Vol.22「配送伝票、洗濯物収納復路、カレーの調理方法…サービス業でも特許をとってビジネスに生かせる!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

あなたは、「特許権」ときくとどのようなイメージを持たれるでしょうか?

何か特別にすごい発明品というイメージを持たれる方が多いと思いますが、実はサービス業などでよく使われるちょっとした工夫なども特許になります。

宅配便の配送伝票
ドライクリーニング用の洗濯物収納袋
カレーの調理方法

の特許権があるのをご存じでしたか?

今回は、ものづくり企業だけと思われがちな特許権が、実はサービス業でも取得できるということを解説したいと思います。

○特許権はものづくり企業だけのものとは限らない

その昔、特許権は工業所有権の一つと呼ばれていた時期もあったことから、特許権や発明と聞くと、メーカーや研究所のものであって、それ以外の業種には関係ない、と思われている方が多いと思います。

実は、特許法上、特許権の保護対象である発明の定義は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」です。この中には「工業」という文字はどこにもありません。

現在では工業所有権あらため、産業財産権と呼ばれるようになっています。工業だけにとどまらず、産業全般に関係する権利だからです。

なので、産業上利用できる発明であれば、メーカー以外の会社や個人が特許権を取得することができ、現に多くの方々によって特許権が取得されています。

ただ、「自然法則を利用した」という言葉があるので、例えば、金融保険制度・課税方法などの人為的な取り決めや計算方法・暗号など自然法則の利用がないものは保護の対象とはなりません。また、技術的思想の創作ですから、発見そのもの(例えば、ニュートンの万有引力の法則の発見)は日本では保護の対象とはなりません。

また、技術的思想の創作なので、技能のように個人の熟練によって到達しうるものであって、知識として第三者に伝達できる客観性が欠如しているものも発明とはなりません。

○メーカー以外の企業が生み出す特許権ってどんなもの?

それでは、メーカー以外の業種ではどのような特許権が取得されているのか、いくつか事例を紹介いたします。

例えば、宅配業のヤマト運輸株式会社の場合を見てみます。

宅配便では荷物の取り扱いに際して配送伝票が使用されます。ヤマトさんは、この配送伝票に関する特許権(特許第3152921号)を持っていました(存続期間満了により現在は消滅しています)。

これは、同一依頼主から同一の届け先へ複数の配送品を配送する際、代表する配送品へ配送票を貼付し、残りの配送品には何個口かの記載を行い、連続番号等によって代表する配送品との関係付けを行い、ばらばらにならないようにまとめて配送していたものを、さらに誤送しないようにするための工夫を盛り込んだものです。

他にも不在者に対して通知事項を連絡する不在連絡票に関する特許権も取得しています(特許第4638073号)。

これは、配達内容情報などの個人情報を他人には見えないようにしつつ、簡便に発行することができるような工夫を盛り込んだものです。

他の業種のものとしては、クリーニング屋さんが取得していた、ドライクリーニング時に洗濯物を収納して使用するドライクリーニング用の洗濯物収納袋に関する特許権(特許第2892625号)があります。

飲食業であれば、ハウス食品さんが、カレーの調理方法に関する特許権(特許第3065480号)を持っていました。その特許の内容は、 「カット・調製した玉葱、じゃがいも、人参、肉などの具材に、水とスパイス抽出物を加えて加熱し、沸騰後さらに10~20分間弱火で加熱した後、小麦粉ルウとカレーパウダーを加えるか、あるいはカレールウを加え、さらに粘性が出るまで加熱する」 という調理方法が特許の権利範囲になります。調理方法の特許権の場合、調理でどんな材料を使用するのか、その調理の順番は、といったことが特許の決め手になります。

また、銀行であれば、口座情報管理や金融取引のシステムに関するIT関連技術についての特許権がたくさんあります。

○あなたもチャレンジ!特許権でサービスを保護するためには?

このように、メーカー以外の業種だからといって、特許権を取得できない、ということはございません。

それでは、どのように工夫すれば、サービス内容を特許権で保護することができるようになるのでしょうか?

もちろん、「工業的」な発明と同様に、単に発明したからといって特許権を取得できるわけではなく、そこには新しさや工夫の度合いについて、特許権取得のための要件が必要になることは言うまでもありません。

でも、サービス内容については、まずは、サービスで取り扱うものについてなされた工夫の内容を、「自然法則を利用した技術的思想の創作」にいかにつなげるか、が重要になります。

IT関連技術に関するものであれば、この条件を満たして発明として成立させやすいかもしれません。

そうでない場合、例えば、先ほどの不在連絡票についての特許権の権利内容は、 「折返した連絡票の外側に表示されるように少なくとも配達先名表示欄、端末表示シート貼着欄を設け、内側に表示されるように少なくとも依頼主名、配達物などの配達内容情報表示欄を設け、内外いずれか一方乃至両方に表示されるように再配達受付連絡先欄を設け、上記貼着欄に貼着した端末表示シートの一部が他方の折返し片にも貼着することにより、折返し片同士を封止し得るようにしてなる構成」 というものです。

つまり、不在連絡票に記載された個人情報を隠すことができ、しかも発行するのに手間取らないようにするための構造の発明を特許発明としています。

サービスで使用する物であれば、その構造や機能の特徴をとらえて発明にすることになります。

一方、調理方法のように個人の熟練によって到達しうるようなものであっても、知識として第三者に伝達できる客観性があって、自然法則の利用につなげることができれば、発明として成立させることもできます。

ただ、特許権を取得するためにはその内容が公開されてしまうので、ノウハウ系の場合、せっかく特許権を取得できても権利回避しつつ模倣されてしまうこともあるので、別の判断が必要になります。

○特許権を道具として利用する

サービス内容を特許権で保護することができれば、自社で実施する場合には、他社の市場参入を防ぐ障壁として利用することができます。

また、魅力的なサービスであっても自社だけで市場を広げることが難しい場合には、ライセンスなどによって仲間を増やしていくことも可能です。

ノウハウ系の場合には取扱いに工夫が必要ですが、せっかく差別化したサービス内容を勝手に模倣されないようにするための一つの方法として特許権の取得を検討されてみてはいかがでしょうか。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める