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吉見鉄也氏プロフィール
(株)ドワンゴ 執行役員 事業開発部長
(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)田辺エージェンシー、
コナミ株式会社を経て、2002年に (株)ドワンゴ 入社。
現在は主にアライアンス業務を担当。
Q.これまでメディアミックス戦略が御社の大きなビジネス手法だったわけですが、今後はどのように既存メディア と連携していこうとお考えでしょうか?
TV局にはTV局独自のモバイルサイトがあり、出版社には出版社独自のモバイルサイトがあるわけ です。ここが難しいところですよね。つまり、TV局としては、うちはクライアントだけど、TV局のモバイルサイトとはライバルなわけです。その辺の共存を うまくしていかなければいけないってとこですよね。
ただ、今後もTVCMは活用していく予定です。弊社はモバイル業界初の本格的TVス ポットをやったわけですが、それで一発当てることができるか、かなり大きなギャンブルだったと思うんですよね。実際、月額300円のサービスに対してテレ ビCMスポットを打ってどうなるんだ?っていう声はあったようです。でもやっちゃったんですよね。
それがGacktを起用したCMだったわけで すが、その効果は想像をはるかに超えて大きかったです。
やはり、「業界初」ということ、そしてその後も「懲りずに続けた」ということがミソがだっ だと思います。
Q.現在、着メロ、着うたR配信の代名詞的な企業 にまでなりえた御社ですが、黎明期にはどういう苦労がありましたか?
最初の頃は、着ボイスってものが理解されない、そんな苦労がありま した。「携帯から声が出るってどういうこと?リカちゃん電話みたいなもの?」そんな反応なんですよ。
今でこそ、すぐにビジネススキームから始め る話も、当時はそもそも携帯コンテンツへの認識が薄いので、商談を始める時は初めからひとつひとつ丁寧に説明していかなければならなかったり。
それに近い話ですけど、新しいサービスでありコンテンツなので価格、値ごろ感がわからないってこともありました。いくらにしていいかわからないんですよ。 雑誌だったら1冊いくら、映画だったら1本いくらって相場があるんですが、なにしろ出来たばかりなので、それをいくらに設定するのが適正なのか、頭を悩ま せました。
いくらで仕入れて、いくらで売って、ロイヤリティはいくらにしたら、儲けが出るのか?こんな単純なことでも、当時は本当に手探りでし た。
あとは競合と差別化を図るために、「とにかく他社よりいい音にしよう」っていうこだわりがありました。そのために、最初は2チーム制 にして、社内の2つのチームに同じ曲をそれぞれ作らせていました。それで張り合わせて、結果がいい方を採用していたんです。
つまり、倍手間をかけ ていたわけです。
その他の差別化の手段として、着ボイスならば、なるべく旬な人の声を配信できるように、さまざまなマネージメントやエージェ ントに営業をしていましたね。
Q.最後にこれからモバイルで起業を考える方たち に向けて、メッセージをお願いします。
「歴史がないこと」、これを利用しましょう。
先ほどの価格設定の話にしたっ て、元々ある業界と違って自分たちで決められるわけですよ。
つまり、歴史がないのでルールを作れる可能性がまだ残っていると思うんです。
みんなにとって都合のいいルールを作っていきましょう。
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インタビュー後期
今回、モバイルコンテンツプロバイダーの草分け的存在であるドワンゴの執行役員であ る吉見氏にお話を伺ったわけですが、全体的な印象としてモバイル業界全体が確実に開墾期から新たに苗を植える時期に移行していることを実感しました。一つ の産業がそこまで達するスピードとしては驚異的ですが、これからモバイルで新たなビジネスを起こすためには、成功している先駆者がいるということは良くも 悪しくも作用することと思います。
つまり、既存企業は強力な競合であると同時に、道をならし、事例を作ってくれたパイオニアなわけですから、積 極的にその道を利用しない手はありません。
一方で、ドワンゴなど現在大手と呼ばれるモバイルコンテンツプロバイダーの成功の草葉の陰に は、同じようにモバイルに参入したものの散っていった挑戦者も数多く潜んでいるに違いありません。ドワンゴにしても、決して最初に着メロを手がけた企業と いうわけではありません。
では、どうして抜きん出ることができたのでしょうか?
「まだ誰もやっていないことを やった」
「懲りずに続けた」
「倍の手間をかけた」
今回うかがった上記3 つのことが、単純ながら一つの答えであるように思います。
産業構造がいかに複雑化しても、チャンスになることとは案外このような「原点」にある、 と考えさせられました。