会社経営に必要な法律 Vol.20 三越・伊勢丹から経営統合を学ぶ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
2008年4月、大手百貨店「三越」と「伊勢丹」が経営統合し、持株会社「三越伊勢丹ホールディングス」が発足しました。そこで、今回は、このニュースを題材に、経営統合の一つの手段である持株会社について、説明しましょう。

1.ニュースの概要

 2007年、大手百貨店「三越」と「伊勢丹」が、経営統合をすることが発表されていましたが、2008年4月1日、とうとう、両社の統合による持株会社「三越伊勢丹ホールディングス」が発足し、世間をにぎわせました。報道によれば、今回の統合により三越伊勢丹ホールディングスは、百貨店業界首位となるそうです。

 

・両社からの発表「株式会社伊勢丹と株式会社三越との共同持株会社設立による経営統合に関するおしらせ」

http://www.imhds.co.jp/ir/pdf/news_release/isetan/2007/07_0823_1_news_i.pdf 

 

2.法律上の問題

 

(1)経営統合の種類

 経営統合とは、複数の企業の経営を一つにすることです。その方法には、その結びつきの強い方から順に、「合併」、「持株会社」、「資本提携」などがあります。三越と伊勢丹の経営統合では、持株会社が設立されました。そこで、今回は、持株会社について、説明しましょう。

 

(2)持株会社とは

 「持株会社」とは、他の会社を支配する目的で、他の会社の株式を保有する会社をいい、独占禁止法によれば、子会社(その総株主の議決権の過半数を保有されている会社)の株式の取得価額の合計額の、当該会社の総資産額に対する割合が、50%を超える会社と定義されています。

このような持株会社は、次の2種類に分けることができます。

 

(ⅰ).事業持株会社

 自らも主たる事業を営む一方、他の会社の事業活動を支配することも行っている会社。

 従来の、企業同士の「株式持合い」(例えば、銀行がその系列・グループ会社である鉄鋼会社の株式を持ち、その鉄鋼会社も、その銀行の株式を持っていること)はこれにあたります。

 

(ⅱ).純粋持株会社

 事業を持たず、株式の所有を通じて他の会社の事業活動を支配することを目的としている会社。

 単に「持株会社」といったときには、この純粋持株会社を指すことが一般的であり、今回の、三越伊勢丹ホールディングスも、純粋持株会社にあたります。純粋持株会社の主な収益は、所有株式からの配当になります。純粋持株会社は、戦後の財閥解体に伴い、事業支配力の過度の集中を防止するため、これまで独占禁止法によって禁止されていましたが、1997年に解禁されました。

 なお、今回のように、持株会社は、「ホールディングス」、「グループ」などが会社名に含まれることが多いものです。ただし、このような名称であるからといって、必ずしも持株会社ではありませんので、注意が必要です。

 

(3)持株会社のメリット

 経営統合一般のメリットとしては、流通や商品開発等の協力における効率化が挙げられますが、経営統合の中でも、持株会社によることのメリットはどのようなものなのでしょうか。

 もっとも強固な経営統合の方法である合併では、各会社は完全に一つの会社となります。他方、資本提携では、各会社はあくまでも、独立の経営を行うことが前提となります。

 持株会社による経営統合では、統合する会社は、同一の持株会社の傘下に入るものの、子会社としてそれぞれ存続します。このため、複数の会社が、一つの会社となる合併と比べると、各会社の独立性は一定程度保つことができる一方、経営に関する意思決定は、持株会社として統一して行うことができます。

 これにより、合併による各会社の組織の摩擦を緩和することができ、また意思決定の迅速化により経営の効率化を図ることができます。

 

3.ベンチャー企業として

 近年、会社の再編や統合が活発になっていることもあり、経営統合は、ベンチャー企業であっても、身近なものであると思います。

 今回説明してきたとおり、経営統合と一口に言っても、法律上さまざまな方式がありえます。企業にとって重要なのは、経営統合の各方式がどのような仕組みにより行われているかということと、それぞれのメリット・デメリットを把握することです。その上で、経営統合における自社の目的などを勘案して具体的な内容を決定していくことになります。

 ただ、経営統合は、文字とおり会社の経営自体に大きな影響を及ぼすものであり、また中・長期的に継続するものですので、特に株式上場を目指しているベンチャー企業にとっては慎重な検討が必要です。

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