- 目次 -
経営者はスピーチが苦手!?
仕事柄たくさんの経営者にお会いするが、意外なことにほとんどの経営 者が口をそろえて言われるコトバがある。
「いやぁ~、 人前で話をするのが苦手で困っているんです」
2人で向かい合って話しているときは、眼光鋭く、話の脈略を瞬時に読み取り、ズバッと核心に迫る切 れ者経営者が、いざ人前に立つとしどろもどろで文脈無茶苦茶というシーンにたくさん遭遇してきた。
おそらく、自身の職場で社員に対してスピーチす るときにはまったく問題ないのだろう。
たくさんの得意先を前にした舞台や、業界団体の会合で諸先輩がズラズラッと並ぶ舞台に弱いらしい。
ほ んとうによくわかる。ワタシ自身、あらゆるスピーチの場面で撃沈を繰り返してきたからだ。
ワタシの著書「営業は つかみ1秒、あと楽勝!」をお読みになった方なら、うんうんっと頷いていただけるだろう。今では講演を職業とするワタシであるが、小学生のころより筋金入 りの「人前でのアガリ性」であった。人前に立つ、もうそのシーンを思い描いただけで心臓が踊りだす。血圧は一気に上昇し、血流が顔面に集中する。暑くもな いのに、体中の汗腺からは絞ったように汗が噴出する。ノドは乾き、唾液を飲み込もうとしても声帯が固まってしまったようでうまく飲み込めない。 PTSD(post-traumatic stress disorder 心的外傷ストレス障害)というのは、このような症状なのだろうかと納得するほどの、自分自身を自分でまったくコントロール不可能という 異常事態である。
スピーチ営業の5つのポイントとは!?
ここまで酷くはないにしても、多くの読者のみなさんにも似たような経 験があるはずだ。
なぜ人前に出ると緊張してしまうの か?このテーマについては、私自身相当な時間とエネルギーをかけて取り組んだ。書籍を読みあさり自己暗示といわれるさまざまな方法を試しては結果に落胆し 続けた。自立訓練法や催眠療法なども試してみたが、実感できるような即効性は得られなかった。
では、なぜワタシは「極度のアガリ性」を解決でき たのか?
どんな解決法によって、人前で堂々と話しができるようになったのか?
今回は「スピーチ営業」に絞り込んで、5つにまとめてご紹介しよう。
わずかな時間の「営業スピーチ」 ではあるが、明確な目的をもって初対面の見込み客に対し、アナタのメッセージを、コトバと全身で伝えきることができるようになれば、30分、1時間のス ピーチもアナタのものとなることは間違いない。
1.ス ピーチを、自分の利益から相手とのご縁と相手の利益という視点で考える
2.聴衆を事前に調べ上げ理解する
3.失うこと(失敗)を受け いれる
4.自分自身を受けいれる
5.スピーチ原稿を、つかみで始まり笑いで締める内容にし、3分以内で収まるように作成する
エッと思われた方が多いかも知れません。そう、テクニッ ク的なことは何一つないのです。
「スピーチ営業」にお いては、たくさんの正論や美辞麗句をアナウンサーのような整った話し方で並べ立てても、聴衆に伝わる総量が増えるわけではありません。初対面で、聴衆はア ナタのことをよく知らない「スピーチ営業」においては、キレイに整ったスピーチよりも、アナタ自身を飾ることなくそのまま自己開示するほうが相手に伝わる 印象は強くなり、記憶にも深く刻み込まれるのです。
積極性を高める
1と2は同じ準備となります。
「スピーチ営業」においてまず気をつけなければならないことは「聴衆 の風下に立たないこと」です。
相手は集団、アナタは一 人。相手はお客様、アナタはセールス。相手はホーム、アナタはアウェイ。どう考えてもアナタには分が悪い状況、それが「スピーチ営業」における一般的な環 境です。だからこそ自信満ち溢れた堂々としたスピーチを行ったときに得られる評価は、次回面談時に大きな利益をアナタにもたらすのです。
では、風下に立たないためにはどうするのか?これは基本的に個別営業 と同じ準備が必要です。
「売り込む」から「教える」。「いかがですか?」から「それならお任せください」
「よろしくお願いします」か ら「いい買い物なさいましたね」
販売成立の公式 は、【価格<価値】ですね。
そのためには、相 手の立場に立って相手を知ること。さらには、自社の製品やサービスがどのように役立つか(相手にとっての利益)を広角的な視点から検証して、豊富な事例を 吸収することです。
わかっている程度では準備不足で す。このときこそ、相手にとっての利益という観点からのアナタの事業の存在意義を哲学して自己暗示の深さまで追及するのです。
紙に書き出すのもよし、口に出してなんどもつぶやくのもよしです。
適度に気を抜く
さて、せっかく1と2で高めた積極性で すが、3と4では「ヌキ」の作業に入ります。
思い出してみましょう。これまでに何度、気合いを入れて、張り詰めた気持ちで挑んだスピーチで撃沈 したことでしょう。そうなのです、気合いを入れて戦闘モードを装っているアナタそのものが、喪失することを極度に畏れている小心者かもしれません。さらに は周囲に当り散らしてみたり、強い命令口調を自覚したアナタは不安に駆られて怯えているのかもしれません。3と4の準備で目指すところは「自分自身を深く 探求して、相手の評価を脅迫的にまで求めるアナタを自分自身に自己開示する」ことです。この作業は、専門家の知恵を借りることをお奨めします。個人的に は、加藤諦三先生の著書がお奨めです。誰かに直接相談して答えをもらうより、書籍を通じて自分自身で気づきを得るほうが遠回りなようで近道です。
「ぁあ~っ まっしゃぁ~ないかっ」「まぁっ いいかぁっ」なんて 「ヌキ」を感じることで、焦りやイライラが治まっていく感じでしょうか。1と2で徹底的に左脳で追求したあと、3と4で右脳を納得させる感じでしょうか。 心理学的にはうまく説明できませんが、1と2そして、3と4のセットが大事なのです。どちらが欠けても【いとう伸式 アガリ性解決法】は成立しないので す。
これであなたの上がり症も過去のもの
1・2・3・4と進めてきた締めくくりは、やはりシナリオです。
5では、コトバのとおり「スピーチ原 稿を、つかみで始まり笑いで締める内容にし、3分以内で収まるように作成する」シナリオを書き上げます。わずか3分と侮らず、徹底的に作りこみましょう。 一語一句、さらには一挙一動までを「スピーチ営業」がもたらすであろう大きな利益のために考えるのです。
完成したら、「誰かにこんなシーンで話すので、聞き手になりきって チェックして」と宣言してさらにブラッシュアップを続けます。特に「つかみ」のシーン、そして締めの「笑いを呼び込みながらも相手の利益に落とし込む」ク ライマックスをコレでもかと磨き上げるのです。
何度も、何度もリハーサルを繰り返し、さらに1・2・3・4を再確認して演台に上がってくださ い。
3分後には会場が割れんばかりの拍手に包まれることでしょう。そして、アナタの「アガリ性」は過去のものとなるのです。
さあっ!アナタも「スピーチ営業」に挑戦だ!