- 目次 -
顧客の絞り込みを難しくする2つの壁
「顧客を絞り込め」
マーケティングの本な どでよく言われていることですね。より効果的なマーケティングのために顧客を絞り込む重要性は、今さら説明の必要もないでしょう。
ところが、実 際に絞り込もうと思うと難しく感じるのも顧客の絞り込みです。
私のクライアントさんでも、最初から顧客の絞り込みが上手く出来る 人は稀です。なぜなら絞り込みを行う際に、彼らは共通して2つの壁に直面するからです。
1 つは、絞り込む方法が分からないというもの。
もう1つは、絞り込んでしまったら顧客が減ってしまうのではないかという心配です。
そこで今回は、この1点目に挙げた絞り込む方法についてお話をしたいと思います。
「アラフォー世代の女性」「メタ ボが気になる中高年」は絞り込みではない
顧客絞り込みというと、「都心部の20代の独身OL」「美容に関心のあるアラフォー世 代」「メタボが気になる40代男性」などを思い浮かべる方もいるかもしれません。たしかに、これらは地理的特性(地域など)、人口動態的特性(年齢、性別 など)、行動的特性(使用頻度など)、心理的特性(ニーズ、ウォンツなど)などのセグメンテーション(市場を細分化することで、マーケティング上、同様と 考えて差し支えないようなグループに分けること)の要素を含んでいます。
顧客セグメンテーションは、顧客の全体像、マーケティングの大まかな方向性には役に立つのですが、これだけで は実践レベルでかなり苦労することになります。
実際、ビジネスプランなどの相談を受けた経験の中で、顧客ターゲットを上記のように設定されてい て、実際の起業後に苦労して相談されてきた方も多くいらっしゃいました。
なぜ苦労するかというと、20代の独身OLといってもさまざまなの で、当の本人がピンと来ないのです。
20代って言っても20歳と29歳じゃだいぶ違うし、OLって言っても業種によってもさまざまだ し・・・と、早くもブレを感じてしまうのです。
顧客絞り込みのコツは、具体的モデル化
そこで、私がお勧めしたいのは、さらに「具体的にモデル化」する方法です。
この方法は、顧客そのものがイメージできるので、具体的な商品開発、 マーケティング、販促を行うときにやり易さが全く違います。実際に顧客がいるなら、その具体的な顧客をターゲットモデルとして人物像を掘り下げて考 えてもよいと思います。
例えば、先日も私のクライアントである、
和菓子屋さんが、この方法で思わぬ突破口を見出しました。
ここの店主さんとはその前にもターゲット顧客に ついて話をしたことがありましたが、店主から出てきた答えは「近所の中高年世代の方」。
これでは、具体的な取り組みに結びつきません。
そこで、少し時間をとって、具体的にどんなお客さんがいるかを聞いてみることにしました。
年代、性別、職業、住んでいる地域などはもちろんのこ と、名前、背格好、顔、髪型、性格、趣味やちょっとした癖に至るまで、とにかく分かる範囲は残らずヒアリングしました。
そこで今回は、来店頻度 も多く、店主とよく話をするお茶の先生をしているお客を掘り下げて考えることにしました。そのお茶の先生の実際の生活やレッスンの様子はどうだろうかと、 ヒアリングを重ね、断片情報を元にイメージしていきます。
例えば、どんな事に関心があるかとか、生徒さんとは、どんな話、どんなやりとりがある のか、友人関係はどうか、何を大切にしているのか、その他たわいのないようなことでもいいのです。
すると、生徒さんへの紹介を促進する のに商品説明のしおりを一緒にお持ちしてはどうか、具体的な内容はこうしたらよさそうだ、お茶の先生同士の紹介は、こんなツールを用意したら起きやすいの ではないか、お茶会のサポートも告知しても良いのではないか、そういえばこの取り組みはしてなかったなあ、などといった具体的な取り組み案を発見しやすく なったのです。
こんな風に、たった一人の顧客なのに、実際の人を具体的にイメージしていくと、それまでは漠然として分からなかっ たものが見えてきます。このお菓子屋さんのように実在の顧客がいる場合は、その人を思い浮かべればいいので難しくはないと思います。
重 要なのは生身の人間像
起業前で実在の顧客がいない場合や、実在の顧客はいるけれどよく知らないという方などは、仮想顧客 を具体的に作ってみるとよいでしょう。実際の顧客の全部は知らなくても断片的に情報を得ている顧客はいるはずです。
また、見込み客にな りそうな人や友人などもいると思います。
そうした断片情報から、1人の具体的な顧客像を作ってみるのです。
また、インターネットを使うことで、かなりのヒントをもらえます。各種統計調査はもちろんのこと、ブログ、SNS、 Q&Aサイトなどは生の情報の宝庫です。グーグルブログ検索など、ブログだけを検索してくれる検索エンジンもあるので、調べるのも簡単です。
試しに検索してみると、通販で何を買ったとか、何にはまってる、何に困ってる、など、かなり赤裸々に語られています。
ちなみに、断片情報から1 人の具体的な顧客像を作る方法は、比較的顧客数の多いところや複数の社員でマーケティング会議をする必要のある会社にもお勧めです。社内の共通言語 として、社員間のコミュニケーションをとりやすいからです。
具体的モデル化法。ちょっと乱暴に感じるかもしれま せんが、やってみると今まで以上に鮮明にマーケティング戦略をイメージできることと思います。さっそく試してみてください。顧客がグッと近くなった感じが しますよ。
それでは、もう1つの、絞り込んでしまったら顧客が減ってしまうのでないかという心配については、次回後編でお話しします。