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オープンイノベーションとは?
機体トラブルで運行を停止していた米国ボーイング社製の新鋭旅客機ボーイング787が、2013年5月中にようやく運行再開となるというニュースがありました。旅客機といえば部品点数が非常に多い製品の代表格ですが、この新鋭B787は米国ボーイング社だけでなく、日本をはじめ、多くの国のメーカーが協力して開発された航空機です。
とても1つの会社だけでは開発しきれないため、組織の枠組みを超えて複数の企業や大学等が共同で開発に取り組みを「オープンイノベーション」と呼んでいます。自社技術だけでなく他社が持つ技術やアイデアを組み合わせて、革新的な商品やビジネスモデルを生み出そうとしているわけです。
旅客機のように巨大で複雑なもので分業化が進む一方、身近な日用品にも自社だけで開発を進めるのではなく、他社の知恵を借りて製品づくりに取り組んでいる例が数多くあることをご存じですか。
例えば、株式会社フェリシモ(http://www.felissimo.co.jp/)では、消費者からのアイデアをもとに、「どっちからでも履けちゃうベランダサンダル」や「すぐ見たいページを開いたまま収納できる家族の通帳ケース」など、ユニークな商品を開発しています。同社は年2回ほど「生活雑貨大賞」というイベントで顧客からアイデアを募集する機会を作っています。
また、P&Gは、「コネクト・アンド・デベロップメント(つなげる+開発する)」の名のもと、オープンイノベーションに早くから取り組んできた企業で、すでに多くの製品やサービスを生み出しています。P&Gのサイト(https://pgconnectdevelop.jp/index.php)には、さまざまな成功例が掲載されています。「プリングルズ・スティック/Pringles Stix」や、「置き型ファブリーズ」といった製品は、国内メーカーとの共同開発によって生み出されたものです。
オープンイノベーションは、ハーバード・ビジネス・スクールのヘンリー・チェスブロウ助教授が提唱した考え方です。社内だけで研究開発を完結するクローズド・イノベーション(自前主義)の対義語として生まれました。
基礎研究から自前で商品を生み出すようでは顧客のニーズや技術動向の変化に間に合わなくなってきました。そこで、開発期間を短縮する必要性の高まりに応じて、オープンイノベーションも広まってきました。
オープンイノベーションを行うにあたっては、コラボレーションが必要になります。
普段は触れることのないような異質な企業や個人が交わることによって、新しい価値創造や革新的な発想が生まれることを期待して連携・協働することをコラボレーションと呼んでいます。
自社だけですべてまかなうことが難しくなってきた
最近の日用品をはじめ、「メイド・イン・ジャパン」の製品にお目にかかる機会が随分少なくなってきたように思います。まわりを見回しても目に付くのは、「メイド・イン・チャイナ」や「メイド・イン・ベトナム」といった外国で製造されたものがほとんどです。
製品自体の開発は日本で行うものの、国内で生産するよりも海外で生産して輸入するほうが製品コストを下げることができるから、というのが大きな理由です。
外国で作られたといっても自社の海外工場である場合も多いのですが、製造レベルの高い現地企業に製造を委託する場合もあります。
変化の激しい現在では、自社だけですべての変化に対応するのが難しくなってきました。技術の進歩も幅広く、多岐にわたっています。開発段階であっても、1社だけで開発コストやリスクをまかないきれない状況になってきています。
そこで、製造だけでなく開発段階から他社の力を借りて共同開発する機会が増えてきました。例えば、デジタル製品では細やかな手作業やすり合わせが必要になるところが少ないため、開発拠点があちこちに分散していても1つにまとめやすく、他社の力を借りやすいこともあります。
デジタル製品に限らず、デジタル化によって開発・設計情報を共有化することもできるようになってきたため、細かいすりあわせが必要な製品分野でも、どんどん他社との共同開発が進んできています。このように、オープンイノベーションは新商品開発の有効な手法として普及しています。
商品のコラボレーションだけでいいのか?
オープンイノベーションに対して、研究開発から製造までひととおり自社で行うことを自前主義と呼ぶことがあります。
日本の多くの会社は自前主義を採っていました。その代表がかつて世界を席巻した日本の家電メーカーです。
ところが、最近は、海外メーカーに押されてあまり元気がありません。そこで、自前主義だけでは儲からない、オープンイノベーションをもっと推進すべき、という声も聞こえてきます。
一方、研究開発は競合他社に知られないように、秘密裡に行いたいものです。
開発課題というのは、本来は秘密情報になります。オープンイノベーションを進めるということは、その会社に足りないものを外部から調達する行為を伴うため、その会社がどのような課題を持っているのか、どのような研究開発を進めようとしているのかが明らかになってしまいます。
そのため、単にいいものを一緒に開発しましょう、というだけでは、競合他社にすぐに追いつかれてしまい、おいしいところをさらわれてしまいかねません。
また、開発を持ちかけたのはこちらでも、いつのまにか共同開発相手が主導権を握ってしまい、おいしいところを持っていかれてしまっては元も子もありません。
ビジネスモデルレベルでオープンイノベーションを実現しよう
米国アップル社の「iPad」や「iPhone」は、オープンイノベーションを収益につなげている事例として紹介されています。(参考:「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由」妹尾 堅一郎 著)
これらの機器やOSはアップル社が開発するものの、アプリは他社が開発しています。これらのアプリが使えることによって、初めて「iPad」や「iPhone」の本領が発揮されます。
OSそのものはクローズにしつつも、アプリの開発仕様はオープンにして第三者に参入してもらい、コンテンツを開発してもらう点がオープンイノベーションといえます。
これら機器をハード面からみても、仕様やデザインはアップル社が行うものの、実際の製造は台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業社が受託して行っています。
このような開発・製造を進めるにあたって、自社に有利に進めるためには、まず、
(1)どんな情報を集めるのか
(2)いろいろなところから集めた情報をイノベーションに向けてどうやって組み合わせていくのか
(3)そのためにどのような組織が望ましいのか
をあらかじめしっかりと設定しておくことが必要になります。
アップル社は、上記検討を行い、アプリ開発者や製造委託先とのWin-Winの関係を構築できるようにしながら利益を得られる仕組みをつくりました。
単に外部の力を借りるだけでなく、自社が主導して利益も得られるようなビジネスモデルをいかに構築できるかが、オープンイノベーションを成功させる要因になるのではないでしょうか。
パロディは人気のバロメーターでもありますが、本家の影響力を利用する以上、ただ乗りとされないための配慮が必要になります。
パロディとして許される範囲の線引きは難しい問題ですが、まずは、相手方は商標権・著作権・不正競争防止法など、さまざまな権利・法律によって守られていることを認識することです。そして、パロディがパクリにならないようにまず意識しなければいけないことは、パロディする相手を貶めない配慮や、相手方のブランド価値が毀損するようなことはしないことといった、ビジネス以前の信義的な問題をクリアしておくことではないでしょうか。