ズバリ言います。世の中には完全に無料の商品やサービスなどは存在しません。無料と謳われているものでも、当然、何らかの対価の提供が求められますし、また、その裏側には何らかの運営コストが発生しているのです。しかし、その運営コストをユーザー以外に求めることで、人気のサービスとなり、収益を挙げている事例はたくさんあります。
2006年に登場した「フリーミアム」というキーワード。インターネットサービスを行ううえのコストが劇的に低下したことで、無料でサービス提供できるようになりました。もちろん完全に無料というわけではなく、広告、追加機能の課金、あるいはそこに集まったユーザーに対するアンケート調査などの収益でビジネスとして成立しています。
広告モデルでもっとも有名なのはGoogleでしょう。Googleで検索したりGmailのメールのやり取りをしている画面に広告が表示されています。また、追加機能の課金モデルではクックパッドなどが成功例として取り上げられます。
しかし、最近はインターネットサービスだけでなく、リアルなサービスでも無料を売りにしたものが数多く登場しているのです。今回は、無料型のビジネスモデルで成功している事例を取り上げたいと思います。
- 目次 -
事例
無料で服がもらえるサービス「タダ服.com」
その名のとおり、無料で服がもらえるサービスです。ただし口コミ協力が条件。アパレル側から宣伝費代わりに服を提供してもらうことで実現しています。無料といってもお洒落なアイテムがずらりと並んでいます。当選者数も限定されているので、競って口コミに協力したくなりますね。
https://tada-fuku.com/
無料でパンツがもらえる「フリパン」
企業の広告をパンツに掲載することでユーザーにボクサーパンツ(下着)を無料でプレゼントする、というサービスで、会員数は13万人を超えているそうです。パンツは人が1日のほぼすべての時間、身につけているアイテムです。そこに広告を出すというのは思い切ったアイデアですね。ちなみに、フリパンは特許申請中のビジネスモデルだそうです。
https://free-pants.jp/
無料で傘を配布している「タダカサ」
「傘」に広告を入れて、提携店舗に配布。雨の日などに無料で利用できるようにしている「タダカサ」というサービスがあります。また、「タダカサ」にクーポン機能を付けることで、利用者の手元に残るようにするなど“傘の廃棄率削減”も狙っています。雨の日などコンビニで買った傘をすぐに捨てる人も多いですが、そうした問題の解決にもつながる “エコな”アイデアですね。
http://www.zenryoku.co.jp/tada/index.html
無料でスマホアプリの専門学校に通える「RainbowApps」
就活生向けの無料学校です。iPhoneアプリやAndroidアプリの開発講座3時間×20コマを無料で受けることができます。これまでに700名以上の方が受講。サイバーエージェント、ソフトバンク、リクルート、DeNAなどの有名企業への就職実績があるそうです。収益は人材を求める企業側から得ています。特にIT人材、エンジニアは求人難が続いているため、企業側はコストをかけてでも優秀な人材を獲得したいというニーズがあります。
無料の電子カルテ・システム
医療情報システム(EHR)市場で、医師の顧客満足度調査(ザ・ブラウン・ウィルソン)1位の人気企業。それは、プラクティス・ フュージョン社というサンフランシスコに拠点を置く、2005年設立のベンチャーです。ここはなんと無料で、EHRシステムを提供しています。EHRシステムは、カルテや医療画像の保存・検索、電子処方箋、スケジューラー、データ送受信などから構成されています。ちなみに、高度な情報保護が求められるため、システム構築には最低でも数百万円が相場という世界です。プラクティス・フュージョン社は、どこよりも優れたEHRシステムを構築して多数のユーザーを得ることを目標としており、EHR内に広告枠を設けて大企業からの広告収入を得ています。医療機関向けに商品を売りたい製薬会社などは、大量の広告費や販促費を投じているため、こうしたビジネスモデルが実現しているわけですね。
無料の観光バス「パンダバス」
運営しているのは、セグラスツーリズムエージェンシー株式会社という旅行会社。浅草界隈を訪れた人々に、観光や散策を楽しんでもらうため、浅草界隈のさまざまな企業が「広告」を出して、この無料観光バスの運営を支えています。2020年の東京オリンピックに向けて観光産業は国も力を入れている成長分野の一つ。ますます増える訪日外国人向け無料サービスには、いろいろ可能性がありそうです。
無料で自転車が借りれる「pillar café(ピラーカフェ)」
pillar café(ピラーカフェ)という渋谷にあるカフェが無料のレンタサイクルを行っています。自転車に乗って一汗かいた後は、なんとシャワーも無料で使えます。その代わり、カフェで食事していってね、というビジネスモデルです。自転車をレンタルできる時間は、カフェでの利用料金によって変わります。500円以上だと1時間以内、1000円なら3時間以内といった具合。競争の激しい観光地などで使えそうなアイデアですね。
激安のヘアサロン「Cuttaloca(カッタロカ)」
この事例は無料ではないのですが、500円という格安価格でヘアカットしてくれるというユニークなサービスです。ただし、カットモデルとして宣伝に協力することが条件です。美容師側が登録したカットモデル希望者にオファーを出して、成立すればカットモデル希望者がマッチング料金として500円を払うという仕組みです。通常であれば数千円はするカット代金を劇的に下げることに成功したサービスです。
http://cuttaloca.com/
無料で結婚式「タダ婚」
電車内によく広告があるので見たことのある方も多いかもしれません。結婚式を「タダ」でプロデュースするというサービス。参列者を50人以上集め、1人1万7000円 のご祝儀を徴収することを条件に、新郎新婦の負担をゼロにするというプランです。
http://tadakon.com/
無料でアイスティーがもらえる自販機「BOS Ice Tea」
南アフリカのBOS Ice Teaというブランドが設置した自販機では、無料でアイスティーがもらえます。自販機のTwitterアカウント(@bos)に、#BOSTWEET4Tというハッシュタグとともにツイートを送信することが条件。ツイートしたお礼として、アイスティーのサンプルがもらえるという仕組みです。
無料でリフト券がもらえる「雪マジ!19」
「雪マジ!19」は、19歳のリフト券を無料にして若者の集客を図るキャンペーン。仕かけたのはリクルートのじゃらん。会員数15万人。2013年度、雪山訪問人数延べ50万人という大成功を収めました。日本には約600のスキー場があり、その半分は赤字経営だそう。スキーやスノーボード人口を底上げするには、若者の参加率を上げる必要があります。そこで、ゲレンデでもっとも高価なリフトを無料にするアイデアを思いついたそうです。
グループインタビューに参加するとご飯をおごってもらえる「ゴチソー」
企業が事業を運営するなかで、「リアルなユーザーの声を聞きたいなぁ…」というニーズが出てきます。そんな企業側のニーズを満たすために、ユーザーから座談会形式でリアルなフィードバックをもらうことができるサービスです。座談会に参加するユーザーは、ご飯を奢ってもらえます。
https://gochi.so/
無料サービスがヒットしやすい条件
今回は、12の事例を紹介させていただきました。いずれも、クライアントからの広告費や販促費が、無料サービスの原資となっていますが、無料サービスを成功させるためにの、いくつかのポイントが見えてきました。
1つは「もともと、その商品やサービスが高額である」こと。高額ゆえに、無料ないし激安というインパクトが大きくなります。
もう1つは「成長市場」ないし「競争が激しい市場」であるということ。観光産業や医療産業、IT業界などはこれから高い成長が見込まれるので、積極的に広告・販促への投資が行われています。投資意欲が高い産業や企業は、無料サービスなどの企画にも反応しやすいと思われます。
また、競争が激しく従来のプロモーション施策では成果が求めづらいと業界などにも無料サービスは刺さりそうです。「雪マジ!19」などはそうした事例でしょう。
ここで挙げた以外にも、まだまだ多くの分野で無料サービスのチャンスがあると思います。無料というのは強烈な競争力・訴求力を持ちます。マスコミなどのメディアにも紹介されやすいでしょう。
ぜひ知恵を絞って、斬新で画期的な、成功する無料ビジネスモデルを考えてみてください。
執筆者:ドリームゲート事務局 宍戸