会社経営に必要な法律 Vol.22 JASRACは独占禁止法に違反しているか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
2008年4月、公正取引委員会は、日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行いました。今回はこのニュースを題材に、独占禁止法について説明しましょう。

1.ニュースの概要

 2008年4月23日、公正取引委員会は、日本音楽著作権協会(JASRAC)の事業について、独占禁止法が禁止する私的独占にあたる疑いがあるとして、立入検査を行いました。

 JASRACは、放送局との間で著作権使用に関する「包括利用許諾契約」を締結していますが、この包括契約が、他の著作権管理団体の新規参入を妨げている疑いがあると判断されたものです。

 包括契約では、NHKおよび地上波放送局に対し、放送事業収入の1.5%を使用料として徴収するかわりに、JASRACの管理する楽曲については、自由に利用ができるとしています。これにより、放送局がJASRAC以外の著作権管理団体の管理楽曲を使用するには、別途その団体への使用料が発生することから、放送局は他の著作権管理団体の楽曲を使用しにくくなります。この結果、著作権者もJASRAC以外の著作権管理団体との契約を避けるようになることから、私的独占の疑いがもたれたとされています。

 著作権管理事業のうち音楽放送分野の市場におけるJASRACのシェアは、99%にのぼるということです。

・JASRACの発表 http://www.jasrac.or.jp/release/08/04_4.html 

 

2.法律上の問題

(1)独占禁止法とは

 今回問題となった独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることを目的とする法律です。自由競争にもとづく市場のメカニズムが正しく機能することにより、企業はよりよい商品やサービスを提供しようとし、結果的に消費者の利益が確保されることになります。

 

(2)私的独占とは

 独占禁止法は、公正かつ自由な競争を阻害する行為として、私的独占の禁止、不当な取引制限の禁止(カルテル、談合など)、不公正な取引方法の禁止、企業結合の規制などの類型に分けて規制しています。

 今回問題となったのは、そのうちの1つである「私的独占の禁止」です。私的独占の禁止は、人為的に競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占したりしようとする行為、株式取得などにより他の事業者の事業活動を制約し、市場を支配しようとする行為などを禁止するものです。

 なお、優れた商品やサービスを提供する企業が、公正な競争の結果として市場を独占するようになっても、違法になるわけではありません。

 今回のJASRACの問題では、包括利用許諾契約が、人為的に他の事業者を市場から排除するものであるとされました。

・公正取引委員会「私的独占」について http://www.jftc.go.jp/dk/kisei.html#Shiteki 

 

3.ベンチャー企業の独占禁止法対策

 ベンチャー企業の中でも、インターネットのサイトや店舗などで音楽を使用する場合に、JASRACとの契約を利用したことのある企業も多いでしょう。このため、今回のニュースは身近な話題だったのではないでしょうか。

 さて、今回JASRACが違反の疑いを向けられた独占禁止法は、会社の大小または上場・非上場を問わず適用されるものですが、市場の独占を規制する法律であることから、その対象となる企業は主として大企業であることが多いものです。ただし、新しい分野や規模の小さい分野では、ベンチャー企業などでも規制の対象となる可能性があることに注意しておく必要があります。

 また、独占禁止法のような行政規制は、公正取引委員会などの行政官庁が詳細なガイドラインやパンフレットを公表していることが通常ですので、問題がありそうな場合には、これらを参考にすることがよいでしょう。また、公正取引委員会では相談窓口が設けられていますので、ガイドラインやパンフレットを見た上で、窓口で相談することがよいでしょう。

 ベンチャー企業としては、他社の独占禁止法違反になるようなケースを目の当たりにすることがあるかもしれません。このような場合には、公正取引委員会に相談してみることも一つの方法ではないかと思います。

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