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1.ニュースの概要
2008年9月9日、コンタクトレンズ大手の株式会社シードに対し、同社が製造販売するコンタクトレンズについて、長年に渡り厚生労働大臣の承認を受けた原材料、成分、分量と異なる製品を製造し販売していたことが薬事法違反にあたるとして、東京都は同社に対し21日間の業務停止命令、埼玉県は22日間の業務停止命令をそれぞれ出しました。なお、埼玉県では、埼玉県内の同社の製造所が、埼玉県による立入検査の際に虚偽の製造記録等を作成していたことについても処分の対象としています。
2.薬事法とは
今回問題となった薬事法とはどのような法律なのでしょうか。
(1)薬事法とは
薬事法とは、「医薬品」、「医薬部外品」、「化粧品」、「医療機器」の4つについて、それらの品質、有効性、安全性を確保するための規制を行う法律です。具体的な規制の内容としては、広告規制、商品の記載事項、製造や製造販売の業務を行うにあたっての許可などが挙げられます。
(2)医療機器の製造販売
今回問題となったコンタクトレンズは、薬事法の規制対象4種類のうち「医療機器」にあたります。薬事法では、厚生労働大臣の指定する成分を含む医療機器の製造販売をする場合には、厚生労働大臣の承認を受けなければならないこととしています(薬事法14条)。そして、この承認の内容と、性状、品質、または性能が異なる医療機器を製造販売することは禁止されています(薬事法65条2号)。今回の処分は、以上の規定に反して、シードが、承認内容と分量が異なる原材料によりコンタクトレンズを製造販売していたことによるものでした。
薬事法違反があった場合、厚生労働大臣または都道府県知事は、当該業者に対し許可の取消や業務停止命令を出すことがあります。また、刑事罰として懲役や罰金刑が定められています。
3.薬事法で気をつけること
薬事法の特徴として、行政法であるという点が挙げられます。そこで、薬事法について考えるときには以下の点に注意する必要があります。
(1)行政庁の判断が重要
薬事法に違反するか否かは、最終的には行政庁が判断することになりますので、民法や会社法などの法律と異なり法律家による解釈はそれほど大きな意味をもちません。そこで、会社としては、薬事法に抵触するかなど、気になることがあれば、都道府県の保健局などに相談する必要があります。
(2)行政処分または刑事罰がある
薬事法に違反した場合、行政庁による行政処分や刑事罰が課せられる可能性があります。これは、例えば契約違反をした場合の責任が、金銭の支払いで済むこととは大きく異なります。特にベンチャー企業の場合には、今回のような業務停止命令を受けると、その後の事業の継続に大きな影響を及ぼします。また、代表者が逮捕されるような場合には、会社に対するマイナスの影響は計り知れません。
薬事法は、消費者の身体や生命の安全に直接関わる法律であるため、行政庁も厳しく取り締まっています。実際に、薬事法違反等による検挙数は、2007年では、91事件、192人(うち逮捕者数は106 人)、25法人にのぼるということです。
4.ベンチャー企業として
最近の健康ブームの中、インターネット通販などで健康食品や医療機器などを扱うベンチャー企業も多いのではないでしょうか。そのときに必ずといっていいほど問題となる法律が薬事法です。
今回問題となったものは、医療機器の製造販売に関わる規制でしたが、インターネット通販などを行うベンチャー企業として問題となることが多いものは、やはり広告や商品説明に関する表示方法であると思います。
これまで説明してきたように、薬事法は行政法規であるがゆえの特徴があります。また、取り締りが厳しい分野でもありますので、健康食品や医薬品など消費者の身体に関わる商品を扱う場合には、事前に管轄の保健局などに相談することが大切です。