Vol.17 成長を遂げたモバイル業界の現状  - 社員にここで働きたいと思わせるポイント –

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
ファーストナビで モバイルについてのコラムを書かせていただくようになってから早いもので約1年が経過しました。今回この1年の総括として、2回に渡って自分自身が感じて きた現在モバイル業界の抱える課題についてまとめてみました。

 この1年を振り返ると、番号ポータビリティの導入、ソフトバンクの新規参入など、業界が右へ左へと揺れるさまざまな事象 がありました。また、ファーストナビで執筆する機会をいただいたおかげで、インタビューという形でたくさんのモバイル業界のトップランナーとお会いして直 接お話を伺う機会にも恵まれました。

 なお、私はこのような形で寄稿させていただいておりますが、他の多くのナビゲーターの皆様のようにす でに起業しているわけではありません。
しかし、それゆえに外からの第三者的な判断ができたり、読者の方々と近い視点で記事を書くことができたので はないかと思います。

 21本目となる今回はこれまでの総括として、私が今までモバイル業界に携わってきた上で得た「気づき」、「問題意 識」などをまとめてみたいと思います。
 

「人材」という問題

  もしも私が「今のモバイル業界においてもっとも大きな問題は何だと思いますか?」という質問を受けたのなら真っ先にこう答えます。
― モバイル業界は人材の入れ替わりが早い。

 モバイル業界は転職のサイクルが非常に速く、肌感覚ではありますが大体2~3 年位が平均的な転職スパンなのではないかと思います。
概してIT業界は人材がストック型ではなく、フロー型の傾向がありますが、モバイル業界はそ の傾向がさらに顕著です。

 実際に私が今から4年前まで勤務していたモバイル関連企業は、就業人口は増加しているもののその当時から残って いる人は数えるほどしかいません。

 もっとも、iモードの発足から8年しか経過していないことを考えると、そもそも10年選手はほぼ存在し えないわけですが。

 しかも実に興味深いことに、モバイルの会社をやめても、結局また別のモバイル会社に転職する人が少なくないのです。

六 本木ヒルズができたばかりの時にはこんな話が流行りました。

同じモバイル企業で働いていたAさん、この度晴れて退職することになり ました。ところが、次の日にヒルズの玄関口でばったり。実は1階下にある別のモバイル企業に転職しただけだったのです。

・・・実 際にあったかどうかはわかりませんが、とにかくこんなことがまことしやかに囁かれる状況があったことは事実です。

 業界風土、と言えばそれ までなのですが、その都度人を入れ替えていては社内にナレッジがストックされませんし、長期的な企業文化が育まれる土壌が醸成されにくくなります。また、 専門性が要求される業種とはいえ、毎回教育に手間をかけてもすぐ転職されては大きな販管費のロスとなります。
では、こうなった原因は何なのか?私 なりに考察してみました。
 

1.PC > モバイル という構図

  モバイルだけでなく、PCも一緒に手がける企業は少なくありません。
 その場合、採用されたクリエイターは最初にモバイルかPCかを選択するわけ ですが、やはりより自由な表現が可能なPCを選択する人が多いようです。
 大雑把な例えで言うと、PCは大きな画用紙、モバイルは小さな巻物とい う違いがあります。

 画用紙に好きな色を使って好きな絵を描くか、制限に気を配りながら巻物をつづるか、その好みは別れるところでしょう が、やはり前者によりクリエイティブ意識を揺さぶられる人が多いようです。

 かくいう自分もかつてはモバイルよりPC志向が強かった1人で すが、制限のある中で最大限の表現をすることが楽しいということも発見しました。
最近ではフラッシュもJava Scriptも使えますし、フルブラウザという新たな可能性もあるので、ぜひ積極的にモバイルでの表現というフィールドに挑戦する人が増えてほしいもので す。

 

2.不明確な将来ビジョン

今 後どのような利益を生み出し、どのような成長が期待できて、どのように社会に貢献できる企業になっていくのか?
― 将来ビジョンは企業自体の魅力であり、これがしっかりと描かれ、かつその実現に向けて短期中期での企業活動を行っている企業は、それだけで人を惹きつけ、 「働きたい」と思わせる大きなモチベーションとなります。

 モバイル業界は急激な速度で成長を遂げてきました。悪く言えば成金的に成長して きたため、地盤作りや将来ビジョンを描くに足る問題意識が醸成されぬうちに今に至ってしまった現状があるのではないかと思います。

 これで は人は集まりにくいし、集まっても条件さえよければすぐに転職を考えてしまう結果を招きます。

 モバイル大手と呼ばれる企業のうちチャンネ ル営業に終始しているところも見受けられますが、大きな節目となっている今こそ、しっかりと将来を見据えた上で、旗振りをするリーディング・カンパニーが 求められているのではないかと思います。

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