会社経営に必要な法律 Vol.28 すかいらーく社長解任の裏にある『再生ファンド』って?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
2008年8月、すかいらーくの創業者である社長が、大株主である投資ファンドの意向により解任されました。そこで今回は、このニュースを題材に、『再生ファンド』と呼ばれることがある投資ファンドについて説明をしていきましょう。

1.ニュースの概要

 2008年8月、外食チェーン大手のすかいらーくの創業者である社長が、大株主である投資ファンド2社からの退任要求を受け、同社の臨時株主総会において解任されました。

 報道によれば、すかいらーくは、2006年、この投資ファンド2社からの出資と共に、MBO(マネジメントバイアウト、会社の役員などによる自社買収)を実施し、業績の改善に努めていましたが、業績が改善しなかったため、今回の解任に至ったということです。

 

 

 

2.法律上の問題 ―『再生ファンド』と呼ばれる投資ファンドとは

 すかいらーくに出資している投資ファンドは、時には『再生ファンド』(企業再生ファンド・事業再生ファンド)と呼ばれるものです。上場を目指すベンチャー企業に出資するファンドである『ベンチャーキャピタル』(VC)とは区別されるものです。

 そもそも「ファンド」とは、投資家から集めた資金を会社に投資し、投資先会社の価値の上昇などにより得た利益を投資家に分配することを目的とするものです。このようなファンドのうち、ベンチャーキャピタル(VC)が、ベンチャー企業などの成長企業に対して投資し、上場後のキャピタルゲインを得ることを目的とするものであるのに対し、『再生ファンド』は、業績が悪化している企業に対して投資し、業績改善後の株式転売や再上場によって利益を得ることを目的とするものです。

 すなわち、『再生ファンド』とは、業績の低迷する企業の再生に注目したビジネスということができます。業績が低迷している企業といっても、その内容はさまざまであり、中には、中・長期的に見れば再生が見込める企業や、不採算部門の整理など事業再編によって再生が可能な企業などがあります。『再生ファンド』は、このような再生可能性のある企業へ出資し、その後投資先企業の業績改善により企業価値が上昇すると、株式の売却や、(再)上場などによって利益を得るものです。

 このすかいらーくの事件は、そのような目的を有する投資ファンドが、すかいらーくの株式の約97%を保有しており、すかいらーくの連結業績が2期連続の最終赤字となり、業績が上向く兆しが見えないことを理由として、社長の解任を行うに至ったものです。

 なお、業績の悪化した企業が民事再生手続(債権者の多数の同意を得て、かつ裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどにより、事業の再生を目指す手続)による再建を選択した場合にも、この『再生ファンド』が貸付などを行うことがあります。民事再生手続開始後の出資については、再生計画による権利内容の変更の影響を受けないなど債権回収につき有利な地位が与えられますので、ファンドにとっては一定程度リスクを回避できるというメリットがあるからです。

 

3.ベンチャー企業として

 ベンチャー企業にとって、ベンチャーキャピタルと呼ばれる投資ファンドは、資金調達の手段のひとつとして非常に身近なものであると思います。しかし、単にファンドといった場合、その目的によってさまざまなものがあるのです。

 

 これは、ベンチャー企業にとって、ファンドとの付き合いは上場までのものではないということを意味しています。すなわち、上場後も企業を経営していくには、資金調達の必要性はついて回るものであり、その一つの調達先である投資ファンドとは上場後も付き合うことが十分に考えられます。その意味でも、ファンドの仕組みについては、ある程度把握しておくことがよいでしょう。

 一般に、投資ファンドの仕組みはさまざまなものがあり、複雑な仕組みを持つものも少なくありませんので、投資ファンドの法的な細かい仕組みをすべて把握していなくてはならないものではありません。しかし、投資ファンドの種類やお金の流れ、そして投資ファンドがどのような目的をもって投資を行うのかについては理解しておく必要があるでしょう。

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