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「どうしてくれるんだ!」に応える
あなたがラーメン店の店員で、お客様にラーメンをぶちまけた場面を想像してみてください。
お客様の服はラーメンのスープでぐっしょり濡れてしまいました。あなたはおしぼりで懸命に服をふき、スープを取り除こうとしますが、においもシミも簡単に取れそうにはありません。
お客様は顔を真っ赤にして「これから、大事な商談があるのに、どうしてくれるんだ!」と怒っています。さて、あなたが次にとるべき行動は?
お客様の「事業継続」を確保せよ!
ラーメンの香りをただよわせ、シミの広がったスーツのままでは、商談にも支障がでるはず。この次にあなたがとるべき行動は、「代わりのスーツを直ちに調達する」ことです。
そのためには、お客様のサイズを確認し、スーツの販売店で代わりのスーツを購入し、お客様にお渡ししなければなりません。また、最寄りのスーツ販売店がどこにあるか把握しておく必要もあります。
「そんなことして、法外な値段のスーツを買わされたらどうするんだ!」「だれがその金を払うんだ!」という心配もあるでしょう。
しかし、この段階で最優先すべきは「お客様の事業継続性の確保」なのです。
この後のお客様の仕事の予定が狂うことで生じる経済的損失は、スーツ代の比ではない可能性が高いのです。
緊急対応ルールは事前にきめておく
もちろん、店員の判断でそこまでの対応を迅速におこなうのは困難です。そこで必要となるのは、事態を予測した上で、その事態に対応できるだけの準備をしておくことです。
具体的には、「お客様の身体および事業継続に影響を与える事態が発生したときには、一定の金額までの支出判断を現場にまかせる」というルールをつくっておくことです。
例えば、「最大5万円までは現場の判断にまかせるので、必要なときは、レジの中に入れてある『緊急対応資金』と書かれた封筒の中身を使うこと」と決めておくことで、すばやい対応を可能にするわけです。
今回の例では、お客様から「次の予定があるのに困る」という申し出があったわけですが、そういった申し出がない場合でも、お店の側から「このあとのご予定は?」という問いかけは必要でしょう。
多くの方は、服の弁償やクリーニング代のことが頭に浮かぶと思いますが、それは次回お話しする「復旧対応」で取り上げるべきテーマになります。
緊急対応で求められるのは、第一に生命・身体・健康の危機を回避すること、第二に事業継続性の確保です。賠償金の支払いや保険金の請求は、そのあとの話なのです。