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株式公開のために必要な関係者
株式公開のためには、多くの関係者の協力が必要となります。そこで、株式公開を目指す場合には、いろいろな人脈などを通じて、(1)資本政策を始 めとして、株式公開準備について助言・指導を行い、公開のための会社の審査を行い、また、株式公開時の株式の公募・売り出しを担当することになる主幹事証 券会社、(2)株式公開のために必要な監査を担当し、また、株式公開にあたって解決すべき会社の問題点および改善策を提示する役割もある監査法人、ま た、(3)さまざまなIPO準備作業に関わる支援を行なうIPOコンサルティング会社などを決めることが必要になります。これらの人と協力して株式公開の 準備を進めていくことになります。
公開までのスケジュールと法律上の課題
株式公開のためには、上場審査基準をクリアする必要があり、そのためには、証券取引所による審査の前に、証券会社と監査法人を中心として、さまざ まな審査を受けることになります。そのための株式公開の準備は、これらを見据えて、おおむね公開する事業年度の三事業年度前から行われるというのが一つの 目安といえます。それぞれの時期において法的対応が関係する事項について見ておくことにします。
(1)直前々々期
監査法人によるクイックレビュー・ショートレビュー(予備調査、短期調査)により、株式公開を目指すに
あたって、どのような準備をしていけばいいのかを監査法人により調査され、具体的には、会社の現状を調査
した上で、株式公開のための基準に達していない事項を洗い出しそれを達成するための対応策が提示されます。
この際に、監査法人から指摘された法律上の問題は必ず是正し、会社の事業運営に関係する法令を確認して
会社の事業運営に法令違反がないような状況にすることが必要です(コンプライアンスの認識の必要性)。
直前々期および直前期の2期において法令違反が生じていると証券取引所での審査で問題視されることが多い
ので注意が必要です。また、会社の取締役会の議事録は株式公開の審査にあたり極めて重要になります。
そこで、この時期から、司法書士や弁護士を顧問として、法的な業務のサポートをしてもらうことが必要です。
(2)直前々期
この時期には、公開申請書類作成準備をすることになりますが、主幹事証券会社の引受部からさまざまな
指摘を受けることになるかと思います。その際にはその指摘への対応を検討する必要があります。
特に法的な問題に関しては、証券取引所での審査の際に問題視されると重大な問題となり公開が遅れること
にもなりかねませんので、IPOコンサルティング会社とも相談しながら、また、主幹事証券会社の担当者と
よく検討し、問題があれば法律事務所に相談するなどしてすぐに対応することが必要です。
また、株式公開のためには、社内管理体制を構築した上で、1年程度その運用実績を積むことが必要となり
ますので、この時期には社内管理体制の構築が終了している必要があります。
今後は、日本版SOX法(金融商品取引法)への対応が求められますので、極めて重要なポイントになります。
(3)直前期(株式公開をする事業年度の前の事業年度)
主幹事証券会社の審査部により上場審査が始まるなど、申請会社による株式公開申請を行うか否かの最終判断
が行われることになり、また、社内管理体制の運用実績などの確認が行われることになります。この時期には、
公開申請書類の作成もその完成に向けて行われ、法律事項に関しては問題視される違反事項がないようにして
おかなければなりません。