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そのスーツ、おいくら?
(前回のつづき)お客様にラーメンをぶちまけてしまったあなたは、お客様にやけどやケガがないことを確認したあと、代わりのスーツをすぐに手配して、なんとか商談にも間に合うよう、送り出す事ができました。
お客様が置いていかれたスープまみれのスーツは、当然きれいにしてお客様へお返ししなくてはなりません。あなたは早速クリーニング店にスーツを持ち込みましたが、その結果は落胆すべきものでした。しみが、完全にはとれなかったのです。
こうなると、スーツは弁償しなければなりません。では、その金額はどのようにして決めるのでしょうか?
ポイントは2点、「いつ」「いくら」で買ったものか、ということです。賠償額は、被害物の「時価」が基準となるため、この2点を確認する必要があるのです。服の場合は、通常2年で償却するため、1年前に5万円で購入したスーツであれば、購入額のおよそ半分、2万5000円前後が賠償額となるのが一般的です。
損害保険会社との連携
ここまで読まれたあなたは、事故が起きたら真っ先に保険会社へ連絡する、ということはしないでしょう。しかし、経営者のなかには保険会社や保険代理店に電話をして、「どうすればいいの?」と救いを求める方が多いのも事実です。
そして、被害を受けたお客様からの申し出に対して、「保険会社の判断を待ってから・・・」ということを言ってしまう方もおられます。
もしあなたが被害者の立場だったら、このような対応をどのように感じるでしょうか。
お客様は、あなたの誠意ある対応を求めるのであって、「払えばいいんだろ」という態度には、逆に反発を強めてしまいます。
保険会社や保険代理店との連携については、次のようなプロセスを押さえておくことをお勧めします。
1. 自社で洗い出したリスクと保険会社からみたリスクを突合せ、それらの想定リスクに対する緊急対応ルールを決める。
2. 緊急対応時に予想される支出に対する、保険カバー可能範囲を押さえておく。
3. 事故発生時は、緊急対応後に保険会社に第一報を入れ、損害状況などを知らせておく。
4. 保険会社から提示された支払額を参考に、賠償額を決定し、提示する。
そのプロセスの中で、保険会社(代理店)との綿密な打ち合わせは必要ですが、あくまで表にたつのは経営者です。そこから逃げ出すと、事態は収拾どころか、深刻化することすらあります。
何をもって「事態収拾」とするか
事態収拾とは、お客様から示談書を取り付けた時点で完了するのではなく、再発防止策の提示も含め、自社の姿勢やその後の取組内容にお客様が「納得」された時点とするのが、健全な考え方です。「あの会社にはえらい目にあったが、そのあとの対応はさすがだった」という評価を受けるような事故対応のできる組織作りを目指していただきたいと思います。