Vol.18 成長を遂げたモバイル業界の現状 – 価格破壊編

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

先日、業界内の友人と話をしていた時に非常に驚いたことに、最近の中高生は店頭に並ぶCDをCDと呼ばないのだそうです。では何と呼ぶのでしょう か?

 答えは「マスター」だそうです。

 それは1枚の「マスター」から無数の「コピー」が生まれ、流布されることを暗示して おり、恐らく直接空のCD-Rに焼いたり、データを取り込んでP2Pソフトで交換されたりするということでしょう。

 言うまでもなくこれは 違法行為です。

 思えば自分が中高生の頃もレンタル屋でCDを借りてきては、せっせとテープにダビングしたもので、やっていることは今とさ ほど変わりません。
しかし、デジタルデータでコンテンツがやりとりされる現代とでは増殖力が違います。

これは音楽に限った話ではな く、YouTubeの登場に代表されるように映像コンテンツもしかりです。

 もう言いたいことはお分かりかと思いますが、昨今コンテンツの 価値が暴落し、価格破壊が起こっています。これはモバイルコンテンツ市場においても、まったく同じことです。
 

無料が当たり前

 かつてモバイルコンテンツの花形だった着メロ/着うた(R)サービスは、合法・違法 含め無料で利用できるサイトが次々に林立しています。で引用しましたが、大挑戦者祭にてKLab(株)、真田社長は「ヘビーユーザーは無料サイトに流れる が、エントリーユーザーは有料の公式サイトに留まる」と明言していました。
確かに有料公式サイトを変わらず利用しているユーザーもいますが、予想 をはるかに上回るスピードで無料サイトを利用するユーザーの割合が増加していることは事実です。

 日本レコード協会の行った「違 法な携帯電話向け音楽配信に関するユーザー利用実態調査」によると、違法サイトを利用するユーザーは36%というアン ケート結果が出ており、3人に1人が無料の違法サイトを利用していることになります。さらに12歳から15歳の中学生に至っては65% にのぼり、もはや着うた=タダが常識と化しています。

【詳細データはコチラ】
http://www.riaj.or.jp/release/2007/pr070129.html

  モバイルゲームについても同じことが言えます。

 端末の機能向上とその普及にともない、ユーザーはより高度なゲームを楽しめるようになりま した。

 しかし同時に、ゲームが高度になればなるほど開発コストは上昇し、CSP側の首をしめる一因となっています。さらに追い打 ちをかけるように、巨大無料ゲームサイトが人気を集めており、結果的には価格破壊を推し進める形となっています。

 こういった価格破壊の傾 向はPCインターネットがたどった道のりと非常によく似ています。
 このまま価格破壊が進めば、PCインターネット業界がそうであったようにダイ ナミックな業界再編が起きることは明白です。

 

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伸びるモバイルコマース市 場

 コンテンツ市場がシュリンクする一方で、コマース市場は成長を続けています。
 モバイルコンンテツフォーラムの行った「モ バイルコンテンツ関連の市場規模調査」(2005年)によると、2005年時点ですでにコンテンツ市場3,150億円に対し、コマース市 場4,074億円とコマース市場が上回っています。

【詳細調査結果はこちら(PDF)】
http://www.mcf.to/press/images/2006_MobileContents_market_scale.pdf

  つまりは、モバイル内だけで利用・消化するコンテンツビジネスは減少傾向にあるものの、モバイルを通じてリアルなものを購入するという行 為はユーザーにとって一般化しているということを示しています。そしてそれはモバイルがユーザーの購入導線として認知されてきたことを 示す意味ではよいニュースと言えます。

 従って、すでにインターネットショップを運営しているが、いま一つ結果の見えにくいモバイルには未 参入、という事業者にとっては商材とPRの仕方しだいでまだまだチャンスがあるということです。

 今後両者の開きはさらに顕著なものになって くると思われます。
 

キャリアによる対応は?

 さて、こ のような留まらぬ価格破壊の波は、公式サイト有料課金というキャリアが擁護育成してきた成功モデルが必勝パターンではなくなったことを意味しています。

  現在のキャリアの動きを見ていると、各社とも契約件数の奪取合戦には余念がないようですが、コンテンツ市場の回復に関してはこれといって目立った動きを見 せていません。強いて言うとauが最近EZwebの公式審査の敷居を下げたのか、公式コンテンツの増強を図る「質より量」的な戦略を執っているに留まりま す。

 それどころかドコモのiチャネルや、Y!ボタンからYahoo!ケータイへのワンタッチアクセスに見られるように、キャリア自身が公 式サイトを運営することで、他社公式サイトの商機を摘んでいるようにさえ感じられます。

 今まではたどり着くのが困難な無料一般サイトは コアユーザー向けでした。
 しかし、この現状では公式サイトこそがお金を出しても特定のコンテンツを欲する一部のコアユーザー向けサービスになっ てしまうのではないでしょうか。

 

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求められる法規制

 暴落の一 途をたどるモバイルコンテンツビジネス。連載開始当時に感じたその兆候は今、完全に現実として目の前に置かれています。

 しかし、これは最 初に述べたとおりモバイルに限らずコンテンツを扱うすべての業界に言えることであり、もはや抵抗することのできない時の流れとなっています。

  まず急がれるのは早急なコンテンツ不正流通の防止であり、そのためにはより厳格な法規制が求められます。

 苦労して作ったものが無料で市 場に出回るという現実は、制作サイドからすると耐えがたいことです。
 また、制作者の創作活動を妨げることは文化レベルの衰退にも繋がりかねませ ん。

 「コンテンツはお金を払って買うもの」 ― この健全な考え方が、常識として取り戻されることを願ってやみません。

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