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プロとしての知識、技術をアピールで不安を解消
低価格に頼らないためには、価格以外の価値を 認めてもらうことが必要です。一つの例として、自転車量販チェーンの「あさひ」があります。ここ数年急成長を続けている同社は、自転車専門店ならではの品 揃えの多さとプライベートブランドによる価格の手頃さが有名ですが、実は、修理スタッフが充実しているのも人気の理由の一つです。
価格の安さでは通販やホームセンターなどの方が安い場合がありますが、アフターサービスや万が一の不具合などは、これら のお店にはほとんど期待できません。自転車を購入する、多くの人にとっては、自転車のメンテナンスを自分でするには知識も技術も乏しく、不安があります。 高単価のスポーツ自転車などを購入する顧客層にしても、細かな調整には経験が必要ですし、こだわるからこそアドバイスが欲しい時もあります。あさひでは、 社員のほとんどが自転車技師、自転車安全整備士の資格を持って、販売に携わっています。この事実が、一般の顧客にも、こだわりを持つ顧客にも、大きな安心 を提供することを可能にしています。これが、市場において大きな支持を受けているようです。
長く使うためのサービスで顧 客との接点を増す
また、日本橋の包丁店「木屋」のように、アフターメンテナンス自体が人気サービスとなっている店もあります。創業210年以上の 老舗である同店では包丁の刃研ぎも受けています。
価格だけで判断すれば、新しいものを買ってしまった方が安上がりである場合は多いと思いますが、 それでも、遠方から送料を支払ってでも頼む方もいます。買うより高くても気に入ったものを研ぎなおしてでも使い続けたいという人がこうしたサービスの利用 者ですが、最近のエコ意識の高まりなども追い風となって利用者は増加傾向にあるようです。
一本数万円という高級品も扱う同社。このようなサービス があるからこそ、また商品の価値が引き立ち、そのサービスをきっかけに同社の商品が欲しくなるという、効果も期待できるのです。
今 こそ考えたい、顧客と長く付き合うための取組み
さて、これらの事例は商品に付随するサービスをアピールすることで成功した事例と 言えますが、我々はこれらの事例を参考にどんなことができるでしょうか。
まずは、価格を下げることが本当に販売増につながるのかを 見直すことです。
例に挙げた、自転車や包丁を扱うお店が、価格を下げたとしても、長期的な販売増には、つながりません。むしろ反対に、安 くしすぎると品質面の不安が大きくなり、販売減ということもありえます。
あなたが扱う商品は価格を下げた販売手法をとった場合どの ような、メリットとデメリットがあるかを、見定めることが重要です。
次に考えたいのは、長期的視点で顧客との付き合いを考え た場合、どんなことが出来るかということです。
言いかえると、短期的な価格サービス以外に提供できるサービスを考えることです。事例のよ うに、アフターサービスやメンテナンス、専門家によるサービスがズバリ当てはまる業種もあるでしょう。
そうでない場合は少し工夫が必要ですが、例 えば商品を使う機会を増やすイベントやニュースレターなどの顧客啓蒙ツールの作成、関連商品の案内やサンプル商品配布会を企画するなど、長く顧客と付き合 えること、顧客との接点を増やすことに焦点を当てて考えてみると良いでしょう。
新規顧客を取りづらい状況は、業界によっては今後ますます 厳しくなると思います。このような時代には、いつも以上に、一度つかんだ顧客と長く付き合うことが重要になります。顧客との付き合いの長さ、接点の多さが あってこそ、ニーズに合った提案も出来、信頼も得られるというものです。
最近は、中高年のみならず若者でも良いものを長く使い続けたいと いうニーズがあります。
このような意識変化をうまく味方にして、値引きに代表される短期的な施策だけに頼ることなく、購入後も長く 愛されような取り組みを考えてみましょう。