知的財産:Vol.47 著作権侵害の判断は甘くなっているのか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
このところ著作権に関して新聞紙上等で大きく取り扱われる判決が出ています。また、googleの「Google Book Search」に係る訴訟和解やエニグモのネット雑誌閲覧サービスに対する日本雑誌協会等、著作権の話題は事欠きません。それら話題になる事件の多くが著作物を利用する側に有利な取り扱いに傾いていて、裁判所が著作権保護には積極的ではないと、自分の事業に都合良く解釈する向きがあるようです。本当に著作権侵害の裁判所の判断が甘くなっているのか、説明していきます。

そもそも著作権とは

 まず、著作権とは、そもそも何なのか、確認したいと思います。著作権は、個人や法人が創作した著作物に係る独占権で、他人の著作物等に拠ることなく自らの思想や感情を表現した著作物を創作した時点で発生します。法律的には、依拠することなくということになりますが、ポイントは他人の著作物のそのものの、勝手な利用や模倣は許さない、ということです。ただし、結果的に似通ってしまっても、独自に創作したものにまでは権利はおよびません。

 

最近の判決やニュースの話題について

 Winny開発者の逆転無罪判決が出ましたが、その他にも著作権に掛かる著名な判決として、テレビ番組の録画ではロクラク著作権侵害事件控訴審判決があります。これは、個人がテレビ番組の録画等を遠隔的に行える機器の設置・管理が著作権侵害にあたるか否か争われた事件で、こちらも控訴審で逆転無罪の判決が出ています。その他にも、エニグモが始めた専用サイト上で雑誌を購入した人がオンラインで雑誌の複製を閲覧できるサービス「コルシカ」に対し、日本雑誌協会が中止を要請したようです。海外でも、Googleが大きな図書館の蔵書を電子化し検索可能にするサービス「Google Book Search」に対して争いが起き、訴訟の和解が成立するなど、話題に事欠きません。

 ロクラクの事件もエニグモの事件もGoogleにも共通するのですが、既存の著作権は尊重しつつ、その著作物を一般の人が簡単に楽しめる仕組みを作って、その仕組みでビジネスをしようとするものです。そして、その仕組みを使うか否かの判断は、あくまでも著作物を利用する個人(その仕組みを利用するお客さん)の判断に任されているわけです。つまり、著作権自体をあたかも自分の著作物のように見せかけて利用したといった著作権の直接的な侵害ではなく、著作者の著作権は尊重しながら、著作物の利用に関する手段や利用の方法について争われているのが特徴です。ですから、裁判所の著作権侵害に対する判断が甘くなったというより、法律では想定しきれていない新しいタイプの著作物の取り扱いについての判断を裁判所が示しているということだと思います。その点からすれば、著作権を巡る新しい形態のビジネスの数だけ、争いが起きる可能性があるともいえます。

 

最近の著作権に係るメール相談の傾向

 一方で、最近寄せられる著作権に係るメール相談で多いのは、原著作物を承諾無く改変してネット上に提供したいとか、好き勝手に制限無く引用した上でビジネスをしたいというものです。例えば、「CDとして販売されている音楽の一部を、私が個人的に開設する商品の広告サイトの映像のBGMとし無断で使用しても当然著作権の侵害にはなりませんよね?」とか、「新聞の評論記事(評論の全文)を集めて、一部を自分が気に入るように書き換えた上で、評論集をネットで紹介したり、小冊子にまとめて出版しても問題は起きませんよね?」などの相談がありました。

 無断の商用利用も無秩序な引用や無断の改変も、いずれも著作権法では許されていません。にもかかわらず、違法性が無いとの認識からか、違法な著作物を活用したビジネスで収益を得る方法に関する相談が後を絶ちません。

 

著作権を尊重したビジネス

 上述したように、最近話題になっている事件は、最近のメール相談の内容とは本質的に状況が異なります。著作権の保護が緩やかになり、著作物を自由に改編したり引用したりすることまでOKになってしまったということではないので、誤解しないようにしてください。著作権の保護の原則は原則として、しっかりと理解してください。

 とはいえ、著作権法の存在の如何にかかわらず、ビジネスを営む側の最低限のモラルとして、他人の創作にただ乗りするような行為は、厳に慎まなければならないことです。他人の権利を尊重した上で、その著作物を前向きに活用することにより、原著作者の思想や感情の表現を守りつつ、需要者の期待に添うようなビジネス展開が今後一層求められることになると思います。

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