Vol.12 「シエスパ」の事故にみる「安全管理」の限界

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

「ガス」は本当に認識していなかったのか

 

 

 東京都渋谷区で発生した温泉施設「シエスパ」の爆発事故は、3名の女性従業員が亡くなる惨事となってしまいました。

爆発の原因とみられている天然ガスの管理については、運営会社、管理委託会社、再委託会社らの間で責任のなすりあいともとれる発言が繰り返されており、連日の報道をご覧になって憤りを感じられた方も多いと思います。

 報道によると、「シエスパ」にはガス検知器が設置されておらず、管理会社の点検項目にも「ガス検知」が含まれていなかったなど、同施設では一見、ガス爆発の危険が認識されていなかったかのようにみえますが、六本木にある同じユニマット系列の温泉施設では開業当初からガス検知器が設置されていたことが明らかになっています。

 また、東京を含む南関東地域の地下にはわが国最大の水溶性天然ガス田があり、東京の地下から温泉を汲み上げる時に天然ガスが発生することは業界では「常識」とされていたという情報もあることから、今回のガス爆発が同施設にとって「予想外の事故」であったとは考えにくいでしょう。

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認識されないリスクには対処できない

 リスクマネジメントを実行するプロセスにおいて、もっとも重要なプロセスといえる「リスク発見」。
リスク発見とは、企業経営に関わる「すべてのリスク」を抽出する作業であり、この段階においては「隕石が施設を直撃する」といった、ほとんどありえないと思えるリスクに対しても制限をかけずに抽出するのが原則です。ただ、こうした「ほとんどありえない」リスクはそのあとのプロセスにおいて、具体的な対策が取られることはありません。
 しかし、今回の施設にとって「ガス爆発」というリスクは、決して想定不可能なものではなく、しかも「ほとんどありえない」とはとてもいえないものです。
 もし、運営会社において「リスク発見」作業がおこなわれていれば、必ず抽出されたはずのリスクであり、しかも対策の優先順位は高かったはずです。
 リスクマネジメントの成否は、最初のプロセスである「リスク発見」の精度に左右されます。シエスパにおいて、管理会社への委託という「形式だけの安全管理」ではなく、本来のリスクマネジメントが実践されていれば、管理会社への委託内容にガス対策が含まれない、という状況にはならなかったはずです。
 亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。

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