会社経営に必要な法律 Vol.24 グッドウィルが書類送検された『二重派遣』とは何か?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
株式会社グッドウィルが労働者を二重派遣していたとされる事件で、2008年6月、同社およびその従業員が職業安定法違反で書類送検されました。今回は、このニュースを題材に労働関係法規に違反することの怖さを説明していきましょう。

1.ニュースの概要

 日雇い派遣大手の株式会社グッドウィルが、港湾関連会社「東和リース株式会社」に対して、職業安定法に違反し、労働者を二重派遣していた事件で、2008年6月5日、警視庁は法人としてのグッドウィルと、二重派遣に関わった同社の従業員を職業安定法違反幇助(ほうじょ=違法行為を助けること)などの容疑で書類送検しました。今回の書類送検の対象となった同社による違法な二重派遣は、2006年から2007年にかけて、27回行われていたということです。

 

2.法律上の問題

(1)二重派遣とは

 今回の事件では職業安定法の禁止する二重派遣を行ったことが問題となっています。二重派遣とは、『派遣先が派遣元から労働者派遣をうけた労働者を、さらに別の企業に派遣すること』をいいます。二重派遣では、派遣先は派遣業者ではないにも関わらず労働者を別の企業に供給しており、職業安定法44条の禁止する『労働者供給事業』をしていることになります。

 二重派遣が行われると、責任の所在が不明確となり、また複数の業者に中間マージンを取られることにより労働者が不当に安い賃金で働かされることになりかねません。このため、職業安定法は、二重派遣を禁止しているのです。

 二重派遣を行った場合については、1年以下の懲役または20万円以下の罰金という刑事罰が定められています(職業安定法64条4号)。

・二重派遣とは http://2.dertdai.com/001.html 

 

(2)労働法における刑事罰

 職業安定法をはじめとする労働法では、刑事罰の規定が置かれていることがよくあり、悪質であると判断された場合には、この適用を受けることがあります。また、今回のグッドウィルのように、雇用者が企業である場合には、企業そのものへの刑罰に加え、経営者や従業員個人に対しても刑事罰が適用されることがあります。

 労働は、人の生活の基盤となる極めて重要なものである一方、労働現場での力関係は、労働者が企業に比べて劣位にあることが通常であり、企業によって労働者の権利がおびやかされる危険性があることから、行政が介入して労働者の保護を図ることが必要なのです。このための法律が労働法であり、以上のような目的を達成するために、行政庁は企業を監督し、違反した企業に対しては刑事罰の適用など厳格な手段とる必要があるのです。

 

(3)刑事事件の概要

 刑事事件は、一般的には次のような流れで進みます。

「警察官による逮捕・取り調べ」→「検察官への送致・取り調べ」→「公訴提起」

 警察官による逮捕・取り調べにより、容疑がある程度固まった場合、検察官に捜査権限が移され、裁判所への提訴(公訴提起)に向けた捜査が行われます。このような警察官から検察官への捜査権限の移転(検察官への送致)には、

1:被疑者を在宅のまま取り調べるものとし、事件に関する書類のみを検察官へ送るもの、

2:被疑者の身柄と事件に関する書類を共に検察官へ送るもの、

の2種類があり、このうち①がいわゆる「書類送検」といわれるものです。

・「検察庁の業務の流れ」 http://www.kensatsu.go.jp/gyoumu/taihogo.htm 

 

 

3.ベンチャー企業として

 労働法については、従前の記事で取り上げたものの他に、今回取り上げた「刑罰法規である」という点も重要なものになります。特に経営者や従業員個人に対し、刑罰が適用された場合、たとえ罰金刑であっても、お金を支払って終わりということではなく、いわゆる「前科」がついてしまいます。

 また、刑事罰の適用を受けるのが上場企業である場合には、有罪判決が確定する前の経営者や従業員個人の逮捕や書類送検の段階であったとしても、今回のように大きく報道されることが通常です。刑事事件の疑いをかけられているというだけで、会社の信頼の失墜はとても大きなものになるでしょう。

 このように、労働法は労働者の権利を保護する非常に重要な目的をもつ法律である反面、上場企業または上場の準備をしている企業にとっては違反により取り返しのつかないことになる可能性も大きいという点では怖い法律でもあるということを再確認する必要があります。

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