会社経営に必要な法律 Vol.25 船場吉兆の4つの間違い

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
従前、船場吉兆の産地偽装事件を取り上げましたが、その後同社では、新たに料理の使いまわしなどが判明し、とうとう2008年5月、廃業を発表しました。今回は、このニュースを題材にして、偽装事件などの不祥事を起こした企業の事後対応がいかに重要であるかを説明していきましょう。

1.ニュースの概要

 2008年5月28日、料亭「船場吉兆」が、廃業を発表しました。従前の記事(Vol.14 船場吉兆8億の負債。覚えておくべきJAS法とは!?」)で、取り上げたとおり、船場吉兆は、 2007年に牛肉の産地偽装などが発覚した後、民事再生手続を開始し経営再建に努めていましたが、2008年5月初め、客の料理の食べ残しを使いまわしていたことが新たに判明しました。このことにより、急速に業績が悪化したことで、破産手続に入ることとし、今回の廃業に至ったようです。

 

2.船場吉兆の事後対応

 船場吉兆の事件では、記者会見をはじめ、不祥事発生後の対応の拙さが、かねてから指摘されていました。これが、世間の船場吉兆に対する非難をさらに大きくし、顧客の信頼を急速に失う一因となったとも考えられます。

 そこで、これまでの記事では、法律違反を犯さないためにどうするかという事前対応についての説明が多かったものですが、今回は法律違反を犯してしまった場合にどうするべきかという事後対応の問題を取り上げてみたいと思います。

 船場吉兆の対応として、世間の批判を浴びた理由はいくつか挙げられますが、主なものは次のような点です。

 

(1)不祥事に経営陣が関わっていたにもかかわらず、当初、経営陣の責任を否定していた。 

(2)同族経営が問題視されたにもかかわらず、不祥事による社長辞任後の新社長は、同族である社長夫人であった。

(3)情報が開示されるのにも時間がかかり、また記者会見での情報にも誤りがあった。

(4)記者会見中、女将が息子である取締役に対して小声で助言していた内容がマイクで拾われるなど、記者会見の方法に初歩的な問題があった。

 以上のうち、(1)から(3)までの批判は、一言で言えば、会社の対応の内容が「誠実性に欠ける」と世間に受け止められたということに尽きると思います。会社の事後対応は、社会からなされるであろう批判を踏まえて、弁護士などを含めて対応を検討すべきものです。

 また、(4)については、記者会見の開催方法・セッティングについての問題です。会社として誠実に対応しようとしているとしても、記者会見の対応を間違えると、会社の対応すべてが誠実性に欠けると評価されかねません。記者会見のやり方についてはノウハウが蓄積されているところですので、コンサルタントなどの活用が重要といえます。記者会見などの事後対応には、「これさえ守れば絶対に大丈夫」というマニュアルは存在しません。しかし、これまでの記者会見の事例分析などから、最低限押さえなければならないポイントを見出すことができます。例えば、以下のような資料が参考になります。

・ダイヤモンドオンライン「失敗しないマスコミ対応 危機管理広報術」

   http://diamond.jp/series/publicity/

  記者会見の会場セッティング方法のほか、記者会見でのマスコミへの対応方法の実際を、実例を交えて説明しています。

 

・経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック2007」  http://www.meti.go.jp/product_safety/recall/handbook.pdf 

  『緊急記者会見における基本姿勢等』と題する部分で、記者会見に臨むための最低限のポイントが簡潔にまとめられています。リコールを行う場合を念頭に書かれたものではありますが、企業不祥事一般にも共通する部分が多くあります。

 

3.ベンチャー企業として

 今回見てきたように、企業の法律違反などの不祥事については、これが起きないように普段から企業がコンプライアンス意識を高め、対策を講じておくことが重要なことは勿論ですが、万が一発生してしまった場合には、企業がどのような対応をとるかにより、企業のその後の明暗が分かれます。

 今回の船場吉兆のように、事後対応を誤ったことにより企業が廃業や倒産に追い込まれるケースは過去にいくつもありました。反対に、不祥事が発生した後の対応が評価され、最悪の事態を免れ、顧客の信頼を回復した企業もあります。

 船場吉兆の会見は、世間では大きな非難を浴びていますが、企業の経営者としては、単に非難をするだけにとどまらず、一歩進んで、失敗とされる会見がなぜ失敗であったのか、自社が同じような立場に立たされた場合にはどのようなことに注意をすればよいのかなどを考える機会とするべきでしょう。

 不祥事発生後の記者会見などでは、発生直後に迅速かつ誠実な対応ができたかどうかにより、その後の会社に対する風向きが大きく変わってくることになります。このような事態が発生した場合に、一から記者会見の開き方などを考えていて対応が遅れるようなことになれば、世間の批判は大きくなる一方です。そこで、常日頃から、万が一不測の事態が起こった場合に、即時に的確な対応ができるように事前の備えをしておくことが企業にとって大切なことです。

 記者会見などの事後対応を誤ったことがその後の企業経営に大きな影響を及ぼすというリスクは、上場をねらっているのであれば、ベンチャー企業であっても上場企業となんら変わるものではありません。それにもかかわらず、上場企業などと異なり、ベンチャー企業では社内に記者会見などのノウハウがほとんど蓄積されていません。ベンチャー企業としては、特に意識的に、リスク管理・危機管理のために、これらについての準備をしておく必要があるでしょう。

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