会社経営に必要な法律 Vol.16 テラメント事件から見るEDINETの盲点

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
テラメント株式会社が、EDINETを通じて、関東財務局に対して提出した大手6社の株式についての大量保有報告書の虚偽報告が問題となっています。今回は、このニュースを題材に、法律上の問題とあわせて、上場後は、必ず利用することになるシステムであるEDINETについて説明していきます。

1.ニュースの概要

 2008年1月25日、テラメント株式会社が、トヨタ自動車株をはじめとする、日本の大手企業6社の株式について、それぞれ51%取得したとする「大量保有報告書」を、インターネットを通じて提出し、電子開示システム「EDINET」に登録しました。

 しかし、報道によれば、大量保有報告書どおりの株式を取得した場合には20兆円を超える資金が必要となるにもかかわらず、同社は資本金1000円で、従業員はいないとされており、その規模の不釣合いから、報告書の信憑性に疑問がもたれていました。

 金融庁は、この大量保有報告書における取引規模があまりに異例であることから、即日、虚偽記載の可能性があるとして一般投資家などに注意を喚起しました。そして、2008年1月27日には、この報告書が、虚偽記載であり金融商品取引法(旧証券取引法)違反にあたるものと認定し、同社に対して、報告書の内容を訂正する「訂正報告書」の提出を命じる行政処分(訂正命令)を行いました。これに対して同社は、訂正報告書の提出を拒否していますが、金融庁は虚偽の報告書を削除する権限を有しないことから、問題の大量保有報告書が訂正命令後もEDINETに掲載され続けるという事態が生じています。

 この問題について、証券取引等監視委員会は、2008年1月30日、金融商品取引法違反の疑いで強制調査を行いました。

 また、今回の事件は、EDINETの仕組み自体の盲点をつかれた形になりました。このため、金融庁は、EDINETの運用に関して、今回のような事件の再発防止と虚偽報告が出された場合の危機管理に関する検討チームを発足させたということです。

・金融庁 テラメントへの処分の発表
→ http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080127.html 

 

2.法律上の問題

(1)大量保有報告書とは

 金融商品取引法(旧証券取引法)は、株式市場に影響を与える可能性のある一定の事柄につき、その開示を求めています。「大量保有報告書」は、そのうちの一つであり、特定の会社の株式につき5%を超えて保有したり、報告後に保有割り合いが1%以上動いたりした者などに対し、その旨の開示を義務付けるものです。この書類の内容に虚偽があった場合、市場に混乱を招く危険性が高く、刑事罰の適用も含めた厳正な処分がなされます。

・「大量保有報告書」とは  野村證券のサイト
→ http://www.nomura.co.jp/terms/japan/ta/tairyohu.html 

 

(2)EDINET(エディネット)とは

 大量保有報告書は、EDINETを通じて、財務局に提出することが求められています。では、EDINETとはどのようなものなのでしょうか。EDINET(エディネット)とは、「Electronic Disclosure for Investors’ NETwork」の略称であり、金融商品取引法に基づき開示することが求められる書類を、インターネットを通じて電子開示するために金融庁が運営するシステムです。このシステムが導入される以前は、金融商品取引法において要請されている開示書類の提出、そして、その閲覧のためには、わざわざ財務局まで出向く必要がありました。しかし、このシステムを利用すれば、開示書類の提出手続きをインターネット上で済ますことができます。また、こうして提出された開示書類はインターネット上に公開され、だれでも簡単に閲覧することができるようになっています。

 

3.ベンチャー企業として

 今回問題となった、金融商品取引法における大量保有報告書の提出などの開示制度が会社に直接関わってくるのは、株式公開後です。しかし、株式公開を目指すベンチャー企業としては、いずれ関わってくるものとして今から知識を得ておくことは有益です。金融商品取引法に基づく開示書類が、どのような仕組みで提出され、公開されるのかという点について概略を理解しておくとよいと思います。

 また、今回のニュースでは、EDINETを用いた開示システムの脆弱性も指摘されています。大量保有報告書は、企業が開示するものではなく株主が開示するものですが、企業にとっては、株式公開後には不特定多数の株主が関わってくるため、自社の株式につき今回のようにシステムを悪用した虚偽報告がなされるリスクがつねに付きまとうということを理解しておかなければならないでしょう。

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