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商標における事例
みなさんは街中でこんな光景を見たことがあるでしょうか。
(Jirat Teparaksa / Shutterstock.com)
日本人のミドル層くらいまでならほとんどの方が知っているであろう「マリオカート」通称“マリカー”にそっくりの車です。外国人観光客に人気があり、彼らが公道を集団で走る光景をこれまでに私は何度も目撃しました。
トラックなどの大型車どころか、軽自動車と衝突してもとんでもない事故になりそうな車ですね。
すでにご存じな方も多いかもしれませんが、実はこの車、任天堂株式会社(以下「任天堂」という)<京都府京都市南区>とはまったく関係がありません。これは株式会社マリカー(以下「マリカー社」という)<東京都品川区>が独自で提供するレンタルカートと、任天堂のキャラクターである「マリオ」や「ルイージ」によく似たコスチュームのレンタルサービスです。
2016年に、このサービスにおけるいくつかの“権利”をめぐって、任天堂がマリカー社を訴えるという形で訴訟に発展しました。
“商標権”と“著作権”
任天堂がマリカー社を提訴するに至った理由はいくつかありますが、そのうちの一つに“商標権”があります。任天堂は、自分たちが付けたネーミング「マリオカート」の権利を守るよう商標登録しましたが、「マリオカート」は巷で“マリカー”という略称で親しまれました。
そこで、レンタルカート・コスチュームのサービスを開始したのがマリカー社です。マリカー社は自分たちの事業を「マリカー」と称して、商標登録をしました。この特許庁の判断に対して、任天堂は異議を申し立てましたが認められませんでした。つまり、「マリカー」の商標登録は有効であり、マリカー社は事業に「マリカー」を自由に使用することができるのです。
任天堂は、商標権に守られたマリカー社の事業をやめさせるべく、著作権侵害と不正競争防止法違反で提訴しました。任天堂の主張は、任天堂のブランドによる信用力や集客力によって、マリカー社の利用者が「マリオカート」とマリカー社のレンタルカートサービスとを混同してしまうとのことです。
もう一つの問題は、“著作権”です。“著作権”は、作品が生まれた時点で権利が発生するため、“商標権”のような登録制度はありません。今回のケースでいうと、「マリオ」や「ルイージ」を彷彿させるマリカー社のコスチュームが、任天堂の著作物そのままの複製であり、著作権の侵害にあたるかどうかを問われていました。
“知的財産権”ってなに?
ところで、「弁理士」って職業はご存じでしょうか。日本の「士業」と呼ばれる職業の中では比較的希少な存在かもしれません。また、中には「弁理士」がどのような仕事をするのかわからない方もいると思います。
今の世の中にはさまざまな商品・サービスが存在しますが、これらは盗用や模倣を防ぐために“権利”によって守られているモノがいくつもあります。
例えば代表的なもので言うと、自ら又は企業のアイデアや技術に特許性がある場合には“特許権“によって守られます。今回のケースのように、自社の商品やサービスに付けた “名前”・“図形(ロゴ)”・“色彩”などを保護する場合には“商標権”、キャラクターなどを保護する“著作権”などがあります。これらの権利はまとめて“知的財産権”と呼ばれ、「弁理士」の仕事はこの“知的財産権“の権利取得、鑑定、ライセンス契約などを幅広い範囲でサポートすることです。
近年トラブルが多発!
今回のようなトラブルの事例はいくつもあります。世間一般的に広く認知され、注目を集めているのは、やはり“商標権”によるトラブルです。商標は主にネーミングに纏わるものなので、知らずにうっかり使ってしまったなんてこともあります。また、これから起業する方は会社の名前や、商品・サービス名にも注意です。他社の登録商標に類似しているだけでも侵害行為とみなされ、後々損害賠償請求が発生したりなんてケースも多くありますので、事前に調べておく必要があります。
当社が提供する“AIを活用した商標登録”
独自開発のAI技術を使ったオンライン商標サービス「Cotobox」、昨年11月からベータ版を公開しています。
思いついたネーミングを、検索画面で検索することで簡単に同じ又は似ている登録商標が存在しているかをチェックすることができます。また、わかりにくい商品やサービスの区分も、自分の商品・サービス内容を入力するだけで簡単に検索することができます。特許庁手続きは提携弁理士に依頼するだけで、依頼後の情報交換はすべてCotoboxプラットフォーム上に記録され、いつでも確認することができます。徹底した定型業務の自動化により、リーズナブルかつシンプルな料金体系を実現。ぜひ、お試しください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 五味 和泰氏
(cotobox株式会社 代表取締役/はつな知財事務所 代表)
早稲田大学理工学部卒。南カリフォルニア大ロースクール卒。
弁理士。自らベンチャー企業を立ち上げ、オンライン商標サービスを提供。今まで知的財産権に縁がなかった中小企業・小規模事業者に対して知財サービスへのアクセスの容易化を目指している。