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技術者が陥る”落とし穴”
3度の飯より仕事が好き
ここまで極端でなくても、たいていの技術者の方々は、「趣味=仕事」という方がかなり多いようです。なぜでしょうか? 技術を身に着けるためには、根気強い探求と訓練が必要だからです。それに、一度習得すればそれで一生使えるという技術は案外少なく、技術職を生業とするた めには”弛みない努力”が求められます。ですから、おのずと”仕事が好き”でないと技術者を続けられないのです。では、何が技術者の原動力となるのでしょ うか?
人によりさまざまな理由はあるかと思いますが、大きな理由の一つとして、新たな技術を勉強する時の”ワクワク感”やその技術を身に つけた時の”達成感”が挙げれます。それは、技術者にとって、お金にはかえがたいものがあります。
しかし、そんな技術者の価値観が、ビ ジネス上の”落とし穴”になることがあります。
例えば、技術者が会社を経営する場合、基本的に本業は”好きな仕事”に なります。もし、技術者の視点でビジネスをしてしまうなら、自分が興味のある仕事を優先してしまい、ついつい採算を度外視して時間をかけ 過ぎたり、顧客の期待以上に拘(こだわ)ってみたり、調査のために必要以上の時間をかけてしまうことがあります。
もち ろん、起業直後の駆け出しの頃は、経験・実績づくりということで、そうした仕事もある程度は必要なことですが、それが「仕事のスタイル」に なってしまうと、終わりのない仕事をたくさん抱えることになります。つまり、同時並行する仕事が増えることになるのです。
そうなると、管 理するための時間が新たに必要になりますし、ひとつひとつの仕事に”集中できる時間”が減ってしまいます。おのずと生産性が低くなり、 成果(売り上げ)にも繋がりにくくなります。
技術職という仕事は、クリエイティブ(創造的感覚)性が強く、モチベーションが下がるという ことは、製作物にもかなり影響を及ぼします。さらに、”良い仕事”ができないというジレンマを招き、結果として、ついつい”その場しのぎの仕事”をしてし まう危険性が格段に増してしまいます。
さらに、そうなると資金繰りも難しくなるので、経営的なストレスも増え、最終的には経営者としての モチベーション(やる気)も下がってしまう危険性もあります。
時 間は有限である。
この問題の本質は、次の点にあります。
つまり、技術者の仕事は、ひとつひとつの仕事にクオリティ(品 質)が求められるため、製作時に頭を切り替える必要があります。(場合によっては、製作現場を変える必要がありま す。)ですから、実は技術者が同時に並行できる仕事量には限界があるのです。それを超えて仕事を抱えてしまうと、全体的に仕事の質を低下させ、収益性を悪 化させてしまいます。最悪、信用を落とすことにもなりかねません。
仕事を同時にいくつも抱えてしまうと、新しい仕事にもなかなか着手でき ませんし、既存の仕事の対応に終われ、業務がドンドン複雑になってしまいます。こうした悪循環は、ビジネスとしても、「なんら良い物を生み出せないしく み」になってしまいます。
つまり、”忙しいけど儲からない”という状態に陥ってしまいます。
このような状態を、私は”技術者の貧乏スパイラル”と呼んでいます。
さらに、一人や少人数で起業した 場合、制作(開発)以外の仕事に加え、営業、打合せ、見積書や請求書の伝票作成や法的な手続きや経理業務など、するべきことは実にたくさんあります。
ですから、技術者が売れるしくみを作るためには、自分の仕事の限界を知り、時間のコントロールが非常に重要になってきます。
いくら仕事が 趣味でも、時間はすべての人に平等で1日に24時間しかなく、集中して仕事できる時間が限られているということを、技 術者は肝に銘じておかないといけないのです。
アナログ作業の最適化す る。
では、”技術者の貧乏スパイラル”に陥らないためにどんな対策をたてることができるのでしょうか?
それは、” 業務を最適化し、時間を短縮すること”です。
具体的には、
1. 仕事の流れを”業務”ごとに細分化し、
2. それをさらに”細かなアナログ作業”に分けます。
3. そして、実際の作業をスムーズにする具体策を
から始めます。
こうしておくと、どの作業にどれ だけの時間が必要になるのか?をより具体的に考えることができますし、
それを体系化しておくことで、仕事をする度にカイゼン(改 善)を図ることができるからです。
仮に、仕事を請けてから納品する前には、いくつかの工程に分けてみましょう。
例) 商談⇒ヒアリング⇒見積⇒発注⇒設計⇒製作⇒テスト⇒納品
次に、「ヒアリング」というアナログ業務にさらに分析 し、実際の作業に細分してみましょう。
「準備する」・「質問する」・「筆記する」・「整理する」
このように、”より 具体的なアナログ作業”に分けることできます。
そして、今度は、そのうちの一つの アナログ作業を具体的にイメージしながら、どんな”段取り”がしてあれば、スムーズに作業がすすめられるかを考えてみ てください。
例えば、「質問リスト」。
しかも、見積や設計をする際に、必要な”必須事項”を聞くための質問が書き出して あったらどうでしょうか?
質問リストがあれば質問を円滑に進めるだけでなく、「準備する」という工程を短縮することもできます。
さら に、聞き忘れや聞き漏れといったミスを防ぐこともできます。
もちろん、初めから完璧な質問リストは作れないかもしれませんが、回 数を重ねるたびにカイゼン(改善)することができます。
同じように、一見、最適化が難しいと思える技術作業でも、効率化を図 る点が実はたくさんあります。
こうして、ひとつひとつのアナログ作業を改善しながら、効率化を図るなら、作業時間を短縮するだけでなく、サービ ス品質もあげることができます。
ぜひ、社内の”アナログ業務”を細分化し、ひとつひとつの作業をどのように最適化できるか?上記の方法を 使って考えて試してみてください。
思わぬ効果と収穫があると思います。
段取り8割 仕事2割 アナログ業務の最適化は、収益の最適化でもある。