登場。それまでのライダーシリーズの流れを汲むシーンは、電車のな かに据え付けられたバイクでかろうじて演出されていますが、それはまるでゲームセンターのようです。しかし、子供達の受けは良くグッズの売れ行きは今まで 以上のようです。
顧客、環境は変化する
プロとしてのプライ ド、仕事へのこだわりは大切です。しかし、ビジネスとしてみれば顧客の反応にこそ意味があります。
そして、顧客やビジネスを取り巻く環境 は、常に変化しています。
その変化を読み取り、顧客にとって有益な商品やサービスを提供する。
ビジネスライクに感じら れるかもしれませんが、実はこうしたことは、常に顧客の方を向いて、自分の力をどう役立てられるのかという献身的な努力の賜物なのかもしれません。
本当に良い仕事をするプロであればあるほど、求められていることではないでしょうか。