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画期的な商品は、利用者の視点で考えられている
ソニーの 「ウォークマン」。一大旋風を巻き起こした再生専用のポータブルカセットデッキ。ウォークマンが世に出る前は、カセットデッキに録音機能をつけるのは、常 識という風潮がありました。事実、各メーカーは、こぞって録音機能がついたカセットデッキを軽量化することに技術力を駆使していました。ところが、ソニー の「ウォークマン」は、再生専用機でした。発売前、ソニーの内部からも「この商品は売れない」といわれていました。しかし、このウォークマンは、売れに売 れ、ウォークマンという新しい商品カテゴリーを築き上げるまでに成長し、かつてのソニーを代表する商品になりました。
なぜ、ウォークマン は、売れたのでしょうか?それは、”音楽を外で聴きたい”という利用者の視点で考えられた商品だったからです。「録音機能」が絶対に必要だと思い込んでい たのは技術者の方で、多くのユーザーがそれを「どうしても欲しい」と思っていた訳ではありませんでした。人々は、「軽量化したカセットデッキ」が欲しかっ たのではなかったのです。外でお気に入りの曲を聴いて、気分よく歩きたかったのです。「外で音楽を聴く」という用途を徹底してに追及し、それを実現するた めに技術力が駆使されたので、ウォークマンは多くの人に支持されたのです。
このように画期的な商品とは、いつも利用者の視点で考えられて います。この事例からもわかるように、技術者は機能にこだわってしまう帰来があります。時として、顧客の視点ではなく、技術者の思い込みや欲求を満たした いという気持ちで制作されることもあります。もちろん、そんな情熱が必要なときもあります。
しかし、人々が欲していないものに、いくら技 術力を駆使しても売れないし、ユーザーには喜んでももらえません。
独りよがりの 技術は、本当の技術ではない。
技術者の最大の喜びは、「利用者」からの熱烈な支持です。
「この商品は、すごい!」
「こ んな技術は見たことがない!」
「ありがとうごいます。こればあれば、助かる!」
技術者たちは、自分の技術が人のためにな り、人に喜んでもらう時に、自分の技術の存在意義を感じます。もちろん、賛辞だけでなく、その技術に見合った報酬を手にすることも必要でしょう。しかし、 それも「利用者」からの熱烈な支持がないと実現しません。
このように、技術とは、”誰かに評価してもらうこと”が必要なのです。興味深い ことに、”技術”という言葉を辞典で調べると
「科学の研究成果を生かして人間生活に役立たせる方法」( 出典:大辞泉 提供:JapanKnowledge )
という意味があります。つまり、技術は”人の生活に役立てるもの”でないといけ ないのです。決して、自分の満足だけにための、独りよがりの技術であってはいけないのです。
ファンあっての”技術力”
技術者のための「売れるしくみ」。それを実現するために必要なこと は、いくつかありますが、もっとも重要なのは、”熱烈な支持者”、つまり”ファン”なのです。無論、すべてのビジネスにおいていることですが、とりわけ技術 者にとっては、必要不可欠なのです。”技術”はITの発展により、革新的になり、よりデジタル化するかもしれません。しかし、”人”の本質的なところは、 やっぱりアナログなのです。むしろ、デジタル化されているからこそ、”人間らしさ”や”人と人”との繋がりが必要になるのです。
人々に評 価されることで技術者は、さらなる創作意欲を起こし、ファンは、その技術によってより生活を豊かにすることができます。この支えあいの相互関係を構築する ことが、技術者のための「売れるしくみ」の根幹をなすものなのです。
ただ、忘れてならないのは、すべての人を”ファン”にはできないという こと。技術者は、いろんな価値観が存在する中でも、信念を持って、より自分の技術を評価してくれるファンたちと一緒になって、自信の技術を革新させなけれ ばならないのです。