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模倣されやすいデザインを模倣から保護する手段とは?
米国Apple社には新製品を心待ちにしているたくさんのファンがいます。
なぜ、彼らはApple社の製品をこよなく愛しているのでしょうか。
Apple社が提供する製品はその斬新な機能だけでなく、デザインでも多くの人々を魅了しているからです。
Apple社の製品に限らず、一般の人にとってもすばらしいデザインの製品には購買意欲がそそられます。
モノがあふれる現在では、機能よりもデザインでお客様の心を掴む商品が多くなってきています。同じような機能の商品であれば、デザインのいいほうが売れます。デザインがよければ、多少値段が高くても売れます。
デザインの良し悪しが売上げに直結します。
でも、デザインは見てすぐわかるものです。また、模倣するのも容易です。売れているデザインがあれば、そのデザインを模倣してしまえば簡単に売上を上げることができてしまいます。
ブランド品の模倣品がそうですね。そのため、見た目が同じ模倣品が出回るようになってしまいます。
このような模倣から大切なデザインを保護するツールが意匠権です。
特許権は発明という自然法則を利用した技術的思想の創作を保護するための権利です。
そのため、発明は一見してすぐにはその内容がわからないものがどうしても多くなります。見てもすぐにわからない、ということは、模倣もされにくい、という一面もありますが、逆に、模倣されても侵害発見が難しい側面もあります。
一方、意匠権の保護対象は物品の形態です。つまり、そのデザインが、意匠権を侵害するのかしないのかは、見た目でわかります。
そのため、権利侵害の有無の発見は、意匠権のほうが特許権よりも容易になります。
部分に特徴があるものでも保護が可能
意匠権の保護対象は物品の形態です。形態に新しさや創作性があれば、権利化することができます。
でも、商品全体に特徴がなければ意匠権が取得できないのか、というとそんなことはありません。
例えばカメラのグリップ部分に特徴があり、それ以外のところは他のカメラとあまり変わらないようなデザインの場合、カメラ全体では意匠権を取得することができない場合であっても、グリップ部分のみを意匠権の保護対象とすることができます。
こうすることにより、カメラ全体としてみれば互いに異なるデザインであっても、特徴となるグリップ部分のデザインが共通しているということで、グリップ部分が模倣された場合には、意匠権を行使することができます。
その物品の一部のみの形態に特徴があるようなものであっても、その一部分だけでも保護したい、という要求にもこたえることができます。
意匠権でどこまで保護できる?
では、登録意匠の形態から少しでも異なってしまえば、意匠権の保護範囲から外れてしまうのでしょうか。
もしそんなことになれば、少しでもデザインが異なったものに対して、すべてにいちいち意匠権を取得しなければならず、大変なことになってしまいます。
そんな必要がないように、意匠権の権利範囲には、同一の形態だけでなく類似の形態も含まれるようになっています。
なので、意匠権を一つ取得できれば、その周辺の類似した形態までその意匠権の保護範囲に含めることができます。
でも、「類似」といっても、その範囲はどこまでなのか、ということが問題になります。
人によって類似だと思っていなくても類似とされたり、逆に類似でないと思っていても類似とされたりするのは困ってしまいます。
そこで、最初から類似範囲を特定するために、関連する意匠を一緒に意匠登録してしまうことができる制度があります。
そうすれば、関連する意匠権に囲まれた類似範囲の形態は、何れかの意匠権の保護範囲に含まれることになります。
バリエーションのデザインやシリーズ化されたデザインは、特徴部分が共通する場合も多いので、このような方法でまとめて保護することができます。
意匠権での保護とデザインの公表タイミングとをうまくコントロールするには?
意匠権を取得するためには、意匠登録出願をした後、特許庁で登録要件が審査される、というステップを必要とします。そのため、意匠権を取得するまでには時間がかかってしまいます。
一方、意匠権も特許権と同様に登録された内容は公開されます。
公開は意匠権を取得した後なので、公開された形態が模倣された場合には意匠権を行使することができます。
でも、モデルチェンジはまだ先なのに、新モデルが意匠公報に先に掲載されてしまっては、デザインを意匠権で保護できてもビジネスには活かせないという本末転倒な事態になってしまいます。
できれば、製品としてデザインが公開されるタイミングと、意匠権を取得するタイミングとを合わせたいものです。
ただ、特許庁での審査期間は一定ではないので、いつ、登録されるかはわかりません。そこで、あらかじめ意匠権を取得した後でも一定期間、その意匠の公開を控えることができるようにしておく制度があります。
この制度を利用すれば、意匠権を取得した後でもそのデザインを秘匿することができます。つまり、意匠権を取得した後、その形態が公開されるタイミングをもっと後にずらすことができます。
このように、意匠制度は模倣されやすいデザインを保護する制度として、特許制度とは違った制度内容になっており、使い方によってとても頼もしい味方になります。
デザインで勝負する商品の営業活動にぜひ利用してみてはいかがでしょうか。