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全身で、魂で、表現する
インターネットの普及と共に「営業」を取り巻く環境が急速に変化している。売り手と買い手の持つ情報の均衡 化である。
売り手が、買い手よりも早く、大量に、独占 的に情報を握っていた時代の営業と、互いが同じ情報を時間差なく共有する時代の「営業」に求められるものは大きく変化している。
今回は、ある事例を元に「理を説く営業から感で伝える営業」を解説し ます。
関西在住の彼女は、エネルギーを持も余し気味の パワフルな性格。百貨店で5万円ほどする高級エスプレッソマシンを実演販売する仕事をしている。月間20数台を売り上げる、平均的な成績の派遣社員。ワタ シが主催する営業セミナーに参加したご縁で、実際に実演を見せてもらうことにした。
会社が作成した販売マニュアルどおりに、スラスラと実演する彼女。
営業トークはしっかりと頭に叩き込まれており、 スラスラと説明する。伝えたい内容はわかりやすく、商品機能の紹介中心の実演トークだ。しかし一つ気になることがある。
身振りや表情を交えて熱心に語っているわりには、製品の魅力が伝わっ てこないばかりか、彼女の存在が感じられない。
ワタシ は、こうアドバイスする。
『コトバを削りまくって、全 身で、魂で、表現してみよう』
<従来話法>
「このマシ ンは、カートリッジ方式を採用しておりますので操作がこのように簡単で、あと片付けも手間がかかりません。さらには、厳選された生豆を独自のロースト法で 時間をかけ、じっくりと香りとうまみを引き出すことが・・・云々」
<修正トーク>
「ハイっ、よぉっくご覧くださいよぉ~。 ハイッ カチッ ポ ンっ パッ! パタパタぁ~~(余裕の笑み)」
解説すると、このエスプレッソマシンは、一人前ずつにパックされた 濃縮コーヒー原液をマシンにセットするだけで、香り豊かな本格的エスプレッソコーヒーができる優れものである。なので、お伝えしたいのは『簡単操作』『ス グ飲める』『片付け一瞬』『香り豊かな本物』というところ。
修正トーク最後の「パタパタぁ~~(余裕の笑み)」の部分では、煎れたてのコーヒーの濃厚な香りを、彼女が目ヂカラビームと ともに、扇子でお客さんの鼻腔めがけて文字とおりパタパタぁ~~っと仰ぐシナリオに変えてみた。
修正案を模範演技するワタシに、彼女は目を丸くする。
彼女「大丈夫でしょうかぁ・・・」
ワタシ「もっちろんっ 売れまくりですよ」
彼女「た たのしそぉーーーーーっ」(^^)/~
ワタシ「お客さんを一瞬にして、咽ぶような香りで充満するコーヒー焙煎室にお連れする感じやねっ」
結果は、翌月彼女は、イキナリ104台販売した。過去最高記録の樹立である。
感性トークを成功させるには
ただし、この感性トークを成功させるには順序がある。
まず徹底的に「理を説く」営業を反復することが重要である。彼女は、 基本に沿った商品の機能をわかりやすく実演するシナリオを、何度も何度も繰り返すことで完全に自分のものとしていた。さらには、商品にこの上ない愛情を抱 いており、絶対的な自信を持っていたという土台が存在するのである。
形を真似して、商品に、自分の仕事に、なんの軸も定まらないまま感性を発信しようとしてもうまくいかない。
コトバという再現性の高いツールから、表情、ボディランゲージ、気 配、目ヂカラといった感性に訴える表現方法に置き換える場合には、情報も、知識も、思いも、情熱も、すべてにおいて磨きをかける必要があるのである。