Vol.1では「ECテストマーテケィング」について解説させていだきましたが、Vol.2では私の経歴やECビジネスの歴史を紐解き、これからの中小企業は商品開発力が勝負を決めるという点について解説させていただきます。
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EC成功の3要素は人・ノウハウ・商品力。
私は創業時、ネットショップで成功する上位1割企業に共通する成功ポイントを「ネットショップの成功の3条件」と定義しました。それは、人、ノウハウ、商品です。
このうち、人は説明不要ですね。ECといえども、相手にするのは生身のお客様ですから、お客様からの問合せへの対応は接客そのものですし、商品ページの作りは陳列棚、メールマガジン、すべて人が行う作業です。あのユニクロでさえ、未だに柳井社長がチラシのチェックをしているそうです。
また、ノウハウというのは、SEO対策や広告のクリエティブ、あるいは商品の仕入れから注文を受けてから配送までの業務フロー全般などですね。
しかし、優秀なEC運営スタッフを採用するのは至難です。特にIT系に強い人材は常に不足しており、高いスキルや十分なノウハウを持つ経験者を中途採用するのは困難です。かといって、新卒で採用して育てるのも同じく時間とコストがかかります。
つまり、人やノウハウをもって差別化、競争力としていくのは、経営戦略として非常に難しいと言えます。しかも、ノウハウなどは、突き詰めていくと、いずれ差がなくなってきます。やらなければ負けてしまいますが、やりつくしたところで横並びです。
そうなると、これからのECでは商品力が勝負になってきます。ECサイト自体の運営業務やノウハウは外部にアウトソーシングし、商品開発に集中すべきです。
しかし、高品質の商品を低価格で売る事にかけては、大手企業にはかないません。コンビニで売っているプレミアム・スイーツはよくできています。あの味を、あの価格で個人経営のケーキ店が行うのは不可能でしょう。あるいはユニクロなどが売っている服を、中小のアパレルメーカーが同品質・同価格で製造・販売するのは非常に困難です。
そうなると、生き残る道は高品質かつ高価格な商品です。それもニッチなものであればベターでしょう。マーケットサイズが小さければ大手は参入してこない(投資に見合わない)からです。つまり「高品質×高価格×ニッチ」というのが、中小企業が売れる商品を作る方程式です。
日本の高品質な商品は世界中で売れます。日本製である事が1つのブランドになっているからです。爆買としてよくニュースになる中国人観光客は、1年間で1兆円以上も日本製品を購入していくそうです。
ECの潮目が変わった
ECの世界をざっくり解説すると、日本全体の小売物販市場が約150兆円あり、そのうちECは7~8兆円、EC化比率は5%程度と言われています。小売市場全体はシュリンク傾向ですが、ことECに限るとまだ成長は続き、2020年までに10%に拡大すると言われています。
EC市場のうち、流通額でみると楽天が2兆円、Amazonが1兆円(グローバルでは7.7兆円)。そこにYahooショップや流通大手や家電量販店などのEC事業が続きます。大手資本を除いたECでは、売り上げと利益をしっかり確保できる優良店は上位1割ほど。残りの9割は非常に厳しい経営を続けています。実際、大手モール出店店舗数が初めて昨年減少、一時はトップを張っていたECサイトが倒産、また運営継続が難しく統合、譲渡という記事もよく目にするようになってきました。こういったニュースはまだまだこれから出てくると思われます。
今やECは新規参入し易くなっている分、競争は激化する一方です。BASEやYahooショッピングがECの開設無料化を仕掛けた結果、ECサイトを立ち上げるだけならゼロ円で出来るようになりました。しかし、開設したからといって商品が売れるわけではありません。売れる店づくりには、コストも時間もかかります。
2000年頃に立ち上がったEC市場は、2005年頃まで「小売業」の時代でした。街のケーキ屋がネットで美味しいチーズケーキを売り出せば、メディアが物珍しさで取り上げてヒット商品となり、それを見た近くの競合店も参入してくる・・・そんな時代でした。
2005年から2010年にかけては「卸売業」の時代になります。ECサイトはリアル店舗に比べて低コストで運営できますので、卸売業者が小売店を通さず自分で売るようになりました。その方が儲かるわけです。そうして、ECはひたすら価格競争になり、米やお酒、飲料水などが売れ線になります。食品、生活用品、消耗品が薄利多売される時代です。重くてかさばる物はネットで買ったほうが楽という側面もあります。この結果、EC市場の世界では「小売は死んだ」などと言われました。
そして2010年から現在にかけては、メーカー直販の時代と言われています。卸売業者を通さず、メーカーが直接売るわけですから、価格では競争になりません。ダイレクトマーケティング全盛です。また、形が悪い、生産時に余ってしまった規格外の商品が「訳あり品」といった名目でも売られ始めました。一時期、ブームにもなりましたよね。こうして今度は卸事業者に売れ筋の商品が流れないわけですから「卸売が死んだ」と言われました。
業界としても2014年には潮目がかわったと感じました。この時、はじめて楽天の総出店数が年間ベースで減少に転じたのです。BASEやYahooショップによる無料化の衝撃も大きかったですが、業界全体としての成長に疑問符が付いたと感じました。
中小企業が勝負できるフィールドは、高付加価値・高品質。
私の経歴を簡単に紹介すると、新卒で化粧品会社に就職し、2001年に楽天に転職しました。当時の楽天はまだ200名ほどの規模で、Eコマース自体が黎明期でした。
その後、2007年に起業し、EC事業者を支援するビジネスをはじめました。当時楽天で優秀だったECコンサルタント、元楽天店長を何人か引き連れて独立したので、優秀な人材も揃っていました。なにより楽天で培ったノウハウが武器でした。
創業してはじめたのは、B-storeというB2B向けの卸売サービスです。簡単にいうと、ネットで売れている商品、例えば楽天ランキングの上位商品を大量に仕入れて、それを人気のあるネットショップに卸売りしたのです。売れる商品を人気のショップに並べるわけですから、当然ですがたくさん売れました。
そうして、起業をしてすぐ年商は億を超えましたが、ここから停滞気味になりました。他の卸売業者も同じことを始めた、あるいはメーカーが自分達で売り始めたので、競争が苛烈になってしまったのです。創業当初まさに卸事業EC全盛、しかしその流れもメーカー直販時代の到来の波に、ビジネスモデル自体の変革をしなくては生き残れなくなり、新しいビジネスを模索しなくてはなりませんでした。そこで着目したのが「ECテストマーテケィング」です。
小売の時代、卸売の時代、そしてメーカーの時代と来ていますが、この先に起こる事はなんでしょうか。
メーカーといっても各社の体力には差があります。大手メーカーは高品質で低価格な商品を大量に製造して販売する事が得意です。それこそグローバルな競争下でコモディティー化した商品では、生き残れるのは数社程度です。中小のメーカーはとても敵いません。
そこで中小メーカーは高品質で高価格、かつニッチという道しか残されないわけです。しかし、売れる商品を作るのは大変です。開発費や広告費が潤沢にあるわけでもなく、売れると思って投資してもさっぱり売れないとなると悲惨です。なので、テストマーケティングがとても重要になってきます。1つのヒット商品を作り出すために100種類のテスト商品を売ってみる・・・そんな競争になるわけです。
しかし、100種類もの商品を開発してテストするのは大変です。そこで低コストで行えるECテストマーケティングこそ、中小企業が効率的に商品開発を行うのに適した方法と言えます。