合同会社とは、会社形態の一つで、今ではアマゾン(アマゾンジャパン合同会社)やアップル(アップルジャパン合同会社)などにも導入されていることもあり、小規模の企業だけでなく外資系企業の日本法人の形態としても注目され、設立件数のシェアも伸びています。ここでは合同会社について、株式会社との違いや合同会社設立のメリット・デメリットなどを説明します。
- 目次 -
合同会社とは
合同会社は平成18年の会社法施行によって新たに創設されたものです。日本版LLCとも呼ばれるものですが、もともとはアメリカなどですでに導入され、広く利用されている制度です。
合同会社では、株式会社と同様に、有限責任社員だけで構成されるため、社員のリスクが軽減されている点にそのメリットがあります。しかも、株式会社が厳しい法規制にさらされるのに比べて、合同会社では規制が緩やかになっています。
例えば、株式会社の意思決定には、原則として株主総会を招集した上での議決が必要となるのに対し、合同会社では総社員の同意で足りるため、迅速な経営判断が可能になります。
この他にも、配当について出資額とは違う割合での分配も認められています。ただし、会社の構成員である社員の責任が有限責任とされていることから、株式会社と同様に債権者保護の要請が高く、貸借対照表や損益計算書などを作成する必要があります。
合同会社はこれらの特徴から、機動的な会社運営を望む者にとっては魅力的な制度であるということができます。株式公開を目指すのでなく、総社員の同意を取るのが難しくなければ、合同会社を設立することも会社形態の選択肢として考えられます。
ただし、株式会社に比べると会社形態としての認知度が低く、また、信用力にやや欠ける面があることは否めません。
合同会社設立のメリットとデメリット
合同会社にするメリットのひとつは、設立費用があります。
定款の認証がいらないばかりか登録免許税も、株式会社の15万円にくらべて6万円ということでお得感があります。また、決算公告義務がないので 会社運営という意味では維持費が安いといえます。
ただ、外国で合同会社に適用されるパススルー税制が日本国内では適用されないために税金が安くなるということはありません。
一方でデメリットと言えば、機関設計が不要なために株式会社でいう株主総会や取締役というものがありません。そのために、代表取締役を代表社員という呼称で呼ぶことになります。(出資者を社員と呼ぶ)この呼称に抵抗がある方が多いのも事実です。
合同会社を検討される際には、設立費用や維持費が安い反面、対外的な呼称(代表社員)に抵抗があるかないかが選択の1つの判断材料になっているようです。
また、前に述べましたが、定款に認証がないという点ではそれなりに注意が必要であることはいうまでもありません。
合同会社は、株式会社と違い出資比率に応じた議決権の差異がないという事は重要な論点です。
その定めがないと、本人が死亡した際には、相続人や一般承継人が社員となることはできずに、社員1人の合同会社は解散することになります。
そう考えると、特に合同会社の定款は安易に考えるどころか落とし穴が多数含まれているということを肝に銘じておく必要があるのです。
株式会社と合同会社の違い
株式会社は会社の債務に対し、出資金 額を限度として責任を負う有限責任社員から構成されます。そして、株式会社は株式を発行することによって、多くの人から多額の資金を集めることが可能にな る会社形態です。しかしながら、設立したばかりの株式会社では、株式の発行によって多額の資金を集めることは実際には、難しいものです。
事業を始めるにあたっての会社形態を株式会社とすることの一番のメリットは、従前、最低でも資本金が1000万円必要であったので、その名残から、現時点 では、他の会社形態に比べて社会的な信用が高いことにあるといえます。ただ、会社法施行によって1000万円の最低資本金制度は廃止され、資本金1円か ら会社設立が可能となりました。今後は、「株式会社であるから」というだけでは社会的な信用が高いとは言えなくなり、信用力を高めるためには資本金の金額 を大きくする必要がでてくるかもしれません。
なお、将来株式公開を目指すのであれば、外部からの出資を受けることが前提ですので、合同会社を設立するのではなく、最初から株式会社を設立しておくことがよいと考えられます。
株式会社 | 合同会社 | |
設立登記の登録免許税 | 資本金の額の約0.7% ただし最低15万円 | 資本金の額の約0.7% ただし最低6万円 |
---|---|---|
公証役場での定款の認証 | 要 | 不要 |
出資者の数 | 1人以上 | 1人以上 |
出資者の名称 | 株主 | 社員 |
出資分の譲渡 | 自由(会社の承認が必要とすることも可能) | 他の社員全員の同意が必要 |
出資者の利益配分 | 所有する幹部式の割合に応じて配分 | 総社員の同意で自由に配分 |
業務を行う役員 | 取締役 | 業務執行社員 |
必要な役員の数 | 取締役1人以上 | 業務執行社員1人以上 |
役員の任期 | 2年以上10年以内 | なし |
会社の代表者 | 代表取締役を選定 | 各社員または代表社員を選任 |
意思決定方法 | 株主総会での承認決議 | 総社員の同意 |
出資者と役員の関係 | 出資者が役員とは限らない | 出資者が役員にもなる |
決算公告の掲載義務 | 有(毎事業年度ごとに必要) | 無 |
株式上場の可否 | 可 | 不可 |
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合同会社設立の手順と流れ
①会社名の決定
どんな名前が良いのか、会社の名前を決めます。漢字、ひらがな、カタカナの他に英語も可能です。尚、「合同会社」を会社名の前か後ろにつけることが必要になります。
例えば「合同会社ABC商会」、「ABC商会合同会社」になります。
②事業目的を決めます。
会社は事業を行う場合は、定款に事業目的を記載しなければなりません。そのため、どんな事業を行うのかを決めます。
③出資者の人数および出資金額を決めます。
誰がいくら出資するかを決めます。
④本店をどこにするのか?を決めます。
会社を設立する場合、会社の本店(本社)をどこにするのかを決めなければなりません。自宅、店舗、事務所、どこを本店にしてもかまいませんが、本店は1ヶ所のみとなります。
⑤類似商号調査を行います。
上記の①~④が終わりましたら、類似商号調査を行うことをお勧めします。会社法では、同一住所、地番でなければ、隣にある会社と同じ名前をつけてもかまいませんが、同業者が自分と同じような社名では、お客様が迷惑を被りますし、「不正競争防止法」で訴えられる危険性もありますので、自分が住んでいる市区町村を管轄する法務局で、類似商号調査を行うことをお勧めします。
⑥定款を作成します。
会社の決まりごとを書いた、「定款」を作成します。このとき、費用として印紙代4万円が必要になります(定款に4万円の印紙を貼ります)。司法書士や行政書士に手続きを依頼した場合は、電子データで定款を作成してくれますが、この場合は印紙代は発生しません。
⑦預金口座へ資本金を振り込みます。
出資する社員になる人の預金口座へ、出資金を振り込みます。
⑧必要書類をそろえて法務局で登記を行います。
必要書類をそろえて、設立する会社の本店の所在地を管轄する法務局で登記申請を行います。
この時、登録免許税(印紙代)として6万円かかります。法務局へ行きますと、登記完了予定日が提示されています。会社の設立日は登記書類を提出した日ですが、「登記簿謄本」は登記完了日以降でないと、取得することはできません。
⑨登記簿謄本を取得して、銀行に口座を開きます。
①~⑧で会社の設立手続きは終了ですが、個人に振り込んだ資本金を会社の口座に移さなければなりません。「登記簿謄本」を法務局で取得しましたら、銀行へ行き、会社の口座を開設して、そこへ資本金を移してください。ここから、会社の経理がスタートします。
合同会社から株式会社に変更するには
①組織変更計画を作成します。
合同会社から株式会社へ組織変更をする会社は、組織変更計画の作成が必須です。組織変更計画には最低限、次の事項を定める必要があります。
- 組織変更後の株式会社の商号、本店所在地、目的、発行可能株式総数
- 組織変更後の株式会社の定款で定める事項
- 組織変更後の株式会社の役員の氏名
- 合同会社の社員が取得する株式の種類、数に関する事項
- 合同会社の社員に金銭等を交付するときはそれに関する事項
- 効力発生日
②官報に公告を掲載します。
組織変更をする合同会社はその債権者の保護のために、官報公告によって、組織変更をすること、債権者が一定の期間異議を述べることができる旨を掲載しなければなりません。
組織変更公告は、申込みから掲載まで1週間程度かかります。
③債権者へ個別催告をします。
官報公告と併せて、すべての債権者へ組織変更する旨の催告も必要です。
④総社員の同意を取ります。
組織変更をする合同会社は、その効力発生日の前日までに組織変更計画につき、社員全員の同意を取る必要があります。
⑤組織変更の効力発生
組織変さらにおいては、会社の設立と異なり、登記が効力発生要件ではないため、組織変更計画において効力発生日と定めた日に組織変更の効力が発生します。
⑥組織変更の登記を申請する
組織変更の登記は、効力発生日から2週間以内に、組織変更後の株式会社の設立登記と組織変更する合同会社の解散登記を同時に行ないます。
合同会社の現実の利用
そして会社法施行前には、合同会社は小規模企業に向いた会社形態であると評価されていましたが、実際には、大手企業が共同で事業を行うにあたって、合同会社を設 立する動きも目立ちます。確かに大手企業により設立された合同会社であれば、信用力の不足といったデメリットも少なく、むしろ経営判断の迅速化による機動 的な経営などのメリットのみを享受できるため、大企業が合同会社を選択するのには合理性があるといえるからでしょう。
このように、現在の合同会社の利用状況は、会社法では合同会社が合弁会社として利用されることを制度目的の1つとして想定していたことからすれば、その目的の1つを達成したといえますが、構成員の個性が重視され柔軟な会社経営がなされる小規模の会社のための制度という目的は、まだ十分には達成されていないのかもしれません。合同会社については、起業の一手段としても軌道に乗った感はありますが、今後もこれまでにはなかった、株式会社では考えられなかった活用がなされていくことでしょう。
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