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○特許権を取得すると、本当に自社事業の利益を最大化できるのだろうか?
グローバル時代の現代では、どんな企業も圧倒的に優位な地位を維持し続けることが難しくなりました。
そんな時代にあっても、企業を存続させるためには、事業を安定的に維持・拡大させる必要があります。
他社に対して少しでも優位性を確保できる要素を持ち続けていくことが重要になる中、特許権のように法的に認められた独占排他権は、事業を有利に進めるためのツールとして重要な役割を果たします。
例えば、現在世界中で繰り広げられている米国Apple社と韓国SAMSUNG電子社とのスマホやタブレット端末を巡る特許紛争は、この独占排他権を巡る戦いです。
特許権侵害が認められれば、その製品を製造して販売することが禁止されてしまいます。 つまり、特許権者は、他社製品を排除して独占的な優位性を築くことになります。
このように特許権を取得し活用することによって競合他社製品を排除することができれば、自社事業の収益を高めることができるようになります。
○中小企業や個人事業主が特許権を取得する意義とは?
このような特許権の効力は、その持ち主が大企業であっても個人であっても変わりません。
通常、個人や中小企業が大企業と取引しようと思ってもなかなか難しいことも多いです。でも、特許権を取得し活用することにより、個人や中小企業であっても、大企業と互角に取引できたり渡り合えることができたりします。
例えば、イーパーセル株式会社は、企業向けの大容量データ配信サービス「e・パーセル電子宅配便」を展開している会社です。
このサービスに使われている技術は、現在の通信・ネットワークサービスに欠かせない技術だそうです。イーパーセル社は、この技術に関して特許権を取得しており、米国グーグル社やカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)社といった世界的な企業に特許訴訟を提起し、和解によるライセンス契約を締結しています。 (http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD090EE_Z00C12A8000000/) このような戦いに勝つことで知名度の向上や事業拡大を図ることができます。
また、取得した特許権によって企業を大きくした例も多くみられます。例えば、LEDで有名な日亜化学工業株式会社は、青色発光ダイオード関連の特許権を取得することで市場での地位を高めることに成功しました。
○中小企業や個人事業主が自社製品の市場を拡大するための特許活用方法とは?
中小企業や個人事業主が特許権を取得して関連製品を製造・販売する場合、その特許権がすでに存在する市場に関連するものであれば、製品に反映したときに収益に結び付きやすいかもしれませんが、利益の大きさといった観点からは多くは望めない場合もあります。
一方、既存の市場がない場合には、売れれば収益も大きいものの、一から市場形成に取り組む必要があります。
そのためには量産したり販売したり、といった体制や仕組みを構築しなければならないのですが、中小企業や個人事業主では、そこまでの体力はありません。
市場が小さいままでは、せっかく特許権を取得して市場を独占することができても開発費用を回収するまでにも膨大な時間がかかってしまい、宝の持ち腐れになってしまいます。
そこで、市場を大きくするための一つの方法として、市場におけるプレーヤーを増やすという方法があります。
魅力ある技術・製品であれば、参入を望む企業も出てきます。そのような企業を市場に引き込むために、特許権を使用します。
この場合の使い方は、独占排他的な活用ではなく、ライセンス契約により実施を許諾する、という使い方になります。
今までのコラムでもいくつか紹介いたしましたが、ライセンス契約により仲間を増やすことによって市場を大きくしていき、自社のみで小さい市場を独占するよりも大きな収益を確保するという使い方です。
○似たような特許製品を出しても文句を言わせない方法とは?
ところで、実施を許諾された側であるライセンシーとして、特許権者の言うことを聞き続けるというのもおもしろくない、ということもあります。できれば契約当初から対等な関係を構築したいものです。
そんなときには、自分も関連する技術で特許権を取得するという方法もあります。
すでに特許権を取得された分野であっても、新しい要素や工夫の跡が見られれば、別の特許権を取得することができます。
そして、その発明内容がその製品が発展していく方向に合致していた場合には、今度は後から取得した特許発明がメジャーになります。
そうなると、もともと特許権を取得していた会社もその特許権の内容を実施したい、と思うようになってきます。
でも、互いに特許権を取得しているので、そのままでは双方とも新しい特許発明に関する実施をすることができない状態になります。
そんなときは、互いに相手方の特許権の実施を許諾する契約を締結して、両者が新しい特許権に関する製品を市場に出すことができるようにすることがあります。
これはクロスライセンスと呼ばれるライセンス契約の一種です。
後発特許権のほうが価値あり、となれば、逆にライセンス料をもともとの特許権者からもらうことができるかもしれません。
このように、避けがたい基本特許がある場合には、技術のトレンドを把握した上で新たな特許権を取得して、相手方と対等に取引できるようにすることも可能になります。
特にエレクトロニクス製品の場合、一つの製品に何百という特許発明が関連してきますので、似たような製品であれば、競合他社の特許権にからんでしまうことが多くなります。
それでは困るので、このようなクロスライセンス契約をして自社製品を製造販売する場合が多くなってきます。
特許権があれば、市場に参入するプレーヤーを減らしたり増やしたりすることができるようになります。自社の場合にどのようにしたらいいのか、検討してみてはいかがでしょうか。