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吉見鉄也氏プロフィール
(株)ド ワンゴ 執行役員 事業開発部長
(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)田辺エージェンシー、
コ ナミ株式会社を経て、2002年に(株)ドワンゴ 入社。
現在は主にアライアンス業務を担当。
Q.エンタメの世界でさまざまなご経歴をお持ちですが、そもそもどうしてモバイル業界を選ばれたのでしょうか?
新しくて面白そうだったから、それだけでした。
ドワンゴ入社当時は、着ボイス販売事業に関わったのですが、その当時はそれ(着ボイス)をやって いる人がいなかったんです。
これは面白そうだと思ったのと、今までやってきたことをそのまま活かせそうだと思いました。
Q.当時モバイルはメディアとしての認知度が薄かったのではないでしょうか?
メディアという より、ケータイは単純にコンテンツという感覚で、そもそもメディアという意識はなかったですね。
PCサイトにはデジタルコンテンツの有料販売とい う考え方が受け入れられていなかったが、当時ケータイは待ち受け画像なり、ゲームなり、「コンテンツを売る」という考えに立脚していました。それはキャリ ア側が全国民に向けて「携帯のサービスは有料なんですよ」って教育してくれたから可能だったわけですが、とにかくあの時は今まで売ることが出来なかったも のが、ケータイを通じていきなり売れ始めたんです。
そしてその当時(2001年~2002年)、ちょうど着ボイスが現れたわけですが、それに相 当するものはどこにも売られていなかった。
これは結果的に大きなチャンスでした。
Q. PCインターネットとの壁が徐々に薄くなっていく中で、モバイルビジネスの今後の方向性は?
まず、ケータイは圧倒的に画面が小さいと言う前提を考えなければならないと思うんです。これだけはどうにもならないわけです。
これからも通信速 度なり、液晶のスペックなり、CPUの性能なりが限りなく同じになっていく中で、そこに気をとられるのではなくて、小画面といかに付き合っていくか、とい うことは常に念頭におく必要があるでしょう。
例えば、今モバイルでは15秒の動画が限界でも、いずれ2時間の動画が普通に配信できるよう になってしまうでしょう。でも、果たして2時間小さい画面を見続けるか?
より条件が同じになっていけばいくほど、画面の小ささには気を配 らなければならない。
だから、僕はモバイルはPCと同じ方向に行ってしまってはだめだと思うんです。表現力はPCの方がいいに決まってますから。
しかし、逆手に取ると画面が小さいと言うことは、持ち運びができるということです。これらの特性とどううまく付き合っていくのかと言うのがポイントだと思 います。
Q. 10月24日に導入されるMNP(携帯電話番号ポータビリティ)についてお伺いします。結局はあまり変わらないのではと言う論調と、最低でも1割のユー ザーは動くと言う論調がありますが、一体どちらになり、結果としてコンテンツ業界にどのような影響があるでしょうか?
前者(あまり変わ らない)であってほしいですね。それは今までとおりでいい、ということですから楽ですよね。とはいえ、どちらでも対応できるようにしておかなければならない わけです。
これはキャリア公式サイトに限ったことですが、キャリアを変わるということは解約するということです。
それは自分たち のサイトから去っていくわけですが、その代わりに他サイトを解約する人も出てくるということです。
そこで、既存会員にはキャリアを変えてももう一 度登録してくれる仕掛けと、既存非会員には競合サイトを辞めた時にいかに「ウチだといいか」ということをアピールする仕掛けの両方行っていかなければなり ません。しかし、後者に関しては今までやってきたことと同じです。「いろメロミックスはいいですよ」って訴えることですから。
問題は前者、いか に既存会員を囲い込むかですよね。例えば、MNPで番号が変わらないというのであれば、キャリアをまたいでもポイントが引き継がれる、とかそういうことを 考えていかなければいけません。
そこには技術的な問題や、権利的な問題などクリアしなければならないことはたくさんありますが。
つまり、キャリアが変わっても番号が変わらないことを番号ポータビリティと呼ぶように、コンテンツが変わらないコンテンツポータビリティ、これですね。 キャリアが変わってもコンテンツの提供するサービスは変わらない、そういう施策は必要だと思います。
Q.では、MNPや検索エンジンの台頭など市場の変化を受けつつ、モバイルにはどういう新しいビジネスチャンス があるでしょうか?
すでに過当競争と化している中で、モバイルコンテンツだけでビジネスをするのは難しいように思います。出るものが一 とおり出尽くしてしまっていますから。
やはり、これからの視点はモバイルに何をくっつけるかですよね。
例えば、モバイルとSuicaを組み合わせたモバイ ルSuicaのような足し算の発想がいい例です。
ECにしても、モバイルでのショッピングが一般的になりつつある 今、これからもの珍しさで買い物するユーザーは減ってくることが予想できます。モバイルに合った商材をいかにくっつけるかというのが鍵になるのではないで しょうか。
とにかく一言で言うと、モバイルだけを見ていたらダメですよってことです。
モバイルと何をどう組み合わせるのか、ここ にしか商機はないでしょう。
<後編に続く>