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1. ニュースの概要
2007年8月29日、公正取引委員会は、使い捨てカイロの「ホカロン」を販売するロッテ健康産業株式会社に対して、排除命令(公正取引委員会が事業者に対して景品表示法違反の行為をやめ、今後繰り返さないよう命じること)を出しました。
公正取引委員会の発表によれば、「ホカロン」には、有効期限内に使用すれば、40度以上の発熱持続時間の記載があるにもかかわらず、実際には有効期限内であっても、製造から時間が経過した商品では、表示を相当程度下回る発熱持続時間しか得られなかったということです。
今回の排除命令では、この「ホカロン」の発熱持続時間の表示につき、景品表示法の禁止する不当表示にあたるものとして、ロッテ健康産業株式会社に対して、再発防止策を講じ、今後、今回のような表示を行わないことを要求しました。
・排除命令についてのロッテ健康産業による発表
→http://www.lottekenko.co.jp/info/070830/index.html
なお、ロッテ健康産業は、今回問題となった「ホカロン」については、排除命令が出される前の2007年7月に、発熱持続時間が表示に満たないことを発表し、自主回収を進めていました。
2.法律問題
今回、排除命令の原因となったのは、景品表示法(正式名称は、不当景品類および不当表示防止法)違反です。景品表示法とは、消費者を惑わすような不当な表示や過大な景品類の提供を規制するもので、表示に対する規制と、景品に対する規制の2つに分けることができます。今回問題となったのは、このうち、表示に対する規制です。
消費者にとって、商品の機能などの表示は、商品を購入するかどうかの判断にあたって、重要な情報源です。そこで、表示が適正になされるように規制がされているのです。表示に対する規制は、具体的には、(1)優良誤認表示と(2)有利誤認表示の2つに分けることができます。優良誤認表示の禁止とは、商品やサービスの品質など商品の「内容」について、実際よりよいと、消費者に誤解を与えるような表示を禁止するものです。今回、「ホカロン」の表示については、「ホカロン」の発熱持続時間につき、実際より長い時間を表示していたもので、この優良誤認表示にあたります。他方、有利誤認表示とは、価格など商品の「取引条件」について、実際よりも優れていると、消費者に誤解を与えるような表示を禁止するものです。
景品表示法に違反した場合には、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除,再発防止策の実施,今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる排除命令が行われることになっています。
3.今回の事案からベンチャーとして学ぶこと
すでに説明したとおり、景品表示法は、商品の表示と景品に関する規制を行うものです。そして、商品やサービスの説明は、消費者向けの事業を行う企業であれば必ず行うことですので、この法律は、理解を避けて通れない法律であるといえます。
また、この法律に違反した場合には、排除命令などの行政処分が行われ、会社名や処分内容が公表されますので、これにより会社の信用の低下は免れません。また、違反した商品については、自主回収が必要となる可能性があるなど、経済的な損失も大きいものです。
このため,商品の品質や機能などについての表示を行う場合には、それが正確な情報であるかどうかにつき、その客観的な根拠・資料を踏まえて慎重に検討しなければなりません。また、景品表示法については、法律の解釈や実際の運用につき、各種のガイドラインなどが出ていますので、法律以外にもこれらを確認することが必要となります。ただし、専門的な事柄が多いことから、実際に自社の事業について問題となるかにつき検討する場合には、管轄行政庁である公正取引委員会に問い合わせたり、弁護士などの専門家と相談したりすることが必要なると思います。