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「思い込み」への視点を変える
思い込みにも二とおりの種類があります。ひとつは、自己防衛と自己肯定を柱にした「できない理由系」。もうひとつは、強烈な願望と喪失の恐 怖が生み出した根拠のない自信と楽観的妄想からなる「とにかくできる系」です。共通することは、どちらもほぼ思考停止状態であるということです。
例えば、「うちの商品の市場が飽和状態なのです。さらに業界の景況感は曇りどころか土砂降り状態です」という悲観的な展望を嘆く経営者がいたとします。
確かに、その業界の伸長率や今後の展望、業界を取り巻く悲観的な環境変化など、さまざまなデータを聞いていると、「市場が飽和状態で土砂降りの景況感」と いう観察に誰もが共感を覚えそうになります。
しかし、視点を変えて見ると、その会社の業界での占有シェアは数%にも満たない状況であ り、土砂降りどころか小雨パラパラ降り以下と見ることも可能です。この手の視点変換は、コップに入った水の量が「もう半分しかない」と「まだ半分も残って いる」という対極的なたとえ話が有名です。でも、深くしっかりとはまりこんでいる自分の視点をあっさり対極に移動させるなんて、なかなかハードルが高い問 題です。それでは、そんなときの発想転換法をひとつアドバイスしましょう。
感覚ではなく数値に置き換える
例えば、アナタが何らかの結論的な考えにはまり込んでい るとしましょう。まずは、その考えの原因を、その考えを構成するパーツごとに分析します。その考え方が「思い込み」に偏っていないかどうかを数値に置き換 えて観察してみるのです。感覚だけで判断するのではなく、つねに明確な数値で表して観察する習慣をつけます。例えば、毎日のビジネス会話にも当てはめるこ とができます。
「○○さんの件はどうなった?」
感覚コトバ
「はい。A社ほぼOKの意志をもらっています。近々、契約の予定です」
数値置き換えコトバ
「はい。A社担当者レベルでは100%、A社担当者の予測する決済責任者レベルの承認確率は90%です。10%の不安要素はライバルB社が採算度外 視で再見積もりを提出してくる可能性があるためです。これからの予定は、○日の午前○時に電話して確認し、○日に契約締結の予定となっています」
このように、普段の会話から「だいたい」「ほぼ」「くらい」「かなり」「もうスグ」「ごろ」「あたり」なんて曖昧な表現を一掃することによっても「思い込 み」の発生源を絶つことが可能です。
観察眼の磨き方
とにかく、人間は目に映ったコトに惑わされやすい性質があります。あるいは、自分が信じたいと意識下で願っているコトに自分では気づかぬ まま反応する傾向があります。営業報告でも「そうあってほしい」という願望に合致するよう無意識にコトバで装飾したり、自分にとって都合のよい納得をした りすることがあります。
つねに、数値に置き換えて検証する。
つねに、複眼的な観察を行なう。
つねに、俯瞰する習慣を持つ。
思考停止を防ぐコツは、「思い込み」を見抜く観察眼を身につけることです。