「リスクヘッジ」や「リスクマネジメント」という言葉を聞いたことがあると思いますが、法律的な問題のリスクヘッジやリ スクマネジメントというと、それらの内容についてあまり聞いたことがないかもしれません。今回は、「リーガル・リスク・マネジメント」と、これに関係する 「リーガル・セキュリティ」という言葉を説明したいと思います。
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リーガ ル・リスク・マネジメントとは何?
まず、リーガル・リスク・マネジメント(法的リスク管理)というのは、事業や企業の経 営において発生する法的責任や、法的不利益などのリーガルリスクをあらかじめ分析し、評価することによって予防、あるいは抑制を図ることをいいます。ビジネスを 行う上では、リーガルリスクを含めたさまざまなリスクに直面することになります。しかし、リスクのないところにチャンスなし。リスクを伴わないビジネスはあり ません。ですから、そのリスクを減らすことがビジネス成功の鍵となります。
リーガル・リスク・マネジメントを簡単にまとめると、ビジネス 上の問題点(リスク)としてどのようなことが考えられるか、それを契約上でカバーできるか、契約上でリスクをヘッジできないのであれば、保険に加入するこ とを考えるのか、また、自社が負担する責任を他社との間の契約で、他社に転嫁することはできないか、などを考えることです。逆の見方をすれば、保険でカ バーできることや、途中で他社に転嫁させられることは、ひとまず自社の負担としても良いということになります。他方、保険でカバーできない事項や他社に転 嫁できない事項について、自社で責任を負担するときには慎重にならなければいけない、ということになります。
リーガル・セキュリティとは何?
次に、さらに進んで、リーガルリスクを予防・抑 制するにとどまらず、会社または個人の法律上の権利を確保するために積極的に法律を利用することをリーガル・セキュリティといいます。法務安全保障とか、 戦略的法務ともいわれます。
契約の締結を例にとってリーガル・セキュリティーの考え方をみてみますと、例えば、ある商品を購入する場合の ように、1回の取引で終了してしまうのであれば、その商品に欠陥がないかを確認すればよいので、契約書の内容を検討する必要はほとんどないでしょう。しか し、商品の継続的納入・購入契約、ソフトウェアの開発契約、インターネットに関する著作権関連契約など、長期にわたる契約や取引金額の大きい契約、また、 常識的な知識では理解できない分野の契約については、内容を詳細に検討・確認することが必要です。それらの契約は、消費者と企業間の契約ではなく、あくま で企業間のビジネスの契約で、契約した以上、それに拘束されます。一度不利な契約をしてしまえば、それを変更するには当然相手方の承諾が必要であり、相手 方も自分に不利になるような契約の変さらに、応じてくれるはずがありません。このような事態はできるだけ避けなければなりません。
また、 起業の際に、とても良いネーミングを考えた場合、きちんとそのネーミングについて、特許庁に商標出願をしておかなければ、他の会社が先に出願してしまう と、そのネーミングを使用することができなくなります。しかし、商標法による出願をきちんとして商標権を取得できれば、自分だけが独占的に使用でき、他の 人が使用すれば、損害賠償請求ができます。このようなことからわかるように、法律を上手に利用すれば、自分に有利に使うことができるのです。
起業・事業開始後の心構え
起業したばかりの時や、事業規模が小さい時は、取引 先と契約をするにあたり、立場が弱いため、ビジネス上の問題(リスク)を自らが引き受けなければならないことが多いと思います。ただ、そうだとしても、そ の際、注意しておくべきことは、契約の締結にあたって、最悪の時に、どのような費用負担をしなければならないかを認識しておくことです。また、リーガルセ キュリティについては、起業当初においては契約の交渉力がないことが多いですから、契約によるリーガルセキュリティを考え、実行することができないかもし れませんが、商標法などの例のように、利用できる法律については、その利用を考えておくことが大切だと思います。