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1.ニュースの概要
2007年12月、公正取引委員会は、衣料品販売大手の株式会社ユナイテッドアローズに対し、景品表示法違反による排除命令を出しました。同社が、「カシミヤ70%」として販売していたストールに、実際にはまったくカシミヤが使われていなかったことが判明したためです。
報道によれば、同社は、2006年6月ころから、国内の卸売業者を通じて、ネパールから輸入したストールをカシミヤ70%と表示して販売を始めました。ところが、社内調査で、カシミヤが含まれていないことが発覚したため、2007年10月に、この事実を公表した上で自主回収を進めていたとのことです。
同社では、この商品を卸売業者から仕入れる際に、業者の説明を鵜呑みにし、カシミヤの含有について、自社での検査を行っていなかったということです。
・ユナイテッドアローズによる発表
→http://www.united-arrows.co.jp/news/07122623.html
2.法律上の問題
景品表示法は、消費者保護の観点から、消費者に特に大きな影響を及ぼす景品や商品表示に関して規制する法律です。
そして、景品表示法は、違法となるケースを類型化して規制していますが、今回は、この類型のうち、「優良誤認」にあたるとされました。「優良誤認」とは、商品の品質などの表示において、実際より優れているかのように、消費者に誤信させるような表示を行うこといいます。
・公正取引委員会 景品表示法に関する説明
→http://www.jftc.go.jp/keihyo/
3.ベンチャー企業として
景品表示法が、BtoCの事業を行う会社にとって重要な法律であることは、従前の記事(「Vol.7 使い捨てカイロ『ホカロン』の景品表示法違反とは?」)でも説明したとおりです。
今回、特に注目したいのは、ユナイテッドアローズが、卸売業者からの説明をそのまま鵜呑みにして、表示を行っていたという点です。景品表示法上の責任は、違法な表示をしたという事実に対して問われるものであり、会社が意図的に行ったものでなくても、違法な表示の決定に関与してしまった以上は、責任を負わなければなりません。
特に、今回のように、卸売業者から仕入れた商品を消費者に販売する会社は多いと思います。そしてこのような会社にとって、卸売業者による商品説明をそのまま信じて、消費者に販売してしまうことは、よく起こりうることといえます。
そこで、このような事業を行う会社としては、他社から仕入れた商品を、そのまま売るような場合でも、消費者相手に売る以上は、販売者として、商品についての責任があるということを肝に銘じておく必要があります。
景品表示法上の表示に関する規制は、今回問題となった原材料の表示のほかにも、原産地表示など、多くの事項が問題となります。これらにつき、自社でできる限り確認を行ってから、消費者に販売する体制づくりが必要です。
また、BtoCの事業を行う場合の、商品についての責任としては、景品表示法のほかにも製造物責任法など、多くの法規制があります。これらの法律についての知識をもつことはもちろん、実際の社内での運用においては、法律に沿っているかについてのチェック漏れがないようにするための、社内的なシステムを確立しておくことも大切です。