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1.ニュースの概要
2009年2月20日、コンビニエンスストアをフランチャイズ展開する「セブン-イレブン・ジャパン」の本部が、加盟店に対する優越的な地位を利用し、加盟店が値引き販売することを不当に制限したとして、公正取引委員会が、同社へ調査に入ったということが報道されました。今後、行政処分の対象になるかについての調査がなされるものと思われます。
具体的な事実関係はまだ調査中であり明らかではありませんが、報道によれば、同社本部は加盟店で販売する商品について「推奨価格」を設定し、この価格から値引きしないように加盟店側に求めていたということです。
2.法律上の問題
(1)独占禁止法とは
独占禁止法とは、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることを目的とする法律です。
特に、フランチャイズにおける独占禁止法上の問題について、公正取引委員会は、2002年に、ガイドライン「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」を改訂しました。
このガイドラインによれば、コンビニエンスストアで行われる会計制度である「廃棄ロス原価を含む売上総利益がロイヤルティの算定の基準となる場合」において、「本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること」は、独占禁止法の禁止する「優越的地位の乱用」にあたるとしています。
また、そもそも販売価格について、本部による「希望価格の提示は許容される」が、「本部が加盟店に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束すること」は、原則として独占禁止法の禁止する「再販売価格の拘束」にあたるとされています。また、「本部が加盟者に商品を直接供給していない場合であっても」、価格を不当に拘束することは、独占禁止法の禁止する「拘束条件付取引」にあたるとされています。
以上のように、フランチャイズ本部が加盟店に対し、商品の値引き販売を制限することは、原則として独占禁止法により禁止されているといえます。そこで、今回のニュースのようなコンビニエンスストアのフランチャイズの場合、原則として加盟店自身の判断でコンビニ弁当の値下げはできるものなのです。
(2)コンビニエンスストアの会計制度
一般的に、コンビニエンスストアのフランチャイズでは、加盟店は本部に対し、売上総利益の一定割合をロイヤリティ(チャージとも言われます)として本部に支払いますが、このロイヤリティの算定の基礎となる売上総利益には、以下のように、廃棄された商品の仕入原価も含まれることが通常です。
(ロイヤリティ)=(売上総利益)×○○%
(売上総利益)=(売上高)-(売上原価)+(廃棄商品の仕入原価)
例えば、ロイヤリティ率を50%とし、加盟店が300円で仕入れた弁当10個を500円で販売した結果、8個が売れ、2個が売れ残りとなり廃棄した場合、
(売上総利益)=(売上高)4000円-(売上原価)3000円+(廃棄商品の仕入原価)600円
=1600円
となりますので、加盟店が本部に支払うロイヤリティは、この50%である800円となります。これに対し、廃棄された商品の仕入原価がロイヤリティ算定の基礎に含まれない場合には、ロイヤリティは500円となります。
この場合、加盟店は、廃棄したため原価が回収できなかった商品についても、ロイヤリティの支払いをしなければならなくなるため、結果として、廃棄した商品の原価分に加えてロイヤリティ分の負担も負うことになります。したがって、加盟店にとっては、理論的には、廃棄するよりは値引きして販売することのほうが、少なくとも原価が回収できるという点で、有益な場合があるということができます。しかし、今回、セブンイレブン・ジャパンは、商品の値引き販売を制限していたのではないかとして、調査がなされているのです。
3.ベンチャー企業として
フランチャイズや代理店などの仕組みは、会社が自社の商品・サービスの販売網をいち早く拡大することができるメリットがあります。このため、ベンチャー企業の中でも、フランチャイズシステムや代理店システムを採用したりすることあると思います。
これらのシステムを採用した場合、本部にとっては、ブランドを維持するために、システム全体の価格やサービスを統一する必要性があります。しかし、加盟店や代理店はあくまでも本部とは別の事業者であることから、拘束が行き過ぎると、独占禁止法上の問題となることがあります。
独占禁止法違反として報道されるのは、大手企業であることが多いものですが、実際には、独占禁止法は、企業の大小を問わず問題となりうる、会社にとって身近な法律です。
独占禁止法の運用は、公正取引委員会が行っていますので、何か気になることがあれば、事前に問い合わせておくこともよいでしょう。