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事故対応能力テスト
一つ、テストをしてみましょう。
あなたは、ラーメン屋の店員さんです。お客様のところへできたてのラーメンを持っていったところ、つまずいて転び、持っていたラーメンを器ごとお客様にぶっかけてしまいました。
さて、あなたの頭に最初に浮かんだものは?
本能を否定してはいけない
人間も生き物である以上、突然の事態に遭遇すると、自分の身を守ろうとする防衛本能が働きます。このテストでも、自分がラーメン屋の店員であることを強くイメージできた方なら、最初は「ヤバい!」と思ったはずです。
なにが「ヤバい」のか?それは、自分の立場が「ヤバい」のです。
「お客様に殴られるんじゃないか」「クビになるんじゃないか」という、不安が頭をよぎるのが普通なのです。
もちろん、「適切な事故対応」という観点から見れば、「自分を守ろう」というのは×です。
しかし、この反応が「普通」であることを経営者であるあなたが否定してしまうと、従業員はますます不適切な行動(過剰反応・隠蔽など)へ走ることになります。
従業員に対しては、「事故があったときにはとにかく適切な対応をしろ」というだけではなく、「事故を起こしたときは誰でも怖くなるし、その場から逃げたくなる。私だって怖い。しかし、私たちが最初にとる行動は、『お客様の身の安全を確保』することだ。そのことを頭に叩き込んでおき、確実に実行しよう」と指導することで、事故対応の品質は高まります。
事故対応能力テスト 第2問
さて、さきほどのテストの続きです。
ラーメンをぶっかけてしまったあと、あなたが最初にお客様にかける言葉は?
正解は、「お客様、申し訳ございません!おケガは、やけどなどはございませんか!?」です。
そして、器とラーメンを一刻も早くお客様から取り除くことです。おしぼりを取りに行っている暇はありません。手で、袖で、早急に取り除かなければ、破片や熱でお客様の身体への被害が拡大する可能性があるのです。
緊急事態においては、誰でも動揺します。
決められた行動基準や事故対応マニュアルがあっても、そのときに内容が頭に浮かばなければ、ただ呆然とたたずむことにもなりかねません。しかし、このように「最初にやること」を決めて確実に実行できるようにしておけば、その行動をとっているうちに、徐々に冷静さを取り戻すことが可能なのです。
次回は、これらの事態を収拾するまでについて、お話しいたします。