会社経営に必要な法律 Vol.45 ネット副業トラブル続出!!あなたは大丈夫?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
アフィリエイト広告やドロップシッピングなどのネット上の副業に関して、全国の消費生活センターに寄せられる相談件数がここ数年急増し、2005年度には 63件だったのが、2008年度は379 件に、2009年度は9月までの半年間で356件にも達しています。相談内容としては、「必ず高収入が得られる」と勧誘され、業者と高額な契約を締結したものの、「説明どおりの利益が得られない」、「十分なサポートが受けられない」、「入金したら業者と連絡が取れなくなった」などのケースが目立っています。今回はこのニュースを取り上げ、アフィリエイト広告やドロップシッピングの仕組、そしてベンチャー企業として留意すべき点について解説します。

法律上の問題

1 アフィリエイト広告

(1) アフィリエイト広告の仕組

アフィリエイト広告は、インターネット上の販路開拓を目的とする宣伝方法の一つです。アフィリエイトサイト運営者は、自己が運営するブログやホームページなどのサイトに企業などの広告を掲載し、そのサイトを経由して商品が売れると、広告主から報酬が支払われます。具体的には、アフィリエイトサイト運営者がアフィリエイト広告仲介業者にサイトの登録した上で、広告掲載を希望する広告主を申請し、実際に自己のサイトを経由して商品の販売やサービスの提供が行われると、販売額の数パーセント相当額が紹介料としてアフィリエイト広告仲介業者から支払われます。

 

(2)アフィリエイトサイト運営者の法的責任

 企業が自社の商品やサービスに関して広告を行うことについては、特定商取引に関する法律(特商法)や不当景品類および不当表示防止法(景表法)による規制のほか、薬事法など各種法令に基づく広告規制の適用があります。これに対して、アフィリエイトサイトでは、商品販売やサービス提供を行っているわけではないため、これらの規制法の適用を受けることはありません。ただし、アフィリエイトサイトに掲載される商品やサービスに関する個人的な評価や体験談が広告にあたるか否か自体あいまいで、アフィリエイトサイトに掲載された宣伝文などが広告主の受託者として行っている広告であると評価された場合、広告主が規制法規の適用を受ける可能性があります。アフィリエイトサイトの広告が規制法規違反であったことで広告主やアフィリエイト仲介業者が損害を被った場合、アフィリエイトサイト運営者は、広告主やアフィリエイト仲介業者から損害賠償請求を受ける可能性がありますので、注意が必要です。

なお、2006年10月に日本アフィリエイト・サービス協会がアフィリエイト広告の仕組への参加者が守るべき「アフィリエイト・ガイドライン」を公表していますので、アフィリエイトサイトを運営する場合には、一読されることをお勧めします。

 

2  ドロップシッピング

(1)     ドロップシッピングの仕組

 ドロップシッピングとは、「直送」を意味する用語で、最近のインターネットビジネスで利用されている流通システムの一つです。ドロップシッピングサイト運営者は、在庫を持たずにネットショップを開設し、メーカーや卸業者などから商品を仕入れ、自ら売主になって販売します。ドロップシッピングサイト運営者は、ドロップシッピング業者と契約することにより、商品紹介や商品配送、代金決済などの代行サービスを受けることができます。

 

(2)ドロップシッピングサイト運営者の法的責任

 ドロップシッピングサイト運営者は、法律上、消費者に直接商品を販売することになるため、特商法に定める通信販売事業者として、広告表示などに関して規制を受けます。特商法による規制のほかにも、景表法や薬事法など各種法令に基づく広告規制も受けることになります。また、商品に欠陥があった場合には、交換や返品などについて責任を負います。

 

ベンチャー企業として

 経済情勢が厳しい中、ネットを利用した手軽なサイドビジネスに関心を寄せる人が多くなっています。起業を志す方の中には、アフィリエイト広告やドロップシッピングを本格的に起業する前の足慣らしとお考えになる方も多いかと思われます。しかしながら、ご説明しましたように、ドロップシッピングの場合、サイト運営者は事業者として規制の適用を受け、法的な責任を負うことになりますので、起業前ではなく、起業しているという認識をもっていただくことが必要です。他方、アフィリエイト広告の場合は、事業者として責任を負うケースは少ないものと考えられますが、この場合でも、手数料収入を増やす目的で、必要以上に消費者の購買意欲をあおったり、無責任な紹介文の記載や誤った情報の提供をすることにより消費者に損害を与えたときには、損害賠償義務を負う可能性があることは否定できません。また、広告主の商品やサービスが違法なものであったような場合、違法な行為の片棒を担ぐ者として責任を問われる可能性がないとは言えません。

国民生活センターでは、「自分で努力せずにお金を儲けられるという話は信じないこと。契約する前に、どのように利益が生じるのか、きちんと業者に説明を求めるなど、契約内容を慎重に検討して欲しい」と呼びかけています。これは、業者の「必ず儲かる」「簡単な作業で高収入が得られる」という話を鵜呑みにして、契約内容やビジネスの仕組を理解しないままに業者と契約し、高額な契約金を支払ってしまう消費者が多いことによります。

起業家の皆さんは消費者ではありません。事業者です。ですから、業者と契約する際には、契約内容を十分に確認し、ビジネスの仕組みについて理解した上で、さらに、初期費用が何に対する対価なのか、取引1件あたりいくらの収入が得られるのか、何件くらい取引が成立すれば初期費用が回収できるのか、初期費用回収までにどれくらいの期間を要するのかなどについて、きちんとシュミレーションしてみるべきです。こうした事業者としての最低限の作業もせずにアフィリエイト広告やドロップシッピングなどのネットビジネスを始めても、まったく意味がありません。これからネット出店をしようと考えている方には、ぜひ、これらの点についてご留意いただきたいと思います。

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