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経営における【営業】は投資活動
たくさんの仲間で業務を分担 しあって、ひとつの売り上げを完成させる勤務時代と起業した経営者の大きな違いは、「なんでも、一人でやらなきゃいけない」ということ。コトバで理解して も実際に遭遇すると、時間ばかりが過ぎていく現実に途方にくれる。バタバタ深夜まで走り回ると結構充実感は味わえる。「オレってがんばってるじゃん」、な んて錯覚を招くこともある。しかし、心地よい肉体的疲労に酔っていても肝心な売り上げはついてこない。
経営者の【営業】においては、『闇 雲営業禁止』である。闇雲とはなにか？、先行き見通しが立たない状態のことである。この場合の先行きとは遠い未来ではない、今スグの未来のことだ。
例えば、アナタが新規取引先を開拓すべく、企業に対し飛び込み営業をしたとしよう。受付嬢に名刺を渡し「社長は只今出かけております」と、数秒でノックア ウトなんて『闇雲営業』の極致である。さらには、「あのぉパンフレットだけでもお渡しくださぁい」なんて、意図が明確でないムダな経費をバラ撒いているよ うでは絶望的だ。ワタシが株主なら、株主代表訴訟で訴えるかもしれない。経営者の時間は、売り上げを得るための、もっとも有効かつ有限な、貴重な資産だという ことを心得よ。
準備３：外交１
経営者のトップ営業は、『準備 ３、外交１』が原則だ。つまり、外交＝外回り営業に１日出かけるなら3日に相当するエネルギーを投入してあらゆる情報を集め、綿密な対策を練り、意図を明 確にして、もっとも効率よく成果をつかむための準備を徹底して行うべきである。たとえ初対面の相手であったとしても、受付で撃沈せず必ず面談を果たし、成約で きなくとも次回につなげるか、紹介を引き出すシナリオを作成するのだ。
まずは、きっかけだ。相手の会社の製品から最近の話題を調べ挙げ、 アナタと会うことで相手が得られるメリットを探すのだ。口コミ情報やネット、新聞、業界紙などに常に目を配っていれば、その会社のことが掲載されていた り、新鮮なニュースが得られるだろう。とにかく何でもいい、相手との面談シーンをイメージしながら相手の立場に立って、役に立つこと、相手に利益を与えら れることを探すのだ。この場合の利益とは金品ではなく、精神的満足や、情報、アイデアといった無形のものを指す。
イメージしにくいだろう から、実例をひとつ挙げてみよう。ワタシが遭遇したある外資系の生命保険会社の営業担当者の話である。（一部創作）
ある日突然、その営業 担当者は受付に現れた。対応に出た内勤女性に、その社長のインタビューが掲載されている記事部分をキレイにマーカーで囲った業界紙を示しながら、こう話し 始める。「この記事に掲載されているのは貴社の社長さんですね。たいへんにこの記事内容に感銘を受けました。短い時間でも結構です。ひと目だけでもお会い したいのです。恐縮ですが、この記事とワタシの名刺、そしてこのメッセージだけを今、社長さんにお渡しいただけないでしょうか？ここでお待ちしておりま す」
おそらく、この営業担当者は、この会社にかねてより目をつけていて、社長の行動パターンを調べてあり、社用車が玄関に停まっているこ とで社長が社内にいることを確信しての訪問であろう。さらには、内勤社員が口頭で説明しなくとも、社長がひと目で興味を惹く工夫を盛り込んだチラシを手渡 している。これは、伝達の段階で社長の時間を守ろうとする内勤社員の習慣が影響し、面談につながる確率が低下することを防止している。
後 はご縁の問題だ。しかし、すべての可能性を徹底して追求し、魂を込めて作り上げたシナリオにそって、明確な意図を抱いてのトップ営業のシーンでは、高い確 率で道が開けるのだ。このケースでもそうであった。普段なら飛び込み営業など相手にもしない多忙な社長がアポなし初対面の営業マンを社長室に招き入れたの だ。
後はシナリオどおり。いや、社長と顔を合わせた瞬間に営業マンの気合勝ちで「つかみ1秒、あと楽勝！」の法則により、あとは楽勝。わ ずか１時間弱で３00万円ほどの一時払い保険を成約し、現金を持ち帰ったのである。さらには、この社長はライオンズクラブの重鎮であり、とにかく顔が広 かった。それから次々と紹介を引き出して、大きな成果を獲得できたことは語るまでもない。
外資系保険会社の営業マンは、独立開業者であ る。自営業者なので、自ら営業活動経費を使い、自らが開拓する顧客こそが収入源だ。つまり、起業した社長である。自分の判断で行動し、自らの行動の結果は 自分に返る。社長の営業では、有限である自分の時間資源を闇雲に投資すれば、回収は見込めない。誤った投資の結果責任は社長が負うのである。
【ア ドバイス】
とにかく、相手の立場に立って、相手の利益を軸にトップ営業シナリオを作りましょう。相手の習性がわからなければ、同じ種族と 思われる人と知り合いになって詳細に観察するのです。その上で必要な知識を一夜漬けでかまわないのでアタマに叩き込む。社長という立場では、未熟さや浅学 をテレたり、恥じたところで、誰も同情したりかばってはくれないですからねぇ。
