会社経営に必要な法律 Vol.03 村上ファンドに見るベンチャー企業のリスク管理

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
昨年話題となった、いわゆる村上ファンド事件は、金融商品取引法(旧・証券取引法)が禁止するインサイダー取引が問題となったものです。金融商品取引法(旧・証券取引法)は、主に、株式を上場している会社について適用されるものです。ベンチャー企業のなかには、将来上場を目指す会社も多いと思いますので、上場を見据えて今から理解をしておく必要があります。 そこで、今回は、村上ファンド事件の法的な内容を踏まえた上で、ベンチャー企業にとって注意すべきことは何かについて説明していきましょう。

事件の概要

 村上ファンドとは、村上 世彰氏が率いる投資ファンドの通称です。阪神電鉄株の売買などで、よくマスコミに登場していましたので、皆さんご存じだと思います。その村上ファンドの代表である村上 世彰氏が、ライブドアのニッポン放送株の取引に絡んで、金融商品取引法(旧証券取引法)の禁止するインサイダー取引を行った容疑で逮捕され、村上ファンドの中核であったMACアセットマネジメントとともに証券取引法(法律違反行為の当時は、まだ金融商品取引法ではありませんでした)違反で起訴されたというのが、いわゆる村上ファンド事件です。

 

インサイダー取引とは

 今回問題となった、インサイダー取引とは何なのでしょうか。インサイダー取引とは、会社の従業員などの関係者が、その立場上知っている重要な情報が公開される前に、その会社の株式の売買を行うことをいいます(金融商品取引法・旧証券取引法166条)。重要な情報とは、例えば他社との業務提携の話など、その情報が公開されれば、株価に影響をもたらすような情報であり、言い換えれば、投資家の投資判断に影響を及ぼす情報をいいます。このような情報を事前に知っている人は、将来この情報が公開された後の株の値動きが予想できるため、自己に有利な株の売り買いができてしまいます。

 しかし、立場上知りえた、このような未公開情報に基づく取り引きを認めてしまうと、そのような情報を知りえない立場の一般投資家にとって不利となってしまい、ひいては多くの一般投資家によって支えられている株式市場の存続にも重大な影響をもたらすものとなります。そこで、このような取り引きを「インサイダー取引」として、法律は禁止しているのです。

 今回の村上ファンド事件では、ライブドアがニッポン放送株を取得する予定であるという「重要な情報」を村上氏は入手し、ニッポン放送株が高騰することを見越して、村上ファンドの保有するニッポン放送株を売買して利益を得たとされています。

 

 インサイダー取引の簡単な説明は

 野村総合研究所「経営用語の基礎知識」 http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/m_word/insider.html

 

ベンチャー企業として気をつけること

 金融商品取引法(旧証券取引法)は、主に、上場企業に適用される法律ですので、ベンチャー企業にとっては今すぐに問題となるものではありません。しかし、いずれ上場を目指す場合には、上場後非常に重要な法律になるものですので、今からどのような規制がなされているのかについて知っておくとよいと思います。

 また、将来の成長が見込まれるベンチャー企業は、従業員や役員へのインセンティブとして(※ 1)ストックオプションを付与していることが多くあります。ストックオプションの権利行使により、株式を取得し、上場後に取得した株式を売却する場合、内部情報などに基づき株価上昇が見込まれる状況で売却すると、インサイダー取引を疑われる可能性があります。そこで、株式公開の準備において、社内でインサイダー取引規程の制定が要求され、また、役員や従業員に対して、それらを十分に理解させることが必要になりますので、留意しておくべきです。

 

 本事件以外でインサイダー取引が問題となった最近の事例

 http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt100/20061225AT1G2500X25122006.html

 インサイダー取引の内容やインサイダー取引規程の作成のポイントについてくわしく解説されています。

(※1)ストックオプション
 会社の役員や従業員が持つ、決められた期間内、価格での自社株購入権

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