Vol.1「特許で営業拡大。100近い知的財産権を所有する中小建築会社の事例」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

競合他社に対する差別化部分をどのようにPRしますか?

 競合他社とはココが違う、というウリのある商品は一刻も早く取引先に伝えて、競合他社に付け入る隙を与えないようにしたいものです。

でも、もし取引先があなたのアイデアを、自分たちが独自に生み出したかのごとく盗んでしまったらどうしますか?

そんな心配のいらない信頼できる取引先ばかりであればいいのですが、世の中には他人のアイデアを平気で盗むようなに人達も少なくありません。とくに新規の営業先であれば、このような懸念は重大なリスクとして認識しておくべきです。

そこで、差別化技術を開発した際の外部への情報漏えい対策の一つとして、発明アイデアやデザインといった知的財産については、特許出願や意匠登録出願をしておくべきです。これによって、例え情報が漏えいしても、権利化できれば相手方の実施を差し止めできたり、逆に相手方に権利を取得されたりすることもなく、自社の大切な財産を守ることにつながります。

しかし、経営者の中には「知的財産権なんてウチには縁のない話し…」と思われる方も多いかもしれません。

論より証拠。知的財産権を戦略的に活用している中小建築会社の事例を紹介しましょう。

100近い知的財産権を所有する社員数70名の建築会社をご存じですか。

 社員数70名程度の中小建築会社で、100近い知的財産権を持っている会社があります。もちろん、知的財産権を取得しただけではありません。しっかりと営業にも役立てています。

株式会社テスク(http://www.tsc-jp.com/)は、1993年に北海道で設立された建設会社で、賃貸マンションの施工を中心に事業を展開しています。この会社のホームページには、42もの特許権、6の実用新案権、13もの意匠権の一覧が掲載されています。さらに他社と共同で取得した特許権を含めると、89もの特許権を現在取得しています。社員約70名、設立して20年ほどの会社としては、かなりの知的財産権の取得数です。

 知的財産権を利用した技術集団の営業方法

特許権や意匠権といった知的財産権を取得することができたら、その権利を使った商品は、自社オリジナルの商品であることが証明されたようなものなので、営業の際に自社製品のPRにも使えます。

テスク社の事例でいえば、賃貸マンション施工にあたっては、施主や建築事務所に対して、事前にどのような工法で建てるのか、その工法にはどのような効果があるのか等の技術的な説明責任が発生します。そのため、新しい工法を開発してそれを用いる場合、最新技術であってもお客様に秘密にしておけば工事ができなくなるので、どうしても事前に開示する必要があります。

そこで、テスク社では、自分たちの技術を不本意な模倣等から守るため、技術は特許等で、デザインは意匠権で積極的に保護することにしています。

そして、特許権を取得した後は、自社の工法が他社と差別化した工法であることをセールストークにして、営業に役立てています。そのおかげで多くの同業の建設業者から「御社の特許工法を使って差別化受注をしたい。」という要望が寄せられたそうです。

このような要望が寄せられたとき、特許権を取得していることによって、次のどちらかを選択することができます。

(1)    自分たち独自の差別化技術なので、他社にライセンスするなんてもってのほか。自分たちで独占する。
(2)    独自技術ではあるけど、地球にやさしい技術なので、できるだけ多くのマンションに採用してほしい。みんなに広めて使ってもらうことで営業にも役立つかもしれない。

あなたがこの会社の経営者でしたら、どちらを選択しますか?

ライセンスによるマーケット拡大営業のメリット・デメリット

(1)は、他社を排除して特許発明を独占するやり方です。技術を独占するので、自社以外は特許発明を実施することはできません。これはとてつもないメリットです。
 一方、アップル社とサムスン社とが、スマートフォンやタブレット端末の特許権侵害について世界中で係争していることをご存じの方も多いと思います。ニュースでもたびたび取り上げられていますが、これは技術独占の戦略をとったことに起因します。技術を独占するということは、その独占を許したくない他社から激しい攻撃にさらされるリスクがあるという事です。特許権の係争にかかる諸費用も相当な金額になるでしょう。

一方、(2)は、ライセンス等を行い、自社以外にも特許発明の実施を許諾するやり方です。海外ブランドが日本の業者と組んで商品展開する場合の手法です(逆もあり)。マーケットを広げたいけれども、自社だけの実施ではマーケットの広がりが望めないような場合には、この路線になります。独占することで得られる利益は少なくなりますが、上記のアップル社とサムスン社のような係争にはなりませんし、自社では手が出ない海外マーケットからもライセンスフィーなどで収益が期待できます。

テスク社は後者を選択しました。

そこで、この特許工法を普及させるため、業務提携する企業を募集して建設ノウハウを提供するパートナー契約を締結しました。その後、同業者からも成功事例が出てきます。
成功事例も自社のホームページで紹介することによって、さらなる顧客や潜在パートナーを呼び込むことにもつながっています。

テスク社は、集まったパートナー企業に対しては、特許技術のライセンスおよび建設資材の販売を行うほか、マニュアルの配布や研修会の開催等で技術的なサポートをしています。また、コンサルティングにより、パートナー企業の受注機会への貢献もしています。

このように、マーケットの拡大や自社技術のPRに特許権等を上手に活用されていることからも、規模の小さい会社でも十分に知的財産権を経営戦略に組み込むことは可能です。御社の持つ技術やアイデアが活用されずに眠ってませんか? もしそうであれば、ぜひ、知的財産権の戦略をご検討ください。

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